2021年8月29日 雇用保険くれ、有給くれ

 先月から大坪は準社員からバイトへと雇用形態が変わった。

 大坪がバイトになりたいと言ったそうだ。

 理由――。


 【働きたくないから】


 驚愕。

 

 雇用形態変更に伴い、出勤時間と日数が激減。

 14時半から閉店までの勤務が17時から22時までの勤務へと変わった。


 大坪はバイトに変わる前、


 「もし人が足りない時は早めに出勤してもいいですよ」


 と、物凄い上から目線で言っていたそうだ。



 変更にあたり、店長から釘を刺されたことがある。


それは、


 【お金が欲しいから出勤時間を増やせ、日数を増やせ、と言わない事】


 「自分の都合でバイトになるんだからね、勝手な理由で増やせとかできないから」


 と至極当然の通告。大坪はしっかり承諾した。


 皆さんこれ、フラグですよ。



 バイトとなって最初の給料日後。

 12連休も明けた2回目の出勤日、夕礼を済ませた直後、いつものように(こんなのを毎回とは……)大坪は店長を呼び止め、自己中の発言を始める。


 佐伯は倉庫での作業があった為、途中から断片的ではあるが実況生中継を目撃する。


 「雇用保険がほしいので出勤を16日にしてください」


 そして、


 「有給貯めてるやつを辞める時一気に使いたいんですけど」


 と言うようなことを確か言ってた気がする。


 店長も、


 「そういう事は俺も分からないから労務課に聞いてみるよ」


 と言っていたが、


 「誰か他の人がそういう事してたりとか聞いたりできないんですか?」

 「そんな事聞いたことないからわからないよ」

 「でも辞めたりする時とかそうしますよね?」

 「俺は辞めたことないから分からないもん労務課に聞かないと」

 「……じゃあ聞かなくていいです。がめついって思われたくないので」


 (いやいや今までが充分がめついし)


 と店長は思ったそうだし、その話を聞いた誰もが同じことを思っていた。



 それからまた話をぶり返し、出勤日数を増やす事について再度話し出した大坪。


 「他のバイトの子は増やしたりしてますよね?」

 「あれは前から決まってたことだから」

 「なんで私はダメなんですか??」

 「最初にちゃんと約束したよね??」


 と、深く食い下がっていたが結局は不満をもらしながらも引き下がっていった。


 きっとこのやり取りも何十回何百回繰り返すことになるだろうて…。

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