底辺の頂点

第1話 立場と歴

　先のエピソードから間を置かずして早速スタッフ間とのトラブルが起こる。

　それは、大坪がトイレットペーパーの補充をする時間での事。

　大坪は棚に品薄になったトイレットペーパーを倉庫から出していた所、朝から出勤していたパートのおばちゃんから一言言われた。

　「そんな散らかしてたらお客様がケガしたりするかもしれないからもう少し片付けながらとか端に寄せながらした方が良いよ」

　だがこの一言が大坪に火をつけた。

　その場では何事も無かったが、大坪はトイレットペーパーの補充を終えた直後、すごい剣幕でそのおばちゃんの元へやって来た。

　そして一言。

　「なんでアナタにそんなこと言われなきゃいけないんですかッ！」

　その言葉と態度にパートのおばちゃんは恐怖を感じたという。

　「歴も浅いアナタに言われたくないんですけどッ」

　と大坪は言う。大坪は準社員である。歴としてはこの時点で2年ほど。一応薬の対応の出来る【登録販売者】の資格者である。

　対してそのおばちゃんは登録販売者は持ってないものの、すでに4年越えのベテラン。さらにほの話を聞いたその他のパートさんも激怒。大坪に詰め寄ったと言う。

　さらに店長からは、

　「大坪さんよりその人の方が歴が長いからねッ」

　と言われる始末。それを聞いて大坪は返す言葉もなかったと言う。

　ことある事に歴の長さや準社員等の立場を持ち出す大坪はその後も店を騒がしい続ける。