ミミックに転生って、嘘でしょ?
@toyase
初編 迷宮編
第1話 ミミックに転生………笑えないよ。
目が覚める───鮮明に覚えている痛みと苦しみが身体中に巡る。少しずつ思い出していく現状───自分はトラックにはねられて死んだ……筈?
何故か身体は動かないが目は見えるようだ。
「洞、窟?」
トラックにはねられたところまでは覚えているが、その後私が洞窟に搬送された記憶は無い。それどころかなんとなく現状を理解してしまう。
「異世界、転生………まさか本当に存在する話だったの??
確かに私は善人では無かったかもしれないけど、流石になんの情報も無しに異世界へ放り出すのはなくない?
そもそも死んだの私の所為じゃ無いし………」
トラックにはねられて死んだ………多少のショックはあるが今生きているなら問題はそこまで無い。(無い筈)
それより今、最も考えなくてはいけないことは────
「私は今、どうなってるんでしょうか?
私の知る限りでは、異世界転生は必ずしも人になれるとは限らない。それどころか最近では魔物や武器なんかに憑依している場合が多い。」
本気で足に力を入れるが身体は動かない。(と言うか、本当に足なのかも分からない)
腕も見えないし、妙に視線が低い気がする。
「こう言う時って、大抵は"ステータス"って叫べば自分の情報を把握できるんだったよね?
流石にステータスすらわからないようじゃ、異世界を生き抜くことができませんよ。」
《対象・イノリのステータスを表示します》
ステータス
個体名:イノリ
種族名:
レベル:1
称号:『異世界人』『魔物之性』
加護:『迷宮の加護』
魔法:〈陰魔法〉〈治癒魔法・微〉
技能:【
【
HP:100/100(緑)
MP:100/100(青)
SP:96/100(黄)
攻撃力:80 防御力:120
敏捷:10 知力:400
器用:10 運:10
「ふむふむ………私の現状は把握でき、た!?
よくよく考えれば身体は動かないし、視線はめちゃくちゃ低い。ミミックとしての特徴は大方網羅している。
「
私が魔物みたいとでもいいたい訳!?
確かに今はミミックになっちゃってるみたいだけど………私だって元は人間」
魔物への転生は、流石に無いと思っていたが、まさかドンピシャで当たるとは思ってもみなかった。
フラグって本当に実在するんだなぁ。
私の人生、確かに華が無いと思ってたけど、遂に大きな転機が現れた。
「取り敢えずミミックに転生したことは認めよう。本当は認めたく無いけど!!」
なんとなくだが分かる。
レベルを上げて進化でも何でも、ひとまず人の姿になる必要がある。いま、この姿で人里にでも行けば、即刻狩られるか殺される。(どっちも同じだけど………)
「そもそもここはどこなの?
レベルを上げようにも狩るモノが無い………迷宮の加護ってことは、此処は迷宮なの?」
てか、迷宮って何?
私の知識ではモンスターが
「流石に転生して早々に死にたくは、ない。少しでも強くなって、この弱肉強食の世界を生き抜いてやる!!」
出来るだけ人は殺したく無い。元は人間、人の心を忘れた訳では無い。
無意味な殺戮は控えよう。
「何でも来いやモンスター!!
この私が狩り殺してくれ─────」
ドンッッッ!!!
「ん?
な、何よ今の音………私の危機察知センサーが全力で警報を鳴らしてるんだけど。」
なんだか身体中が震えるようだ。恐怖────ただただ体が恐れをなして震える。
絶対的存在を前にした小虫のように。
「ブモォォォォーーー!!!!」
「ぐへぇ………一体何なのよこいつは!!
明らかに序盤で出会うタイプのモンスターじゃ無いんだけど!?」
鍛え上げられた巨体────幾千の戦いを勝ち抜いてきたと言わせんばかりの大斧────そして
「どうみてもコイツはこのフロアを仕切るボス的な存在でしょ!!
あの斧一振りでここら一体吹き飛ぶよ!?」
《対象・ミノタウロスのステータスを解析しました。ステータスを表示します》
ステータス
種族名:
レベル:576
称号:迷宮第一層守護者
加護:迷宮の加護
魔法:〈土魔法・上〉
技能:【猛牛本能】【根性】【旋風無双】
HP:1000/1000
MP:500/500
SP:40/100
攻撃力:7000 防御力:2000
敏捷:300 知力:10
器用:10 運:100
(ば、馬鹿でしょこれは………絶対勝てねぇー。)
少しでも目を付けられたら一瞬で殺される。そのくらいやばい。攻撃力7000ってバケモンじゃん。
「私は箱………私は箱………」
「ブモォ?」
「ひぇ!!」
(まさかの一瞬で目を付けられた!?
私は箱……私は箱!!)
「ブモォ!!」
(な、なんでこっち来るのよ!!
早くどっか行ってよ!!私なんて経験値少ないよ!?)
万事休す、か………まさかの牛に斧で潰されるのが私の最後?
せっかく新しい命を与えられたのに?
誰もいない自由を得たのに?
否────私は生き延びる
「この私がこんなところで死んでたまるか!!
私は戦うぞ………恐怖がなんだ、震えがなんだ!!」
《「侵略の波動」効果範囲に対象・ミノタウロスが入り込みました。スキルを発動しますか?》
「YES!!
私の邪魔をする奴は全員皆殺しじゃ!!」
《「侵略の波動」を発動します。効果は範囲内にいるありとあらゆる生命、物体への継続ダメージです。
現段階でのダメージは毎秒1ダメージです。》
スキルが発動すると同時に、ミノタウロスの身体から血が溢れ出した。
「ブモォ!?」
毎秒1ダメージは確かに少ない………だが!!
ダメージとは傷を受けること。毎秒小さくも、傷と痛みを与えられるミノタウロスにとっては最悪の状況と言えた。
それこそ、ミノタウロスの動きを止めるには充分すぎる程には。
《「死毒操作」による死毒付与を「侵略の波動」に行いますか?》
「お願い………この牛で私の強さを確かめる。」
《「死毒効果」を「侵略の波動」へ付与しました》
死毒を付与したと思ったその瞬間────ミノタウロスの口から大量の血が零れ落ちた。
(死毒、少しでも浴びればタダでは済まないらしい。屈強なミノタウロスが泡を吹いて白目を向いている。相当苦しそうだ。)
「悪いけど、どのくらいまで継続するのかだけは確かめさせてもらうよ………後、死毒のダメージ量も知りたいしね。」
「ブ、もぉ!!!!!」
ミノタウロスの命が削られていく。
死毒のダメージは大体、毎秒100から200で、動こうとすると更にダメージを受ける。
これはいい事を知った。
《対象・ミノタウロスの討伐を確認しました。大量の経験値を獲得………対象・イノリのレベルが上昇します。》
「どのくらい上がったかな………流石にレベル1がレベル576に勝ったんだし、結構上がってるのかな?」
私がステータスボードに目を通すと、そこに書かれていたレベルは───────
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