第7話 母の暗躍。
部屋の中を照らすのは高画質、高リフレッシュレートの、およそ高校生の小遣いでは到底手が出せない、ゲーミングモニター2台だけ。
カーテンを閉めただけで、部屋が真っ暗なのは遮光性が
目の前のモニターにYou loseの文字。
「ねえ」
隣から聞こえてくるのは少し不機嫌そうな、女子の声。
「はい……」
ここは
「あんた、同じこと何回言わせる気? なじればいい、それとも踏めばいいの?」
「待て、なぜ俺がドМである前提で話が進んでる?」
「え! じゃあ踏まれたくないの?」
モニターに照らされた
どんだけ、驚いてんだよ。踏まれるようなのは
「踏まれたくないに決まってるだろ」
「おかしいわね、ママにもらった本には絶対男が喜ぶって書いてあったのに」
「
「何でもいいでしょ! それより
顔を赤く染め、自分のモニターへ向き直る
「勘弁してくれよ。今何時だと思ってるんだ」
「26時だけど」
夜中に女子の部屋で二人きり。
「その表記が許されるのはアニメだけ、というのは置いといてもうすぐアニメ始まっちゃうから」
「アニメは録画でいいでしょ」
だけど、そういう雰囲気になるはずもなく。
部活の後、ひたすらSOCのオンライン対戦に明け暮れていた。
それは次の大会に向けてらしく、デュオで対戦しては、なじられ会もとい反省会の繰り返し。
ダメ出しが尽きることはなく、プレイ時間は10時間を超えただろう。
ついでにテストで徹夜していた、俺の限界も超えていて、今はエナジードリンクに翼を
「いや、何言ってんの? アニメはリアタイに限るだろ」
「はー? あんたこそ何言ってんのよ、夜中はゲームのゴールデンタイムでしょうが、普通」
呆れたようにため息を吐く
「いやいや、それゲーマーの普通だから。オタクはその時間、アニメ見てツ○ッターに感想書いて、原作からの改変を洗い出して、来週の予習してるから」
「あたしの相棒のくせにオタ活を優先させようっていうの。……いいわ、あたしがあんたを
「今、オタクのことブタって言ったよな」
「だってそうでしょう、萌えブタで声ブタ、おまけになじられたいって完全にブタ以下じゃない」
「俺は、ドМじゃなーーーい!!
だいたい、どうしたんだよ? 今日の
今日の
無理やり突っ込んでは力技で相手をねじ伏せる、脳筋か初心者の戦い方だった。
それでも勝てたのは、ただ相手が強くなかっただけだ。
「なんでもないわよ」
「噓だな」
「本当になんでもないわよ……ただ次の大会のこと考えると落ち着かないだけ」
「例の〝謎の天才女子高生ゲーマー〟とやらのことか?」
だから、その優勝を
「そう、だってあと8日しかないのよ」
「あと8日もあるんだから
「…………一番の不安要素のあんたが言う」
あ、、一番の不安要素は俺でした。
「やっぱり、あんたを徹底的に鍛え直してあげる。今日は寝かさなわよ!」
なにかが、吹っ切れたように
「ちょっと待って、今日って言った今夜じゃなくて? それは2徹、いや3徹になるから勘弁してくれー!」
吹っ切られたのは俺の要望だった。
◇◇◇
――数日前
広いリビング、見るからに大きい窓とテレビが豪邸であることを示している。
だが、その80インチを超えるテレビで見られるもののほとんどが深夜アニメだと知っている人は少ない。
「
そう言って上機嫌で持っていたものを差し出しているのは、
「うん、分かったー」
スマホゲームの片手間に課題の解答を丸写ししていた
一息ついた
「きゃああああ! ちょっとママなに渡してきてるのよ!!」
思い切り床に投げ捨てた。
「なにって、あなたの役に立つ本よ」
「こ、この、『イスがないなら男に座ればいいじゃない』って本のどこら辺があたしに必要なのよ!」
「この本にはね、男の落とし方が書いてあるのよ」
「で?」
微笑みを浮かべてと話す
「やだなー、分かってるくせにっ!」
「……」
「じれったいな、もう!」
頬を小動物のようにぷくーっとふくらました
「ところで
いま、思い出したかのように呟く。
「……そうだけど。わるい?」
一瞬、
「悪くないのよ。ただ、なんで
「組むはずだった子が逃げたから、その代役よ」
動揺した様子で呟く
「他に、
「し、仕方ないじゃない、大会の10日前でみんな誰かと組んだ後だったんだから」
「へー、そうなんだー。参加締め切りは1ヶ月くらい前だったのにな~」
「……んなッ!」
「なんで、1ヶ月前の時点で
白々しい表情で首をかしげる
「まるで、
「そ、そんなんじゃないわよ! ゆ、
(これくらい分かりやすく反応するなら、
まったく進展しない二人の関係に、
「それじゃあ、
「そ、そうよ、
本当にそう思っているのか、自分の感情に気づいていないだけなのか、探ってみたかったが、
「そうなんだー。じゃあ、それは
「安心して、ニブチンにも効果があることははママがパパと結婚したことで検証済みよ」
「仕方ないから、もらっといてあげるわよ」
その後、
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