第11話 お腹が痛くて…

 5分前行動――というのは仕事をする上で誰しもが気を留めている事かと思います。

 説明するまでもない事ではあるが、大坪はそれが出来ない。


 と言うか出勤時間に来ていることが3割あるかどうか……。

 まぁ遅刻のいくつかは1、2分ではあるが遅刻は遅刻。

 大部分が平均30分は遅刻してくるし、もちろん悪びれる様子もない。


 いつだったか何日か連続で遅刻し、その理由が


 「お腹が痛くてトイレに篭っていた」


 というもの。

 もちろん誰もが、


 「いや絶対ウソやろ」


 と思った。

 そしてあまりにそれが多いので店長は、


 「そんなに毎日お腹痛くなるなら休みの日に病院行った方がいいよ。なんか重大な病気だったら大変だし」


 と言った。もちろん心配している訳ではなく、たっぷりの皮肉を込めて。

 普通の人ならば本気で心配するだろうが相手は大坪。どうせウソだと言うことは分かっている。


 そして次の日――。


 「お腹が痛くて病院行くので今日は休みます」


 と、店長の出勤早々その電話。

 呆れてものも言えない。

 結局何事もなかったらしいしそれ以来お腹が痛いという言い訳はしなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る