旧態依然(きゅうたいいぜん)の章
第11話専横跋扈(せんおうばっこ)
突然だが俺は虫が嫌いだ。嫌いというか怖い。
子供の時に大量の虫にたかられるシーンのある映画を見てる最中に同じようにムカデに足をはわれたのだ。一種のトラウマだ。今回はそんな虫が主役のお話。
枕返しのことについては結局、裕美さんと友加里さんのとで2体いた。友加里さんが死ななかったのは裕美からの干渉だと分かっていてそれを思い人から、かまってもらえるのがうれしかったのだろうと。ただ、その原因が嫉妬にあると知って自身も枕返しによる自殺を図ったというがと言うのがシュリーの見方だ。極端ではあるが、シュリーが言うには、妖異の影響を受けると人は一つの考えに固執してしまうことがあるそうだ。
今回の二人については記憶を消してもらった。だから俺が彼女たちにあったという記憶も残ってないはずだ。二人の感情については解決にはなっていないが、愛情のトラブルなんて日常だ。妖異さえ絡まなければ日常がいい解決をしてくれるだろうと俺は思っている。ただ、2人を妖異化させた球については詳細が分からずじまいだった。
前回の件が片付いてから1月ほどもたったころシュリーから次なる妖異の話がでてきた。
何でも夜に山を車で走っていてカーブで曲がり切れずに崖から転落する事故があったらしい。ただその事故の生存者が言うには黒猫に追いかけられたのだという。
それって都市伝説じゃね?たしか子猫をひいてしまって、親の黒猫が子猫を咥えて追いかけてくるってやつ実は某宅配の車だって落ちまでついていたはずだが
そもそもあの宅配便のトラックで山路走る乗用車をあおれるなんてかなり無理があると思うし。
そうね、と シュリー
じゃあなんでわざわざ調査しろと?
「都市伝説でもまことしやかに広がると魂が発生することがあるの」とこともなげに言う。
ちょっとシュリーの言っていることがわからない。俺は両手の平を上に向けてわからないというジェスチャーをした。
「簡単に言うと人の意識が集中するとそこには魂が発生することがあるの,
意識の澱みとでもいうのかしら」
ふーんそんなことがあるんだ、でそこに並行世界からの干渉があって力が強くなっていくということか。
「だから厄介なのよ」なるほどね
「じゃあ聞くけど、昔口裂け女とかあったと思うけどあれも?」
「そうね、彼女の魂は実在するものになってるわ」
あらら、それはそれで恐ろしい。
まてよ。人の思いが集中するもので魂が発生する可能性があるということは。
もしかしたら。俺は素早く召喚呪をとなえる
「孫悟空来臨守護急急如律令」
ボッっと、体が熱くなった。
なんだか体がむず痒い。腕を見るとやたら毛深くなっている。あちゃー悟空は悟空でも こっちじゃない。こっちマチャアキやん
見るとシュリーが手をたたいて笑ってる
「あんたなにやってんの猿を降ろしてどうするの」
「本当はこっちじゃなくて金髪の使い手を降ろしたかったんだけどやっぱり無理なんかな」
「いや、無理じゃないと思うわよ、あれぐらい人気があれば魂はあってもおかしくないし、でも悪いことは言わないからやめときなさいね」
シュリーが言うにはあんな人間離れしたやつと同じことしたら俺の体がもたないんだそうな。魂のコピーをして技術は取れるけど体は俺のままなんだから、サタンぐらいまでなら大丈夫だそうだ。
でもいい検証になった。なるほど、体はそのままなのか、だからこの間の武蔵の後あちこちひどい筋肉痛だったのか。
「ちなみに、肉体に関係ないなら問題ないとか思わないことね、ア〇ラとかもあんなんコピーしたら脳みそ爆発するわよ」
ぐっ完全に読まれてる。しかしこいつ思っている以上に詳しい。気を付けなければ
さて話はもどって事故の生存者についてだが今回は向こうから話したいといってきたのだ。正直事故後の相手にどんななぐさめの言葉を使っていいのか悩んでいたのだがそういう意味では助かった。
俺は早速シュリーと入院している病院へと向かった。
病室に入ると若い女性が、窓の外をボーと見ている。特に見舞いに来ている人もいないようだ。
聞くところによると同乗者は婚約者らしく。その方は亡くなられたとのことだ。名前は
「どうもはじめまして、朧朧猫と言います」と軽く挨拶をする。特に返事もなく静かな時間が流れる。どう切り出そうかと考えているとおもむろに舞さんが、話し出した。
「あれは、ゼロだったんだと思います」顔は外を見たままだ。
「ゼロですか?」
「はい、わたしが小さい時から飼っていた黒猫なんです。ただ彼が猫アレルギーなんで実家から祖母の家に引き取ってもらったんですが最近死んじゃったんです。子供の頃はあんなに楽しく遊んでいたのに最近は毛がつくからといって近づくことさえ嫌ってたんです。だから私のこと、」
ポツリポツリとしたペースで話していた彼女だが急に感極まって泣き出した。
「裏切られたと思って復讐に来たんだわ」
まだかなり情緒不安定なようだ。俺は黙って、しばらくの間落ち着くのを待っていたが一向にその様子はなかった。かなり時間が経過した。言ってるうちに病院も回診の時間となり見舞いの時間は終了とのことで今日のところは話が聞けそうもないので一旦帰ることにした。何ともいたたまれない
帰り道、俺が運転する車の助手席で外を見ながらシュリーがポツリという
「結局何にも得れなかったわね」
「ああ、そうだな、少なくとも彼女からのコンタクトだったんだろ?」
確か今回は御崎さんから会いに来てほしいとの話だったはずだ。今日の状況を見る限りなぜ呼ばれたのかわからない。
「そうね」と言いながらシュリーは黙ってしまった。しばらくの沈黙ののち
「人間て勝手なものね、より大事なものができたら簡単に切り捨てるのね」
耳が痛い話だが、まだましな方じゃないだろうか。ひどいのになると平気で捨てたりするし。俺から見ると婚約者を失った女性が自分のせいだと自身を傷つけているようにしか見えなかったが。神ゆえの目線なのか。
「まあ私がこうしているのもこの世界を守るためであって人を守るためじゃないのを忘れないでね、正直あなたには悪いけど私個人の考えだと人類は庇護するに値しないわ」
うむ、厳しいご意見ではある、この世界に生きる全ての頂点である神であれば納得の話かもしれないとはおもう。しかし世界を守る意味とは一体なんだろうとも同時に思う。世界が滅びるとはいったいどういう状態になるのだろうか。今のところは答えは出なさそうだ。シュリーとの無言の時間が過ぎていく。
本人に話が聞けない以上その本人の口から出てきたワードを頼りに探っていくしかないか。ともかく、そのゼロという猫について調べてみるか。
俺はゼロを預けている舞さん祖母の家に行くことをシュリーに提案した。
シュリーは無言でうなずくだけだった。
人の土地で我が物顔に振る舞うこと
専横 横暴なさま
跋扈 わがままな振る舞い
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