第2話 ハードコアな人生
「レベル────248!?
思っていた以上にレベル、上がってるな………」
今倒したミノタウロスは、私の想像以上に最強クラスのモンスターだったらしい。確かに圧は凄かったが、倒せないほどでは無かった、ような?
「よっぽど私のスキルは強力なのかな?
(今のでHPが2000弱まで上昇した………防御力も充分だし、これなら速攻で殺されることは無いだろう。安心、安心)
「私は生き延びるよ………いつかレベルを上げてればいい事もあるでしょ。ひとまずの目標はレベルをひたすら上げて、きたる日のために自分を鍛える事。(スキルの効果は大体コイツで確かめられたし………)」
そういえば、ミノタウロスの死体はどうなるのだろうか?
迷宮に吸収される?それともそのまま血を流して固めて腐っていくのか?
「正直言うとこんなところで腐って激臭を放たれるのはゴメンなんだよね。(私、動けないし。) どうにかしてコイツの死体を消すか埋めるかしたいところだけど………」
《
死ぬ事で自動的に魂が保護され、気づいた時には復活するようになっています。》
「あ、迷宮の加護ってそんな効果あったの?
じゃあ私も死んだら勝手にここに戻ってくるの?」
《死んだ際の記憶は引き継ぎますから、痛みはしっかりと残りますが。》
(マジかよ………痛いのは嫌だなぁ。
やっぱり出来るだけ死なないようには努力しないとダメなのか。)
「そういえばなんだけど、私の中で聞こえる君の声って何なの?
もしかしてこれもスキルの効果?」
《否定します。これは称号『異世界人』による【解析・鑑定】【思念】を駆使した情報伝達システムです。目に写るあらゆる事象への対応が可能になります。》
「称号って、結構重要なんだ………(加護もそれなりに効果があるみたいだし。)
やっぱり、ステータスって均等に高めないと意味が無いのかな?
加護とか称号のレベルがスキルで補えるレベルだとは思えないんだけど。」
《加護と称号は非常に獲得が困難な部類になります。余程のことがない限り、加護で勝る者が負けることはないでしょう。》
「じゃあやっぱ、加護と称号を積極的に集めつつ、スキルの練度とレベルを上げていくと………実にパーフェクトなプラン。私は称号王を目指すぞ!!」
称号を集めるとなると、やはり条件が分からないと何も出来ない。
「今私が獲得できそうな称号って、何かある?」
《解析中です………視界内から獲得可能な称号のデータを分析しています。》
(これだけ本格的に調べてくれるなら、異世界人誰でも強くなれるんじゃね?
てか『異世界人』の効果が破格すぎるのか?)
《解析が終了しました。
現在獲得できる可能性のある称号は三つです。》
「でも、案外に三つしかないんだ………相当に条件が揃わないと流石に称号は得られないのか。」
もうちょっと楽に強くなれると嬉しいんだけどな〜流石にそこまで上手くはいかないか。
《一つ目は『悪食』です。目の前にあるミノタウロスの死体を喰らう事で獲得することができます。代償としてとてつもなくミノタウロスの肉は不味いです。
二つ目は『鑑定者』。何でも視界内にあるモノを鑑定し続ければ得られます。総数、10000回程で獲得することが出来ると思われます。
三つ目は『怠惰』。生まれた場所から一切動かずにレベルを500まで上げれば獲得することができます。以上が現在獲得可能な称号になります。》
おぉ………なんか色々言ってくれたな。全然理解が追いついていないんだが。
悪食は取り敢えず目の前のミノタウロスを食べれば良くて、鑑定者は暇な時に鑑定すればいい。
最後の怠惰は動けないんだから復活したミノタウロスでも狩ってれば自然に達成できるだろう。
「はい!!
ひとまず理解はできたので、それを実行しましょう。ミノタウロスはどうやって食べればいい?」
《「侵略の波動」で強引に死体を削り取れば吸収が可能です。ちなみに、食べてもミノタウロスからは何も得られるモノはありませんが、SPを回復することができます。》
「くっ、流石にこんなグロイ奴を完食はしたくない。SPはゼロになったら何があるの?」
《SPがゼロになる=「死」です。迷宮の加護も発動しませんから、SP管理だけは徹底することをお勧めします。》
SPは無くなったら魂ごと死ぬのか………マジで注意しないとダメじゃん。
「もう既にSPが40を切ってるな………そう言う大切なことはもっと早くに言ってよ。
死にかけるところだったじゃん!!」
早速ミノタウロスに「侵略の波動」を当てていく。
徐々に肉は削げていき、私の体へと吸収される。
「ミノタウロスの肉………確かに不味いけど食べれない程じゃないな。思ってた感じだと、食べた瞬間あぁああぉえぇ、ってなると思ってたんだけど。」
《それは『魔物之性』による効果です。魔物への対抗心と凶暴性を植え付ける代わりに、魔物への抵抗と適性を獲得します。》
「またまた称号に助けられたな。本当に称号さえ有ればなんだかんだ言ってどうにかなるんじゃないの?」
実は影の最強「魔物之性」、これさえあればなんとかSP管理で死ぬことは無さそうだ。(………あ、ミノタウロス食べ切っちゃった。)
「これで『悪食』は獲得できたかな?」
《称号『悪食』の獲得に成功しました。『悪食』の効果は主に一つ────生物以外の吸収でもSP回復が可能になる事と、ありとあらゆる物体を食せる様になります。現在の胃の状態は言わば最強と言えます。》
「よしよし、順調に化け物化が進んでますなぁ。これは迷宮内最強への道も見えてきたんじゃないの!!」
《このアルロス大迷宮内で最強の生物は、封印の間に存在すると言われる幻神が一体、『虚無の巨龍』ですね。レベルは解析可能な段階でレベル5000は超えると思われます。》
「レベル5000!?
私なんてゴミ同然に思えてくる強さじゃないか………まだまだ迷宮最強の道は遠いなぁ。」
《臆することはありません。『虚無の巨龍』は封印されて久しく永遠の封印に囚われています。まず殺される可能性はありませんし、七幻神の中で最も温厚な性格とされていますから大丈夫かと。》
「永遠の封印かぁ………私が解いてあげようかな?
そしてら仲良くなれたりして。」
《万が一にもあり得ません。永遠の封印は全属性無効に加えて、殲滅系無効、自然影響無効、劣化系無効、物理・魔法無効、解析拒否が備わった世界最強の虚空。『虚無の巨龍』が未だ抜け出せずにいるのがその証拠です。》
「でもでも、諦めるにはまだ早くない?
私のスキルならワンチャン破れるかもしれないじゃん!!」
《貴方のスキル『侵略者』による「侵略の波動」は主に侵略系に分類されます。確かに虚空の無効化には含まれていない部類ですが………》
「やっぱり可能性あんじゃん!!
解析結果と時代が全てじゃないんだよ鑑定君………何度も試して確かめて、実際にやってみないとわからないことだって沢山あるんだから。」
《で、ですが!!
私の解析は──────》
[─────小虫の会話だと思って聞いていれば、面白い話をしているな弱者共。]
「ほへ?」
[我の圧を受けても尚、気を失わないその心意気は褒めてやろう。だがしかし!!
お前は先程この七幻神最強と言われた伝説の『巨龍』と仲良くなると言っていたな………
「か、鑑定さん………このとんでもなく感じる気配と圧は何ですか!?
さっきの牛が可愛く思えてくる程ですよ!?」
(尋常じゃないほどに命の危険を感じる。一瞬でも怪しい動きをすれば真っ先に殺される自信がある。)
《だ、大丈夫です………封印の虚空が有れば『虚無の巨龍』が攻撃をする事はできない筈────多分。》
「い、今"虚無の巨龍"って言いましたか鑑定君!?
もしかしなくても迷宮最強に喧嘩売られてるの!?」
《わ、私はひとまず解析の続きを………仲良くなるチャンスです。健闘を祈ります。》
私の脳内に、コンピュータの電源が切れる音が響き渡る。とうとう不味くなってきた迷宮生活………
「序盤からドラゴンの最強格って………どれだけハードコアな人生なんだか。」
私は異世界の恐ろしさを心から理解させられるのであった。
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