第5話 迷宮攻略開始?

 私とプリシラが色々言い合ってから数時間が経過した今─────私たちは迷宮攻略に勤しんでいた。



「プリシラ〜。アンタの迷宮なんだから出口分かるもんじゃない訳ー?」


「無茶を言うでない………我は永らく最下層で眠っていたのだ。迷宮の構造が変わりすぎている。」


 途中から人の姿に変化したプリシラだったが、外見はいかにもドラゴンらしい角を生やしている。(尻尾は隠してるのかな?)

 ちなみに男だった………女の子だったらもっと良かった。


「プリシラってさ、思ってた以上にイケメンだよね………なんというかドラゴンの風格を感じる。」


「そりゃ我、ドラゴンだし………イケメンなのは神だから自由に見た目を生み出せるからであって、」


「つまりは神化で理想の姿に作り替えてるだけって事!?

 本来の姿はもっと不細工なの!?」


「失礼だぞ!!

 我はそこまでいじっておらぬ………精々角と尻尾を作り替えているくらいだ。顔は弄ってない。」


「それじゃあ元からイケメンなの!?

 可愛くないなー」


「こいつ………!!」


 プリシラと私は同等らしい。これだけ言ってもプリシラに怒る様子は無いし、大体のツッコミに対応してくれる。

 非常に良いパートナーを得た気がする。



「ちなみにイノリよ………今歩いているのは適当では無いだろうな?

 このままだと本当にこの迷宮から出られないぞ。」


「え、プリシラが道を考えてくれてるんじゃ無かったの?

 私はてっきり今までのルートは正しかったのかと………」


「だ、か、ら我は道を覚えておらんと言ったであろうが!!

 何故人の話もろくに聞かずに、自分勝手に行動するのだ!!」


「だってだって!!

 私はプリシラが教えてくれると思ってー」


「はぁ、もう良い!!

 我が迷宮を直接破壊する………黙って着いてこい。」


 プリシラが龍の姿へと戻っていき、次第に口元が金色に光出す。


「な、何をしようとして………」


「我のブレスで全てを消滅させる。

神消滅息吹破ゴッドブレス〟」


 

 その瞬間、私の目の前で奇跡は起きた。

プリシラの口から放たれた「破滅の光」は、迷宮の壁や魔物をもろともせず貫通していき、最後には空へと解き放たれた。

 それは触れれば一瞬で消滅させられれであろう恐怖が感じられ、プリシラが本当に世界最強格の化け物である事を嫌と言うほどに実感させられた。


「流石ですなぁ………こんなの受けたら、あらゆるモンスターでも耐えられないでしょ。てか最初から迷宮破壊すれば迷うこともなかったんじゃ無い?」


「おまえの豪胆さには驚かされるわ………本来ならあの光の余波だけで魔物は消滅する。

 それにあの「破滅の光」は肉体と精神の両方を波状に消滅させる究極の光だ。お前の魂の強さが嫌と言うほど伺える。」


「それを言うならプリシラだって………」


「いやいや、お前も充分に化け物だ。」


 埒があかない。ひとまずはプリシラの方が化け物という事で冒険を進める。

 一人の乙女としてはそれがベストなのだ。恐れられる人生は謳歌したく無い。


「とにかく迷宮から出るぞ………もし他の神に今の光を見られていた場合は、少々戦闘する羽目になるかもしれんが。」


 プリシラは勢いよく羽ばたいていく。


「他の神とドンぱちはちょっと………ていうか私飛べないんだけど。」


《神化による影響で【身体変形】を取得しています。龍の翼を作り出します。》


 私の背中からプリシラに似た色の翼が二対生える。


「これを動かせば飛べるの?

 確かに自分の翼みたいに動かした方は分かるけど。」


「翼を上下に動かし、風を肌で感じるのだ。そうすれば飛び方など自然に覚える。」


「そりゃあアンタはドラゴンだから自在に飛べるだろうけど………私は腐ってもミミックなんですよ?」


 バサッ──────


 ひとまずは言われた通りに翼を上下に振る。


「お、お、おぉ〜!!

 確かに飛べてる。」


 その瞬間、私は空高く飛翔していた。

 知覚は何とか出来るくらいの超高速で空へと飛翔したのだ。


「ほう。中々に技量のいる技だったのだが………お前にはドラゴンの才能があるかもしれんな。」


「何よドラゴンの才能って………私はか弱いミミックなんですよ?」


「か弱い、か………ならばこの機会に確かめるとしよう。」


「へ?」


「前方にいる熾天使セラフィムの大群を殲滅してこい。それなりに厄介だ………手を抜けばお前が負けるぞ。」


 前方の熾天使セラフィム………凄い形相で私たちに突進してきている人?

 というか何でそんなに怒ってるの!?


「あれが天使!?

 あんなドス黒い翼はやしててよく天使なんて言えたもんだよ。」


「先の光があの熾天使セラフィム達の親玉を綺麗に消し去ってしまった。怒りを制御しきれない雑魚天使共はあのように翼を黒くして襲いかかってくる。

 一説では、生物としての威嚇行動らしいぞ。」


「ギャギャャャャあああー!!!!」


「そ、そんな冷静に解説してしてる場合じゃなくないプリシラ。あの天使達相当怒ってるよ?

…………てか魔法陣が見えるのは私の勘違い!?」


「う〜む。あれは『軍団殲滅魔法レギオン・マジック』の「煉獄収束砲インフェルノ」だな。かなり威力も高い。」


キィいいリーダーの敵だ!!」


 刹那、私たち目掛けて滅茶苦茶に太い煉獄の破壊光線が放たれた。

 咄嗟に避けようとしたが間に合わないのは明確。


「死ぬ死ぬ死ぬー!!!」


「何を恐れている。神とは何者にも恐れず、あらゆるモノの終着点。

 あの破壊光線を受けるには充分すぎる耐性を既にお前は獲得している筈だ。」


「そんな事言っても、死ぬ時は死ぬの!!

 あぁぁー鑑定助けて!!」


《神力操作を開始します。「煉獄収束砲」を神盾にて防ぎます。》


 キイィーン─────


 「煉獄収束砲」が私に触れる!!と、思ったその瞬間………私の目の前に金色の壁が出現する。


「これ、は?」


「神力操作による神の盾、『神盾』だ。

 無意識に発動させたあたり、お前には神としての才能もあるらしいな。」


 笑、えない………プリシラと鑑定君はマジで笑えない。

 私が死ぬ寸前まで一才助けず、最後の最後までプリシラは動きすらしなかった。

 鑑定君も鑑定君だが、流石に助けてくれたから今回はきつくも言えない。


「ひとまずあの天使共を蹴散らしてこい。

 我は迷宮を修復する。」


「…………え?

 丸投げ!?」


 天使達は私を睨みつけている。

 総数……大体数百くらいの天使が私を殺さんと躍起になっている。


「はぁ。もうやってやんよ天使共!!

 私はミミックで神になったばかりだけど………それでもまだまだ死にたくは無いんだよ!!」

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ミミックに転生って、嘘でしょ? @toyase

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