第5話 到着! らしい制服フルセット
翌日の昼下がり。早くも東方新社ラボから、らしい制服フルセットが部屋に届いた。なるほど、メイド・イン上海なのね。
夏服と冬服をそれそれ取り出して、床に並べてみた。夏服はセーラー服、冬服はブレザーだ。それぞれ用の靴下もある。
どちらも確かにそれらしい制服なのだけれども、一貫性はない。
冬服の方は、なんと、オールインワン仕様だった。上着のブレザーと中のシャツ、そしてスカートが一体となっている。当初は消防着用だったはずのオールインワン・ウェア。存在は知っていたけれども、進んで着ようと思ったことはない。
どうやって着るのか、マニュアルを見てみる。ブレザーの左手のボタンが制御スイッチになっていて、そこで背中の方が開閉するらしい。無駄にハイテクな
マニュアル通りにボタンを押すと、らしいブレザー制服の後ろが開く。
ブレザーの着心地は、割といい感じ。
鏡の前に立つと、ほんとに中学生に戻った気がして、ちょっと楽しい気分になってきた。やはり自分の服があるというのはいいものだ。三十路脳の片隅から年甲斐もなく、というアラートが出てきたが、気にしないことにする。中学時代、わたしはブレザーを着たことはない。いくつになっても初体験は楽しいものらしい。
昨日の二日酔いは過ぎ去っていたし、ルンルンと水元公園の散歩にでも出かけたい気分になる。けれども、わたしサイズのブラはまだ手元にない。そして何より、見た目中学生なわたしが、制服姿で平日日中に出歩くのは問題を招きかねないだろう。
ということで、らしい制服お部屋ファッションショーをすることにした。
腰に手をあてながら、わたしは「せっかくなので」、とにんまりする。
BGMは中学の時聞いていた懐かしの曲にしよう。やっぱり宝塚のエリザベートがいいわね。
宝塚鑑賞は、わたしが母親から引き継いだ唯一の趣味だった。わたしの宝塚ファン履歴は、小学校高学年から始まる。ということで、当然、
PCから、雪組娘さんのエリザベート歌唱が流れだす。わたしは、懐かし気分でふふふんふふふんとハモリはじめた。
リビングの鏡の前にブレザー服姿なわたしは、ストゥニュー風のバレエ・ターンをきめてみた。宝塚に憧れてちょっとだけかじっただけのバレエだし、しばらくやったことがなかった。けれども、13歳の身体のほうが覚えていたのか、くるりんときれいに一回転ができた。そのまま、背筋を伸ばしてポーズを取る。もちろん、146cmちょいの身長では宝塚のようにはいかないけれども、まぁブレザーの今のわたしの姿には、年相応の可愛げはあった。
雪組娘さんの唄が、歌劇『怪盗紳士アルセーヌ・リュパン』のエンディング曲へと変わった。割と最近の曲ながら、『愛と死の
さして見られたものじゃないだろうから鏡の方は向かずに踊ってみたのだけれども、最後のポーズを決めた頃には、わたし的には大満足だ。
次は、らしいセーラー服の方を着てみようかと思う。
けれども、このオールインワンな、らしいブレザー服の脱ぎ方を知らないことに気がついてしまった。さて、どうやって脱ぐのかしらと、わたしは再びマニュアルを開く。
脱ぎ方は二通りある、らしい。着た時と同じように、後ろがツーッと開いてていくタイプの脱ぎ方と、ワンタッチで前から開く脱ぎ方と。
ブレザー左腕のボタンが後ろがツーッのコマンド用、右腕のボタンが前開きコマンド用らしい。後ろがツーッの方は、先ほどチャーっと着た時の逆なのだろうから想像がつく。ワンタッチで前開きとは何なのか? 嫌な予感がする。
ちょっとためらった後、今後のためにも、私は謎の前開きコマンドの方を試しておくことにした。鏡の前に立ったわたしは左手で右腕のボタンを押した。
ツツーっとスカートが下から開きはじめた。鏡の前でエッと固まったわたしにお構いなくスカートが開き、そして、ブレザー部分のシャツも開いていく。わたしは鏡の前で、ブレザーの下は
上海の東方新社ラボとやらは、日本の女子中高生をどう見ているのだろうか。おまかせ注文でまさかこんな斜め上の制服が届いてしまうとは。
しばし固まってから、らしいブレザー服を脱いだわたしは、宝塚雪組娘さんのBGM再生を止めた。
マニュアルによると、前が開いたブレザーは、付属のハンガーにかけると、元のブレザーに戻るらしい。ほんとかしら、と訝しみながら、ハンガーにらしいブレザー服をかけると、たしかに元に戻った。ハンガーにかけられた、らしいブレザーは、どこぞかの名門中学校の指定冬服と言われても、それらしいと思えそうな出来ではある。
これをどうしたものかは、
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