鹿島 虎 浮気相手を殺しちゃう子です。

「…おはよぉ。って、もう7時じゃん!なんで起こしてくれなかったの!あと一本電車逃したら遅刻だよ!佳奈も早く準備して!」

「…虎?今日祝日だよ。」

「…あ、そっかぁ。あせったぁ。」

「ぷっ、あははははははは。」

「そんなに笑わなくていいだろ。」

「だって、おかしくてつい。」

「はいはい、もう笑うのおしまい!」

「…あぁ、笑った。ごめんごめん。はい、起きて、朝ごはん作ったから食べよ?」

佳奈は翌日学校が休みになる日は必ず泊まりに来る。佳奈は俺の事が好きで好きでたまらないそうだ。付き合って半年。告白は佳奈からだった。


「私と付き合ってください!」

「やだ。」

「…ありがと。嬉しい!」

「聞いてた?や「ありがと!」

「あ、いや俺ことわ「ありがと!」

あの時はなんなんだと思っていたが、好きになってしまった今思えばとても可愛らしい。


あんなに無茶苦茶な告白を受けてから週末はもちろん。祝日の日だって、俺の家に入り浸っている。俺が下宿で一人暮らしというのもあるが、この生活ができる大きい理由は佳奈の親が、佳奈のことを溺愛しているから。これである。佳奈の言うことには頭が上がらない。そんな感じの親だった。

初めの頃はお試しで付き合おうという形になってた。でもそれから何をするにしても一緒にして、一緒に乗り越えてって、してたら俺は佳奈に落ちていた。今は俺の方が好き好き言ってるんじゃないか。

そう思っている。

「佳奈。そろそろ俺が佳奈の家に泊まってみてもいいかな。」

「…ダメ。」

「ごめん。やっぱだめか。」

佳奈は俺の家には泊まるが、俺が佳奈の家に泊まりに行こうとすると拒否られる。どうしてもだ。

前に1回だけ、家に伺った時にすごい剣幕で来ないでって言われた。なんか隠し事でもあるのだろうか。

怪しくなったら仕方なくなって、学校終わりに、佳奈の家までこっそりついて行ってみた。佳奈の親は仕事に行っているらしく車庫には1台も車がなかった。佳奈はそのまま家の中に入っていった。

やっぱり隠し事なんかないんだよ。そう思って帰ろうとした時、引っかかった。鍵かかってなかったよね。誰かいるのかな?もしかして、兄妹がいた?教えてもらってないだけだったっけ。…いや、家族は親の2人だけって言ってたもんな。じゃあ、誰なんだ。考え出したらマイナスな方にしか気持ちが向かなくて、考えることやめた。

そんなことよりやらなきゃ行けないことあるし。


「…佳奈。好きだよ。」

「私もだよ。」

前まで名前読んでくれてたのに、もう呼んでくれない。

まぁ、無理ないか。俺を愛してる佳奈はもう居ないんだもんね。

知ってるよ。でも他の男に無理やりされてるんでしょ?そうだよね。そうとしか考えれない。誰だよ。佳奈を無理やりとって言ったやつ。待ってろよ佳奈。すぐ助けてやるから。


「…やっと見つけた。あいつは誰だ?あいつ同じクラスの山下じゃないか。許さない。俺の佳奈を…」


今日は1人でお出かけ、佳奈は?って。今日は平日だから佳奈は居ない。どこにお出かけ、そんなの佳奈の家に決まってるじゃん。学校終わりに1度家に帰って、お洒落してきた。カバンも新しく買ったやつ。前使ってた小さいやつには包丁が入らなくて…。


ピーンポーン。

チャイムを鳴らして待つこと数秒。ガチャッと音を立て扉が開いた。出てきたのは佳奈。驚きで言葉が出せないようだった。

「7ヶ月記念だから。」

そう言って途中の花屋で見つけた、ブラックローズを、手渡す。

「なんで?なんで来たの?ダメって言ったじゃん!」

強い否定をされて戸惑った。

「なんでダメなの?隠し事があるの?」

あるって。知ってるのに聞いてみる。ほら、俺に助けを求めて!助けるから!

「あるわけないでしょ。」

「…そっか。やっぱり脅されてるんだね。どいて、助けるから!」

「何言ってんの。脅されるって誰に?」

「同じクラスの山下に脅されてるんだろ!助けるからどいて!」

「…なんで、なんで知ってるの?いつから知ってたの?」

「1ヶ月前から。ごめんね、1ヶ月も、助けてあげれなくて。すぐ助けるから。」

「助けるって何?山下君は私の事脅したりしてないよ。」

「ならなんで、山下君はずっと佳奈の家にいるんだよ。」

「それは…。そうよ、私山下君の方が好きになったの。だから、別れましょ。」

「…佳奈。そこまで脅されてるなんて、ごめんね。」

そう言いながら、佳奈を強引に押しのけ、家に入る。廊下の奥の方に空いてるドアがあって、その中からテレビの音が聞こえるから、そこに山下はいるんだろう。

後ろから羽交い締めのようにして佳奈が止めてくるが、力で勝つことが出来ないのなんて誰が見てもわかる。

部屋に入る。ずっとテレビを見て俺に気づかない。今なら殺れる。

「山下君!危ない!」

佳奈の声を聞いて、振り向いた山下は俺に気がついた。あっちは、何も持っていない。俺はカバンの中に包丁がある。そんなことを知らない山下は俺に殴りかかってくる。あぁ、やっぱり。暴力で脅されたんだね。今助けるよ。

「あっ。ごほっ。ごほっ。」

殴りかかってくる勢いと、俺がカバンから包丁を抜きそのまま突き刺す勢いがぶつかった。包丁は、山下の肋骨に阻まれて心臓とはズレた場所に刺さったが、肺に刺さったんだろう。

咳をしながら血を吐く山下を見下した。

「お前が俺の佳奈を脅すのが悪いんだからな。ざまぁみろ。」

「さぁ、佳奈、あっち行こ。もうこれで俺のとこに戻ってこれるよ!大好き!」

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