第4話 姉妹ヨーガと、2人のベッド
部屋に帰ると、
「うん、驚きの連続だったろうから、ゆっくり入ってくるといいよ」
とわたしは、
わたしも昼下がりにゆっくり湯船につかったことで落ち着けたしね。
部屋でひとりになったわたしは、再び
中学生らしい制服が届き、二階堂先輩の研究室をお伺いするここになったとして、どこまで話すのが良いのかしらん?
おそらくは、わたしの身振りや話しぶりから、先輩は、見た目が中学生のわたしの中身が成人女性であることには気づくだろう。はじめから、中身のことも話してしまった方がいい。
となると、未来からOL姿で転移してきたわたしが、証拠となる品を何も持っていないという説明は不自然だ(稲妻と共に全裸で出現、なんて設定は作りたくない)。
少し悩んだ末、わたしは少なくともIDカードは持っていくべきだと決めた。ちょちょいとIDカードに触れて経緯を説明すれば、先輩の信を得るための時間は短くなるだろう。
バスタオル姿の
「あぁ、なんかいろいろ考えちゃうね、イモウトよ。眠れなそうかも」
二十代半ばの頃、わたしは目が冱えた夜に、お部屋でほろよい系のリキュールをしばしば飲んでいた。遺伝的にお酒に弱いわたしは、アルコールにあまり慣れなかったけれども。
既にアルコールをほぼ卒業済なわたしは、プシュッと、ほろほろよいの缶を
(若いな、
クピクピっとほろほろよいの缶をあおってから、バスタオルを外して服を着始めた
(やっぱ、ちょっぴり可愛くない?)
肌は記憶の中のわたしよりつやつやだし、身体のラインに好ましい丸みがある。元のわたしの24歳の時より、眼前の
脳内で記憶している昨日までの姿から7歳ほど若いせいための視認誤差か何かと結論づけたい気がするが、一方で、ナチュラル茶髪に色白な肌、という今のわたしも、南国娘だった中2のわたしとは異なる。
(もしや、ナルシシズムというもの?)
『ナルシシズムとは自己愛、すなわち自己を愛したり、自己を性的な対象とみなす状態を言う』という辞書の定義を思い浮かべながら、妙な気持ちを味わう。・・・今風に言えば、セプレ、すなわち、セルフプレジャー?などと思うわたしの前で、
「ねぇ、おやすみのヨーガをしてみない?」
と、わたしは笑いかけた。
「よーが?」
不思議そうにわたしを見る
「そうそう、お姉ちゃんが部屋に帰ってきた時のわたしのポーズも、ヨーガなんだよ」
と、わたしは、
そこからは、
合間に、くぴっ、とほろほろ缶を呑んでいた
「このベッドで一緒に寝ていいからね」
と言って、
たしかに、人類の標準的な身長に合わせてつくらられているのだろうシングルベッドに、ちっこいわたし達2人が並んで眠ることに困難はほぼない。わたし達は基本的に寝相が良いのだ。一度眠ったら目が醒めるまで、
わたしもベッドに入る。お昼寝をたっぷり取ったためか、眠気はやってこない。
薄明かりの中、
バイオメトリクスと記憶を共有している
(ちょっとだけね)と心の中で言い訳をして、
しばしお胸に無心に触れたわたしは、(ありがとね)と、
§
§
昼に三十路ブラを手で測定済だから、サイズ差については確信がある。
再び天井を眺める。
静脈のバイオメトリクスの一致から、少なくとも静脈のパターンが固まる年齢まではわたしと
生物学的に考えられる仮説は、以下のようなところかな。
§ わたしと
§ わたしと
§ その両方。わたし達の遺伝子は微妙に違っていて、環境要因も微妙に異なる。
一番目の仮説は無理そうだ。女性ホルモンの分泌量などでバストサイズが大きく変わることはないだろう。ただ、わたしのいた世界と今いるこの世界とは、バストサイズに与える何かの要因が異なる並行世界、と仮定すればありうるのかも。
そして、別の可能性に思い至る。
§
人間丸ごとコピーマシンが、バイオメトリクスもコピーしてしまう。この説ならば、並行世界を考える必要はなくなる。わたしの中の31歳らしい記憶はどこから来たの? ということにはなるけれども、
(うーん、よく分からなくなってきた)
再び
安らかな寝顔だった。わたしがいろいろ話した諸々を彼女なりに受け入れてくれたように思える。
むくりと起きあがり、わたしは台所に向かう。冷蔵庫をあけて、薄緑色のほろほろよいの缶を取り出す。
もう一口クピッとほろほろよいを喉に流し込む。
(いずれにしても、今は分からないことだらけなんだね)
夜の公園の暗がりを視野にいれつつ、そう思った。
部屋に戻り、しばらくしてから再びベッドに入った。絶賛就寝中の
そして、もう一口だけほろほろよいを呑んで後くらいに、脳がクラリとして眠りについた。
☆
「もうっ」
社会人スーツに着替え済の
「ぜんぜん起きないんだから」
「未成年者は飲んじゃいけないだからね」
「そうなのかもね」
と、ぐてっとしたままわたしは同意する。
両手のほろほろ缶を台所に持っていった
「まだ実感はないのかもだけれど、今のあなたの身体は中学生」
そういった
よろしい、頷きを返した
「あと、私の胸をいじくっていたでしょ。目が醒めてどう反応したものか困ったんだから」
とわたしにジトっと目を向けた。
☆
通勤バックを肩にかけ、じゃあねと玄関を出る
アルデヒドに苦しむわたしは、昼までは余裕でベッドに入っていられる気がする。というか、立ち上がるのが辛い。
昨晩作った焼きそばは、結局、わたしの遅めの昼食となった。あとは、冷蔵庫に入っていたヨーグルトを食べて夕方を迎えた。
☆
その晩、
すると、
ひゃん、となったわたしに
「昨晩のお返しよ」 と返した
どうせ中2の頃の記憶をたどっただけなのだろうが、明日ブラを買ってこようかという申し出には、素直にお願いしておいた。
すると
研究室への訪問は、明後日の夕方となった。
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