ヤンデレ男子じゃだめですか?

病んでる高二

明瀬 湊 決めつけで動ける子です。

「先輩!一緒帰りましょ!」

「ごめんねぇ…。今日はちょっと用事あるんだよね。」

「…そうですか。なら先に帰っときますね。」

「本当ごめんね?明日は一緒に帰ろ。」

「はい!じゃあまた明日!」

先輩の言ってた用事がなんなのかなんでもうわかってる。"また"告られるんだ。

「…そうだよなぁ。先輩モテるもんな。」

そういいながら、僕はトイレに入った。片手にはカッターを握りしめて。


「はぁ…湊くんはなんで毎日私と帰りたがるんだろ。家が近い訳でもないのになぁ。あっ、もうそろそろ時間だ。えっと屋上に行かなきゃいけないんだっけ。」

「…うん。ごめんね。私好きな人がいるの。だから、君とは付き合えないかなぁ。」

あ〜ぁ、泣いちゃった。なんで最近の男ってこんなにすぐ泣くの。もっとシャキってしてよ。はぁ。

「…帰らなきゃ。もう、また時間食っちゃった!家に帰って、テスト勉強しないといけないのにぃ。」


男子トイレの前を駆け足で通り過ぎる先輩。あの様子だと、告白は"また"断ったんだね。僕のためにずっと隣を開けててくれてる。ほんとに好きだ。さて、そろそろかな。

先輩がいないことをしっかり確認してトイレからでる。カッターを握りしめたまま、屋上に向かう。案の定、泣き止んで落ち着いた様子の告白相手が、階段を降りてきているところだった。先輩なのかな?まぁ。カンケーないか。

「…ちょっと。」

すれ違いざまに呼び止める。

「ねぇ。屋上って誰かいた?…そっか誰もいなかったんだ…。じゃあ何してたの?」

先輩が屋上に向かったのはトイレから見ていたからわかっている。

「さっきさぁ、先輩屋上に行ったんだよね。まさか呼び出したりしてないよねぇ。先輩の時間潰してまで呼び出してないよね?…関係ないって、何言ってるの?君のせいで先輩は無駄な時間潰したんだよ?償うのが当たり前だよね。だって先輩の隣は僕って決まってるのに、わざわざ告白して。それのどこが無駄じゃないっていうの。」

ヒートアップして相手の肩を壁に押し付ける。

「…はぁ、話が通じない。あのさぁ、先輩は僕のことしか見てないの、そんなのも分からないの?じゃあ分かるまで教えてあげるよ。」

そう言いながらカッターの刃を少しずつ出していく。カチカチカチ…と、少しずつカッターの刃が、長くなる。ある程度出したらそれを彼の頬に当てる。

「ねぇ。わかった?先輩は僕のことが好きなの。わかったって言ってよ。言ってくれないとわかんない。」

彼は掠れた声でわかったって、言った。しょうがないから手を離してあげた。

「分かったら。もう二度と先輩に近づかないでね。」

情けない彼は、腰を抜かしたのかその場で座り込んで動かなくなってしまった。

「そんなによわっちいのに、先輩に手出そうとか、ちゃんと身の程を知ってね。」


忘れ物をしてしまった。教室に戻る途中、誰かの気の抜けた。『ひぃ…。』という声を聞いた。おそるおそる声のした方に向かうと、曲がり角の先から、湊くんの声がする。あれ?帰ったはずじゃ…。まさか、待っててくれたのかなと思い、曲がり角に近づく。『…先輩は、僕のことが好きなの。わかったって言ってよ。』そんな言葉が聞こえてきた。

湊くんの声だか言ってることはいつもの湊くんとはかけ離れた言葉だった。いつも帰ろうと誘うような甘えた声ではない、低く鋭い声だった。話は終わったみたいだった。離れないとバレるとわかってても、足が動かなかった。曲がり角から彼が顔を出す。

「…あっ、湊くん…。…どうしたの?も、もしかして待っててくれたの?ごめん!気づかなくて帰っちゃってた。忘れ物して取りに来たんだ。」

「…そうだよ。待ってた。嫌じゃなかった?」

「全然!でもこれから待っとくなら言わないとダメだからね!」

「そうだね。もう用事も終わったみたいだし、一緒に帰ろ?」

「う、うん。帰ろっか。」

声はいつもの声に戻っていた。さっきの話を聞かれてたことは、気づいてないみたい。どこかでホッとした自分がいた。


もしかして、聞かれた?いや、聞かれてないよね。聞かれててこの反応なら、やっぱり僕のために開けてるだね。

待っててね。先輩と僕の邪魔する人みんな説得するから。

邪魔がいなくなったら一緒にずっと暮らそうね。

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