第7話危機一発(ききいっぱつ)
俺とシュリーは早々と隣の部屋に入ると引きこもり、気配を消した。
人間の犯罪者のなら、なるべく対象者には日常と同じ行動と環境にしてもらわないと警戒されるからだ。もっともこの世ならざる者に意味があるか分からんが。
照明もつけず頭から毛布をかぶってカメラ映像を見る。暗視映像なのでわかりにくい。
俺がなるべく静かにと注意していたせいだろうかシュリーは静かだった。
あまりに静かなのでちょっと覗き込む。ガッツリ寝てやがる。起こしてうるさいよりましだからとりあえずほっとくことにした。
そろそろ時間は丑三つ時。世の妖異な方々が活動する時間帯だ。
そろそろ出ますかね
モニターを見ると香月さんは時々うなされながら寝返りをうっている。寝苦しいのだろうか。何もおきない画面を見続けるのはかなりつらい。
昔バイトで探偵をやっていた時のことを思い出す。探偵と言っても実際の仕事は「真実は一つ」とかいうタイプの仕事なんて在りはしない。ほとんど雑用、何でも屋、後は浮気調査だった。
郊外のラブホに入った奴らが延々と出てくるまで外で待つとかやってたなあと昔をを思い出していた。
そんな矢先幽霊探知機に動きが。電磁波が増大している。画面をよく見ると男っぽい何か影のようなものが香月さんに覆いかぶさっている。
乱暴しようとしているわけでもなさそうだ。男はゆっくりと香月さんの枕を引き抜くと足元に枕を移動させようとしている。
「だめよ!大我あいつを止めて」後ろからいつ起きたのかシュリーが叫ぶ。
言うが早いか俺は友加里さんの部屋に突入する。
男は枕を抱えたまま、こちらを唖然と見ている
「おい!その枕をそのまま置け」シュリーが威圧する。
男は複雑な笑顔を浮かべるとそのまま薄くなって消えていった
「逃げたか」
しかし奴がいたベットの上は確かに人の重みでへこんでいた。実体がないわけでなさそうだが。
友加里さんを慌てて確認する。何事もなかったかのように寝息を立てて寝ている
「大丈夫今日のところは大事ないわよ未遂で終わったから」
「とりあえず大丈夫ということか」
俺は枕を戻しながらシュリーと言葉を交わした。
しかしあれは一体、消えたということはこの世のものでないということか
彼女は起こすのではなく自然に目が覚めるのを待ったほうがいいとシュリーが言うので俺たちはベットの近くに腰を下ろして彼女が起きるのをまった。
「大我は枕返しと言う妖怪がどんな奴か知ってる?」シュリーが聞いてくる
「あんまり詳しくは。えっと夜中に人の寝床にきて枕か人かどっちかの位置を入れ替える妖怪だと思ったけど」
俺の記憶だといたずら程度であんまり害のある妖怪ではなかったはずだ
「枕返し自体の認識はそれであっているわ。ただ、人間にとって、よくない者もいるの。人わね寝てるとき体から魂が離れることがあるんだけど、その時に体を動かすと魂が帰れなくなるの 。枕の位置が足元に移ってても同じことになるわ。今回のは恐らくそれを狙っている、あれからはっきりと悪意が感じ取れたわ」
「でもそれなら何故友加里さんは生きてるんだ?聞いてる話だと何度も同じ目にあってるようだけど」俺は疑問をシュリーに投げた。
「それは私にもわからないわ。相手が友加里さんをいたぶってるのか、友加里さんの意思が強いのかってどちらかかなとは思うけど」
が、友加里さんになんとなく精気が感じられないことには説明がついた。少しづつだが魂を削られているのだろう。
窓の外から雀の鳴き声が聞こえ始めるころ、彼女は目を覚ました。
「おはようございます。猫さん」いい笑顔だ。
俺は挨拶を返す。
「ちょっと台所借りますね」
そういうと俺は簡単な朝食を作った。作ったといってもパンとハムエッグを焼いた程度だが。
作った食事とコーヒーを彼女の前に出す
「まあともかく、食べてください。朝ごはん食べないと元気でませんよ」
「あれ?私のは?」と言ってシュリーが食卓に座っている。
なぜシュリーも同じように食卓に座って朝食が出てくるのをまってるんだ。疑問に思いながらも言われるがまま俺は卵を焼いた。
彼女が食べ終わることろ見計らって昨晩の出来事を伝えた。朝イチ笑顔見せてくれたところからもわかるが、今回彼女には実害はなかった。が実感がないとは言え得体のしれない何かが自分を襲ってきてたことをうまく受け止められないようだった。
「録画した記録もありがますが見ますか?」
コクリと小さくうなずく
再生を開始するそこには暗視カメラにありがちなわかりにくい緑色の画面が。
俺がモニター越しに見ていた男の映像は残っておらず枕が中に浮くという海外のポルターガイストにありがちなビデオみたいな映像だけが残っていた。
結構こういう構図目にする機会も多いかとは思うが実際に自分の目の前で起きたのはさすがに衝撃映像だったのだろう。友加里さんは見た後もしばらくは黙ったままだった。
「これって何が起きてるんでしょうか」
彼女から呟くように質問が来る。
「ごめんね、今は正直わからないかな、はっきりしてるのはあなたに対して悪意がある何かがいるってことだけ、ただこのままだとあなた死ぬわ」シュリーが言い放つ
「おいおい、ちょっとそんな言い方ないだろう」
「何言ってるのぼかしたって楽にならないんだからきっちり伝えるべきよ」
「しかし、対策がない状態じゃ」
「誰が対策ないって言ったのよ。あるにきまってるじゃない」
対策あるのか。聞いてないけど。
「その対策ってなんですか?」と友加里さん
「あなたが大我のところに寝泊まりすることよ」
はっ?何言ってんだこいつ
「あなたを護衛しやすいってことね。ここでは無理だけど、大我の家なら守りの結界が張れるからね」
ええええ?シュリー結界なんか張れるんだ。聞いてないぞ、なんだ役にたつじゃん。
「大我さんというのは猫さんのことですか?」
そういえば本名また名乗ってなかったな
「そういえば、名前言ってなかったですね。俺は神代大我といいます」俺は遅れた自己紹介をした
友加里さんはしばらく俯いて考え込んでいる。
「わかりました。大我さんご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」
そういう彼女の眼にはさっきまでの動揺は見えない。どうやらシュリーの言っていた意思が強いということが当てはまるようだ。
正しくは危機一髪 昔映画のキャッチコピーで一発を使用したところあやまってそちらが広がった
髪の毛一本ほどの違いで危機困難に老いる可能性があるさま
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます