第3話 封印の巨龍

「序盤からハードコアだった訳ですが………」


「お?

 また何か話してくれるのか盟友よ。お主の記憶はいくら見ても面白い!!」


「どうして普通に仲良くなってんだよ!!

 てか、勝手に人の記憶読むんじゃねぇよ。私にだってプライバシーってもんがあんのよ。」


「ふっ、お前のことは盟友と認めたであろうが。この我が認めたのだ、お前には我の加護と回廊が結ばれている筈。」


「勝手に人に加護を授けないでよ………それに回廊の処理でさっきから鑑定君がずっと駆り出されてるんですけど?」


「そ、それはお主の称号が弱いだけの話!!

自分で解析を進められるスキルを獲得すれば良いであろうが。」


「アンタって奴は………ちょっと前世の話をした途端気を許して、興味津々に記憶を読み漁って、巨龍としての意地はない訳!?」


 

 そう、この巨龍マジで寂しがりやだったのだ。

 封印されてからと言うもの、ずっと一人で迷宮を彷徨い続けて早300年、遂に私のいる第一層までたどり着いてしまったそう。

 最初は私も気押されていたが、いつのまにか意気投合してしまい仲良くなっていた。こればっかりは鑑定君の想定外だったらしい。


「というか、アンタ封印されてるんじゃなかったの?

 何で普通に動けてるのよ………」


「我を舐めるでない。封印如きスキルで帳消しにしてれば自由自在に動ける………まぁ、流石の我でもスキルの使用制限はかかるがな。」


「そんだけ強いなら解けないの?封印。」


「我の全力を持ってしても、この封印は解けんかった。流石は古の賢者が五人総出で編み出した封印だ………悠長に眠っていなければこんな事にはならなかったんだがな。」


 ちなみにこの巨龍、相当のバカ・・である。うっかり寝ている時に封印されてしまったらしい。

 聞いた話では、ちょっとあくびした時に国を一つブレスで焼き滅ぼしたとか。(マジでその国が可哀想すぎる)


「ひとまずの話、アンタは私を盟友とか言ってくれちゃってるけど、私は別にアンタに殺されない限りもう用は無いんだよね。

 あんまり近くに居られると周りのモンスターが逃げちゃうかもだし、レベルも上げにくいんだけど………」


「レベルを上げたいのならば我の眷属を自由に狩り殺すがいい。寸前までHPは削ってやるさ。」


「え、マジで?

 もしかして巨龍さん、案外優しいところもある?」


「失礼なミミックだな………普通ならば。我を見た瞬間逃げ出すか倒れるのがモンスターの常識だと言うのに。

 お主はやはり前世も特別故、我への考え方自体が他とは異なる。」


 私には、特に巨龍への恐怖は感じられない。『魔物之性』も機能しているのだろう。


「でも私もアンタがここまで話しやすい奴だとは思ってもみなかったよ………出会った時は本当に殺されるかと思ったし。

 そもそも封印の中からのプレッシャーが強すぎて気を失いかけたし。」


「まぁお主の魂は王に足る器だ。我が認めたのだからな………直ぐにでも我の封印を解く鍵になるだろう。」


「期待してくれるのはいいけどさ………流石に私も普通の箱な訳だし、ちょっとしたスキルと称号持ってるだけの異世界人だよ?」


「何を言うかと思えば………お主は異世界人などと呼べる浅はかな存在では無い。

 異世界人とは、本来人間の魂に異界の魂が憑依して誕生するモノだ。だが見てみろお前の魂を………お前の魂は魔物之王に成長しうる魂の濃さだ。それ故に人間の魂へは辿り着かずに迷宮で苗を生やした。我より余程おぞましい。」


 何故だが『虚無の巨龍』が大絶賛する程の魂らしい。相当に私はイレギュラーだったのだろう。

 確かに異世界にきて魔物になる事は、そう簡単になせる技では無いだろうから。


「まぁとにかくアンタはこれからどうする訳?

 私は箱だし動けないし………永遠に暗い洞窟の中で寂しく朽ちていく。はぁ〜寂しいなぁ。」


《虚無の巨龍"プレシア"から与えられた加護と回廊を解析し終えました。》


「あ、あんがと鑑定君。何かわかった事は?」


《『ニ幻の加護』による効果は【神化】です。持続的に回廊で繋がれた虚無の巨龍から神力を借り受け、神としての姿を獲得します。》


「ん〜ん。つまりはどういう事?」


《加護の力で人の姿に変身が可能になります。ただし虚無の巨龍からの了承が必要不可欠になります。》


「人の姿!!」


 巨龍の目を見る。できる限り上目遣いに頼りなさそうに助けたくなるように。


「お主は自分の外見を見てから上目遣いを使うんだな、全く惹かれない。

 まぁ我の神力回復量を上回る程の消費は無さそうだしな………神化の使用を許可してやろう。ただし!!」


「た、ただし?」


「我もお前に連れて行くがいい!!

 我の封印を解く鍵が見つかるやもしれん。」


「え、もう既に着いてくる展開かと思ってたわ………そんじゃあ、これから宜しくねプリシラ?」


「何故我の名を知っているのかはわからんが、とりあえずは宜しく頼む。我の名に命じてお前の神化を承諾する。

 神化を使用してみるがいい。」


「どりゃあぁぁー!!!

 "神化"発動!!」


「お、そう言えば言っていなかったが神化に伴いお前は神の座へと究極進化する。 

 おそらくお前の魂が耐えうる限りとてつもない激痛が襲う………かもしれぬ。」


(………は?)


 その刹那、私の身体が異常な程に捻れ始めた。激痛なんてモノじゃない………その名の通り存在が創り変えられていく感覚で、身体中がひび割れていく。


「あぎゃああぁぁー!?!!?!

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!」


「お、落ち着け落ち着け!!

 出来るだけ流れ出る神力を制御して自分の思い描く姿を頭の中で形作るのだ。それがお前の神としての姿になる。

 早くしなければ魂が擦り削られて死ぬぞ。」


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い─────────!!」


(プリシラは無茶苦茶言っている。この痛みの中で頭など正常に動きはしない。 

 それどころか神力の制御すらままならない状態。)


「ダズケ、テ─────プ、リシラ………」


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