2021年8月5日 クーポンとドリンク

 話は今現在。

 序章から2年前たった今も現在進行形で大坪が出勤すれば9割9分問題が起こるのです。


 この日、店長は出勤して早々苛立ちがMAXになっていた。

 というのも、今この地域では応援クーポンなる金券が町役場からM町の住人へ配られている。

 その取り扱いは非常に繊細で、テイクアウト用と通常の金券タイプがあるのだが、500円以上のお会計で使える500円引きのクーポンで、通常の金券タイプしかうちの店では使うことが出来ない。


 そしてどうやら大坪はその取り扱いを間違ったらしい。


 さらにこの日、少し前に店長に「辞める」と話していたらしいのだが、店長が出勤して早々大坪から電話があり、


「やっぱり辞めるのやめます」


 と言ったらしい。ちなみにこれは5度目である。


 そんな事もあり、大坪の出勤早々夕礼が終わったタイミングで店長から即呼び出し。


 「もう1回クーポンの事教えるねッ」


 一言目から声を荒らげている店長。


 「いや、マニュアルもう一度見せてくださいッ」


 言い返す大坪。


 佐伯はこの時近くで仕事していたのだが全てを見ていた訳ではなく。この最初の言い合いだけしか聞いていない。




 いつもの説教が終わり数時間がたった頃、大坪は細長い大きめの台車にドリンクのケースを積み、荷出しを行っていた。


 佐伯と夕方から出勤する学生の女の子が倉庫でダンボール等を片していると、大坪は売り場に出せなかったドリンクのケースを持って帰ってきた。

 ドリンクは残ったぶんのうちバラが出た場合は指定の場所にあるオリコンに片し、ケースそのままの物はそのまま倉庫の棚へ収納する。

 だが大坪はまた思わぬ行動に出る。


 佐伯はチラッとしか見ていなかったが、学生の女の子は一部始終を見ていた。


 「これやばくないですか?」


 学生の女の子は佐伯を呼び出し、大坪が片していたオリコンを見る。するとそこには―――。


 ハンパじゃない量のオ〇ナ〇ンCが置かれていた。

 その数100本。オ〇ナ〇ンCは1本1本バラで出してるタイプと10本ケースで出してるタイプがある。

 その10本タイプが5ケースを一まとめにしてダンボールの中に詰められて納品される。

 つまり50本。そしてこの日それが2つ。つまり100本。


 これが全部バラされオリコンに詰め込まれていたのだ。


 「こんな事されるからいつまで経っても整理できないんですよ」


 と、大坪より一回りも下の学生がボヤいていた。


 詳しく話を聞くと、大坪はドリンクを片す時、オ〇ナ〇ンCを下に落としたらしい。

 だがビンが割れた訳でもなく、ましてや外のダンボールが少しへこんだくらいだろう。


 それを大坪はなにを考えたかわざわざ破れてもいない10本タイプの包装をバラしオリコンに詰め込んだ。


 ちなみに、売り場には1本のバラが入らないくらい棚にあり、10本ケースは1つもなかった……。


 これを知り店長は即大坪へインカムで聞くと、


 「今レジなんで」


 これにさらにブチ切れ。


 「レジ中いつもインカムで暴れてるよな?」


 と、佐伯に話すのだった。


 その後、この件がどうなったのかは佐伯はまだ知らない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る