第6話 女子高生ってバレてるのがミソだよね。
それは、終わりを告げる音。
ある人は、その音を聞き絶望し。またある人は、その音を聞き自分の計画性の無さを呪う。
だがある人には、ただの目覚しに過ぎない。
それは、チャイムの音だった。
「終わったー」
記入漏れの確認が終わり教師が教室を後にすると直前まで静かだったクラス中が喧噪に包まれた。
そんな中、机に顔を突っ伏している生徒が一人。
「
それは、俺の良く知る幼なじみの
「ねえ、
「いや、これゲームじゃなくてテストだから」
「許さない。絶対にこの数学の問題考えたやつ潰してやる」
「あ、今回の数学は担任の
「さこーーーんッ!あいつ、いけ好かない顔してると思ったら、やっぱり性格まで詰んでたのね!」
「あの人いちよう俺達の顧問でもあるんだけどね!」
左近先生はもじゃもじゃの頭髪と
「――なんで弧度法に直す問題2問しか出ないなのよ!」
「
そう話しかけてきたのは、俺がちょうど
「
「その前に今日は部活行くよな二人とも?」
「当たり前でしょ」
「その当たり前が昨日簡単に壊されたから聞いたんだ」
「
「俺だって未読スルーならよかったよ、でも2人とも既読スルーはないだろ!」
「2人って、
そう俺が
「あの時は、
「はぁ……。なあ
「いや、それが昨日
「負けたって……まさかゲームでか!?」
「そうよ……でもその後に圧勝したけどね!」
もちろん、噓である。
「で、本当は?」
それは
「50/50ってところだった」
「
「だよなー」
「そのゲームってタイトルは?」
「SOC」
「じゃあ、まさかあれって……」
「これ、知ってるか?」
そういって見せてきたのは、有名なゲーム情報サイトだった。
その見出しは――。
「『謎の天才女子高生ゲーマー、〝SOC高校生王者決定戦ブロック予選in埼玉〟に参加を表明』ってこれあたしたちの出る大会じゃない!」
「えっ! 俺達これに出るの?」
オンラインの大会だと思っていた。
「知らなかったの?」
「いや、日程しか聞いてないんだけど……」
「大会日時が分かってるんだから自分で調べときなさいよ」
理不尽だ。
「まあ、それは置いといてどう思う?」
サイトには過去の
オフラインの大会に参加するのが初めてで注目が集まっているのも、要因の一つだろう。
「……違うんじゃないか」
「なんでそう思うんだ?」
「……」
「コミュ障の
相方に逃げられた、お前が言うな、というセリフが喉まで出かかったのは秘密だ。
◇◇◇
「私じゃないわよ」
結局、本人に聞くのが一番早いと思った俺たちの質問に、
「ほらね、だいたい
「そうね、
「おかしいわね、完敗の間違いじゃないッ?」
△3八飛
「よく言うわね。私に負けたらもう一回って、まるで凌辱されるヒロインのように泣いて懇願してきたのに」
▲4九銀
「それは
二人の会話と小気味良い駒音が響く和室。二人の会話の代わりに大きくなっていく駒を打ち付ける音。
「なあ、
「ああってなによ
「そうね、私がこのポンコツ幼なじみと一括りにされるのは聞き捨てならないわね
「誰がポンコツですって!?
「そのセリフが出てくる時点でポンコツだと古今東西決まっているのよ」
具体例が思い浮かんだのか押し黙る
「ちょっとは、二人とも静かに将棋指そうよ!」
「ねえ、
「は?」
ぼんやりと盤を見下ろすと王手飛車取りで、手番は清也。
両取りを……見逃した。
イラッ。
「ポンコツなのは、あたしより
口元がゆるゆるの状態で
「まあ、あなたも銀の割り打ちをくらっているけどね」
「へ?」
全員の視線が隣の盤に集まる。
そこには、綺麗に両取りの決まった盤面があった。
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