第8話紫電一閃(しでんいっせん)
その日から友加里さんは俺の家で寝泊まりすることとなった
移動して2週間が過ぎたが奴はあらわれていない
友加里さんは今は出かけている。なんでも友達から心配されているので会いに行くらしい。彼女がいないのを幸いに俺はシュリーと今の出来事を整理しようと思った。
いると話の内容からショックを受けるかもしれないし。
「なあシュリーあれってやっぱり妖異なのか?」
「そうねえ、昔からの分類で言えば枕返しで間違いないわね」とシュリー
俺もあの事件の後、枕返しについて詳しく調べてみた、だいたいはいたずらで枕を動かす程度なのだが、いくつかの地方の伝承では人を殺している伝承があった。
だがそれも元をたどれば人側に非があっての復讐というパターンばかりだ。
それとはちょっと違う感じがする。友加里さんが誰かに恨まれているなら可能性もあるが、二週間一緒に過ごしてみたが、あんまり人の恨みを買うタイプでもない。枕返しが出だした時期から考えてもご両親や先祖からの因縁が原因ということも考えにくい
「あれは、あの見た目、雰囲気はおそらく生ね」とシュリー
「なま?」
「そう、生霊のことよ。彼女誰からか分からないけど盛大に妬まれてるわね。それとも恋慕か、どっちにしても物理的に影響があるぐらいだからなかなかだわ」
「じゃあなにか?生霊が枕返しを演じてるとでも?しかしそれならこの世界の話であって妖異は関係ないのでは?」確か妖異は別世界からの魂と聞いている。
「わかってないわね、魂や霊、妖怪、妖異なんてものは事象によって呼び方が違うだけで根本は一緒なの、すべての元凶は人間だから。魂はこの世界のものでも生霊になるということは並行世界からの干渉を受けているの」
おいおいかなり重要な情報だぞ。というかこの神様人間を元凶だといったぞ、信用して大丈夫なんだろうか。
「つまり、仮にこの世界の魂であったとしても、そういったものになるのは別世界からの影響を受けていると」
「そうね」とこともなさげにシュリーは答える。
そうなると見た目に異質なものだけでなく現世の人間も敵対することがあるのか。俺は複雑な顔をしていたのだろう
「なんて顔してんの」とシュリー突っ込まれた。
「それよか準備して、たぶん今日が山場よ」
今日が山場?そうか、そのためにシュリーは一人で友加里さんに出かけさせたんだったな。
2週間の間に一度も出ていないということは彼女の周囲は現状を詳しく知らないということだ
あえて彼女の現状を知らせることで生霊を誘い込むつもりなんだろう。
俺に迷っている時間はなさそうだった。
友加里さんはその日は遅くに帰ってきた。珍しくお酒を飲んだようで帰ってくるとすぐに寝てしまった。俺たちは取り決めた通り彼女の周りに座って待つことにした。しばらく何もない時間が過ぎたが午前2時を過ぎたころ。俺はシュリーに手招きされたので横に座る。
「オン アニチ マリシエイ ソワカ」
とシュリーが印とともに静かに真言を唱えた。
隠形印・・摩利支天か。そろそろ来るのだろうか。
重苦しい嫌な空気が部屋をつつんだかと思うと黒い物体が目の前を通り過ぎていった。
ミシミシっといった音とともにベットのふちが凹んでいる。見えにくいがそこには人影が。
「いい具合に釣れてくれたね」シュリーが隠形印を解く。
生霊がこっちを睨む。黒くて顔は見えないが眼だけやたらギラギラした憎しみのこもった目だ。やべえ目があった。
「
生霊が俺と目を合わせてる隙にシュリーは九字を唱える。
瞬間部屋に若干の閉塞感。あ、これ結界だな。
「グペツツ」
なんだかよくわからない声とともにベット上の生がつぶされている。
うまいこと結界に閉じ込めることができたようだ。
しかしシュリーさんめちゃくちゃ有能じゃないですか、俺出番無し。ほんとにいらないのじゃ。
そんな俺の内心を見透かしてか。
「さて、ここからは出番よ頑張って、私じゃ生霊を捕まえられてもそれに影響を及ぼすことはできないからね」といってポンと肩がたたかれた。
友加里さんはあえて寝かせたままだ。
じゃあ微力ながら頑張りますか。とはいえ正直何をどうしたらいいのか分からない。シュリーには時が来ればわかるからと、言われているのだが、今がその時じゃないのか?
ともかくも、見様見真似か、まずは尋問からかな。西洋の悪魔祓いでは名前を言い当てることで力が弱まるという。ならばまずは生霊の正体からか。まずは
「さて、この地に顕現しているものよ、姿をあらわせ、汝が名を主のもとに我に示せ」
「だ・・・れが。きさ。。まなんぞに」
低くかすれた声で生霊は答える。
答えるはずはないか。しばらく問答を続けるが、進展はない。
カードを切るか。答えは限られている。2択だが。
「さてと、見た目男に見えますがね、そろそろ正体を見せてもらえませんかね裕美さん」
男はひきつった顔をこちらに向けるが、しばらくするとその容姿が、変わり
女性の姿へと変貌した。
「あーあばれちゃった、なんでわかったのよ」
二択は正解したようだ。京都に一緒に行った2名のうちのどちらかだと睨んでいたが正解だったようだ。
「まあ直観?佐藤さんとあなたの二択だったんでね、裕美さんなんでまたこんなことを?」
「友加里が悪いのよせっかくあたしに声をかけてきた佐藤くんにちょっかいをだしたから」
怒りの感情からか周囲の空気が重くなる。
「この間の京都の件ですか?あれはあなたが友加里さんを誘ったのでは?」
俺は霊を刺激しないように努めて穏やかに話をした。
「違うわ佐藤君に友加里も誘ってってお願いされたから連れていったのよ。」
妬みか、それにしたところで生霊飛ばすほどの妬みになるのか?
しかし何か見ていると違和感がある。この落ち着きよう。まるで普通の人間だ。
「京都に行ったときに何か拾ったりしなかったか聞いてみて」そうシュリーが言ってきた。
そのまま裕美に聞こえるだろうにと思ったのだが全く反応がない。どうやらシュリーが影響を及ぼせないのは本当らしい。
「裕美さん京都にいったときに何か買ったりもらったりしませんでした?」
「貰い物?あったわよ。これ」
そういって彼女は丸い水晶の玉のようなキーホルダーをぶら下げた。
「きれいでしょう。普通人から物もらったりしないんだけどね。
綺麗な女の人だったわ。道で、急に声をかけられて。あなたにはこれが必要になる時がくるって言って・・」
うっとりと球を見つめる裕美。
なんだかやばい気がする。
シュリーから、目くばせが来る。球をとれってことか。
俺は彼女からパッと球をひったくる。
「いやあ返して!!!!」
瞬間それまで大人しくしていた裕美の霊体が急に暴れだした、みるみる間に大きくなって顔は般若のようになっている
球は俺からシュリーにわたっていた。ちょ シュリーさん?なんか無茶苦茶怒ってるぽいんですか。
「かえせー」
野太いうなるような叫びをあげてシュリーに迫ってくる。
巨大化した腕でシュリーをつかもうとする。
もうこうなったらやけだ、俺は鬼神と化した裕美に飛びつこうとした。
が振り向きざまのこぶしが直撃する。
まるで裏拳のような形で。そのまま壁にたたきつけられると俺は意識を失った
急激な変化を遂げることや、切迫した状況をさす
次の更新予定
思うがままに生きるのはむずかしい 雪と凪 @yukikaze13
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。思うがままに生きるのはむずかしいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます