第9話懸崖撒手(けんがいさっしゅ)
「大我目を開けて!」
気が付くと周りが真っ白な空間にいた。周りに人影はない。
なんだ頭に響くこの声は俺は確か裕美に壁にたたきつけられて
白い空間の向こうには大きな右手にシュリーが捕まっているのが見えている
「緊急事態なのにあなたは緊張感が無いわね。急いで、あなたの力を使って彼女を助けてあげて」
一体誰なんだ。しかも俺の力ってなんだ?
「力というか特性ね魂がなくなったことによって
空き?
「他の魂の特性や特技を取り込めるのよ。普通は霊を憑依させる時、魂に隙間が無いから、今ある魂に上書きされてしまうの。それをしてしまうと上書きされた本人の意識がなくなってしまう。でもあなたには空きがあるからな、意識を失わずに取り込めるのよ」
ということは魂の主とかの力や技術を取り込めるってことか。
「そうよ。」
しかしいったいどうやって
「対象の名前と来臨守護急急如律令と唱えて」
ホントに?なんか中二病ぽくていやだなあ。少なくとも40すぎたおっさんが素でやれることじゃないぞ
「あーもう!!早くやって、急がないと彼女がやられてしまうわ」声の主は明らかにイライラしだしている。気が付くと周りの白い空間ではなく自分の部屋にいた。
わかったわかった。まったく落ち着いてほしいものだ。
しかし今は誰を顕現させればいいのか。
強い人と言えばやっぱりあの人かな。俺はある人物を思い描いた。思い切って声に出してみる。
「宮本武蔵来臨守護急急如律令」
あれ?何にも起きない。もしかして叫ばないとだめ?
「そんなアニメみたいな演出がないわよ、。霊体はもう降りているわ。武蔵なら刀を両手にイメージして」
両手に刀を意識すると両手に日本刀のような形でオーラブレードとも言えるようなものが出てきた。二天一流には構えはないのだが自然体の構えで二刀とも下に下げた状態だ。周りを見るといつのまにか白い空間はなくなっている。目の前を見る。大きな鬼が右手だけを巨大化させてシュリーを握っている。
鬼を見据える。やつも俺を敵と見なしたようだシュリーを放すとゆっくりと俺を見据える。
「ぐおおおお」低いうなり声が響く。そこに理性は感じられない。
だがうなるだけで一向に攻めてこない
しばらく静寂が支配する。
武蔵の得意とする戦術は、後の先。相手から仕掛けてくるほうが楽なはずだ。
俺は下げた剣先をふらふらと揺らして見せた。
これを鬼は挑発と受け取ったようだ。
奴はいきなりとびかかってきた。右腕を大きく振りかぶって爪を使って袈裟掛けに腕をおろしてきた。爪の軌道が見える。
左腕を円を描くように腕を受け流しながら外側から踏み込んで右手に持った刀で鬼の首をはねた。静かに落ちていく首がスローモーションのように見える。恨めしそうな眼が落ちていく。決着だ。
「ああああ !!」倒れていたシュリーは現場を見るなり叫んだ。
「馬鹿!、霊体を刀で切ったら裕美も死んじゃうでしょ」
「えええ!!」って事はおれ人を殺したってこと?そんな、もしかして取り返しがつかないことを
俺がシュリーの言葉におたおたしていると鬼の幻影が消えていく。同時に元の裕美の生霊が横たわって現れた。首はつながっている。近くにさっきのキーホルダーと同じ球が壊れて落ちていた。
「どうやら大丈夫そうね裕美の霊体は傷ついてはいないわ」
シュリーは裕美の霊体に手をかざしてみている。
「それは殺してないってこと?」
「そうよ、それにしてもちょっとは気をつけてよね危うく殺すところだったじゃないの。いったい誰を降ろしたのよ」
「えっ、あ、む、武蔵だけど」 俺はボソッと答えた。
「あんな殺人鬼を降ろしたりするからよ、精神まで汚染されてないでしょうね全く」
シュリーは助けてもらったはずなのに容赦ない。確かに鬼ではあるがそれを切って殺害するという行為に俺は何の躊躇もなかった。若干武蔵の影響を受けているのかもしれない。俺はシュリーに反論をゆるされないまま以後武蔵禁止とまで言われてしまった。
しかしそんなこと言われても、知らんかったし、時間なかったし、一体どうしろと。
ともかく人殺しの汚名を着ることはなかったようで、それだけは救いだった。
「ううう」うめき声とともに裕美の霊体が起き上がる。今は色もどす黒く無く普通な感じだ。
「どうやら悪意的なものはなくなったようね、さあ裕美あなたの体にお帰りなさい。悪い夢を見ていただけなのよ」
そう優しくシュリーが語り掛けると裕美の霊体は笑顔で消えていった
それはそうと、俺に力の使い方を説明してくれたのは一体誰だったんだろう、シュリーのことは知っているようだったが。
シュリーに聞いてみたが心当たりはないと返事が返ってきた。知らんわけないだろとも思うのだが。突っ込もうとした時
「皆さんお揃いですか」
後ろから穏やかな声が聞こえる。友加里さんが目を覚ましたようだ
シュリーの術もあってかあれだけ騒動があったのに目が覚めることはなかったようだ。ともかくこれにて一件落着。俺は枕返しの正体は伏せて夜おきたことを説明して、友加里さんを帰宅させることにした。これでもう彼女を脅かす存在は出ないはずだった。
思い切って何かを行うこと。崖から手を話すの意味
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