第4話 勉強会とは遊ぶためにある。
昼ご飯を食べ終わった俺たちは、勉強は一時半から再開することにして少しの間ゲームすることになった。
俺の部屋にあるハードで出来るゲームはすべて
ジャンルは対戦型アクション格闘ゲーム。
最近の格闘ゲームに比べて通常攻撃の攻撃力が低く、大技の発動時間が長いせいでコンボの重要性が高くて、遊びでもSOCやるならまずアケコン買えと言われるくらいのコンボゲー。
使えるキャラは、男、女それぞれにフェンサー、ファイター、ガンナーの3種類だけで、それぞれ敏捷力、火力、体力を自分に合ったバランスに調整できるようになっている。SOCをやっているプレーヤー全員がこのトレードオフに悩まされ続ける。
まあ、簡単に言うならス○ブラのさらに上級者向けゲームで、初心者には向いていないゲームだ。
「
「別にいいわよ遊びなんだから」
簡単に挑発に乗ってしまったわりには冷静な
「へえーSOCか、次の大会のゲームでもあるしちょうどいいわね」
勉強からのストレスのせいか、やけにテンションの高い
というか、次の大会はSOCなのか今知ったぞ。
俺が選んだのは、男のフェンサーの敏捷力20・火力40・体力40。
パワー型で相手のいかなる小細工も力でねじ伏せるのに適した調整だ。
「
「
相手がキャラを決めるときは後ろを向くため、相手の正確な数値の配分は分からない。
だが、キャラを見ればおおよそは分かるようになっている。
フェンサーなら、火力は剣の種類が、体力は防具の数が数値によって決まっていることで見分けられる。
俺の装備は幅広の両手剣に、胸とすね、肘の5か所に防具。
手数で圧倒して相手に攻撃の隙を与えないのに適した、調整になっているようだ。
ルールはストック制で機数は1。つまり、先にダメージが生存限界を超えるか、場外へ吹き飛ばされた方が負けということだ。
――Ready,Fight!
カウントダウンからのその声と同時に戦いが始まった。
合図と同時に
俺が攻撃を放つよりも速く
高難易度のコンボ技が繰り出される。
パワー型とスピード型の戦いではスピード型に先手を取られることは仕方ない。それに、スピード型の攻撃では俺の体力を削りきる即死コンボは存在し得ない。
俺は、思考を切り替えると
「ここだっ!」
カウンターは不発に終わったが、相手の大技を防ぐことのできた俺は、カウンターを避けるのが精一杯で一瞬の技後硬直を余儀なくされた
ここで決着をつけるべく、コンボパーツを組み合わせ即死コンボに持ち込む。
「……ッ!」
「あぁーーー……」
勝利が自分の手からこぼれ落ちていくを感じる。
通常攻撃の真上から切り下ろしを放つつもりだったのに、完全に操作ミスだ……。
大技を放つにはそれなりの代償が必要になる。垂直斬りでは長い、発動時間と技後硬直。切り下ろしがギリギリ当たるタイミングで放たれた垂直斬りは、
「決まったわね!」
ゲーム中、無言に徹していた
後の内容はその言葉通り、俺の体力が生存限界に達するまで一度の隙も許すことなく攻め切られた。
SOCでの、俺の対
それが今日初めて0から
「あぁーー!もうちょっとだったのに……」
「
「……え、噓だろ?」
「ほんとよ。だってあと少しで隠し避けコマンドで避けられたんだから」
隠し避けコマンド、それは相手からの攻撃を受けた瞬間に決まったコマンドを押していくことで、相手の攻撃を避ける、さらには反撃すらできることもある切り札。隠しコマンドが発動すれば試合の展開がひっくり返ることなんてよくある。
強力な技なためにコマンドを押すタイミングがシビヤに設定されていて、発動するにはかなりの技術が必要になってくる。
隠しコマンドを十全に扱えるプレイヤーなんてほとんどいない。
だが、
「意外ね。
「まあ、オタクですから」
「根拠のないことを堂々と言えるなんてある意味立派ね、
「
「私は、ただアニメ好きであって、
「ボッチなんだから体面なんて気にしても無駄なのよ」
「あなたこそ学校では、趣味は読書とか真面目なこと言ってゲームの攻略本読んでるじゃないの」
「……ッ、何で知ってるのよ!」
「露骨にこっちを睨むのやめてよ、
確かに一斉読書の時間に、聖書くらい分厚いゲームのルールブック読んでたのは知ってるけどさ。
「ふっ、やっぱり読んでるのね」
「図ったわね、
「ボッチ、ボッチうるさいわね。だいたい、あなただって――」
「二人ともそこまで!続きはゲームで白黒つけようぜっ!!」
「「今のは、ないわね」」
「うっ、なんか寒気が」
「
なんで今だけ息が合ってるんだよ……。
次の試合は
先に、
次は
実は、SOCでは相手のキャラと戦型をある程度予測して自分のキャラと戦型を決めるというのも重要になってくる。
そのため、普通のゲーマーは全キャラ、全タイプを使いこなせるようにする。
だが、
だから、
あらかたの操作方法教えた後、そう俺は
それなのに……。
「なんで、
「いいのよ、これで」
そう言って
なぜそこまで、自信があるのか若干の違和感を覚えたが、勝敗は目に見えていた。
それは、
試合開始までの準備時間(30秒)に入る。
「スピード型にしたんですね、
「そうよ」
由奈が俺を見てくる。その視線には「ちゃんと説明した?」という意思が含まれていた。
「俺は、パワー型を勧めたからな」
俺の答えを聞いて、何か考えている様子だった由奈は得心したらしく、微かに笑った。
「ふっ、負けた時の保険なんて
「あら、別に私負けるつもりなんてあなたの胸同様、更々ないわよ」
「……ッ!ここで勝ってあんたに胸と強さ、どっちも認めさせてやるわよ!」
そう言うと
これは
ちなみに、俺相手にこの髪型になったことはない。初心者相手にどんだけ本気なんだよ……。
そうこうしているうちに準備時間は経過していき
――Ready,Fight!
お馴染みの合図で試合は始まった。
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