第6話輾転反側(てんてんはんそく)
彼女の自宅は大阪の北部の市にあって大きな一軒家だった。周りの人たちに脅かされてマンションの一室で一人怯えていると想像していたのだが実家住まいとは。実際に話をしても怯えているようにうかがえたのだが。親御さんは何もしてくれないのだろうか、色々と想像してしまう。
あちらこちらに監視カメラの付いている家の門を通ってインターフォンを押そうとしたときふと、本名を伝えていないことに気が付いた。なんと名乗ったらいいのか疑問がよぎった。さすがに本人が出なかった場合
まあ何とかなるだろう、そう思って軽く息をすっていざボタンを押そうとした時
「猫さーん」と上からの声が聞こえた。どうやらカメラで見られてたらしい。
動画も顔出ししてたので、彼女にはわかったようだ。
俺は声の主に向かって軽く手を挙げた。
「今開けますね」軽いモーター音がしたあとカチャンと鍵が外れる音がする。
うお、この家の鍵が遠隔で開けれるんか。こんな事で驚く俺って貧乏人
自身に突っ込みながらもドアを開けて家に入る。立派な玄関だ。スリッパの下の絨毯も値がはりそうだ。
トントントンと上の階から降りてくる女性がひとり。年の頃は多分20歳前後かなと、
女の子の見た目から年齢なんて正直わからんが。
かなりの美人さんだ。シュリーはハーフっぽい整った顔のタイプの美人だが彼女はかわいらしい感じのタイプだ。
だが、何かがおかしい。簡単にいうと元気がない?さっき上から声をかけてくれた感じから肉体的に弱ってるというわけではなさそうだし、別に目の下に隈ができてるわけでもない。
うん?待てよ寝不足が問題なはずなのに隈がないのはなんでだ?。
俺はつい考え込むときの癖であごに手をやっていた。
「あなたも気がついた?」小声でシュリーが言う。
こたえず小さくうなずくと、やるじゃないと肘で小突いてきた
「どうぞ、散らかってますけど」
彼女の招きで部屋に入り進められるがままに真ん中のクッションの上に腰かけた。見渡すと部屋は全体的に淡い色合いで統一されている、ポスターなども張ってなくちょっとしたぬいぐるみがあるだけの落ち着いた感じだった。
彼女はお茶とお菓子を持ってきて俺たちの対面に座る。
「さて、お初ですのでまず自己紹介からですかね。はじめまして、朧朧猫と言います。動画を見ていただいてるそうで、ありがとうございます。こっちが」
「アシスタントのシュリーとイイマス、どうぞよしなに」
シュリーは片言っぽい日本語であいさつをした。
「シュリーさん、外国の方ですか?霊能者の方が同伴されると聞いていましたが」
「まあねえ、日本だと霊能者っていうとご高齢の女性が多いですからね」
若い女性だと能力に不安を感じられたのかもしれない。
「まあシュリーはインド出身なんで、見た目若いかもしれませんがちゃんとしてますよ」
「ちゃんとしてますわ余計ね!」シュリーの突っ込みが入る。
見ると彼女は少し笑っている、よしよし、つかみはOK
「さて、じゃあ始めますか」
そういって俺は録画の準備をする。夜の状況を詳しく確認するために録画の許可をもらっていたのだ。インタビュー形式で進めていく
「では、詳しくお話を聞かせてください」
「じゃあ簡単に自己紹介から、私は
俺は香月さんに今の状況を詳しく聞いた。
問題が起きているのは4か月ほど前から週に数回寝れてるのに寝れてないというか寝ると疲労感がひどくなって日に日に体がだるくなってくるという問題。その時には必ず枕の位置が足元に移動しているらしい。病院へ行ったが診断の結果はストレスで眠れないだけだろうということで睡眠の質を上げる薬を処方されたそうだ。何種類か処方されたようだが、どれも効き目はなかったようだ。
「四か月ほど前からとのことですが、その時にどこか旅行にいったりとか、いつもと違う行動をしませんでしたか?」
俺の質問に香月さんはしばらく考え込んだ後思い出したようで
「そうですね、京都にいきました」と言った
「京都ですか。京都も広いですがどちらへ?」京都も広い。
「漫画図書館ですね、あとは清水寺とか」
京都かあ、もしかして、もらって帰ってきたかなあ。
京都は霊能者にとっては大変なところなのだ。俺よりはるかに霊感の強い友達と訪れた際には、大変だった。あっちもこっちも怖くて通れないって言われて色々迂回したっけ。
俺は香月さんに何か京都から拾ってきたり持って帰ってきたものがないか確認してみた。物に憑いているのを持ってきてしまったりしてないか確認するためだった。
しかし、答えはNO。何も持って帰ってきていないとのことだ。
フム、では物に憑いていたケースではないのか。
「京都には誰と?」
「えっと私含めて3人です、私と裕美と佐藤君ですね」
おお、三角関係の予感。君づけしているということは香月さんは男性はあまり親しくない間柄なんだろうと想像。
俺がインタビューをしている間、シュリーは部屋の中をウロウロしてる。
一体何をやっているんだろうと思ったが、俺に視線に気が付いたのか
「ここに妖異の気配は無いわ」とだけポツリと言った。
ここまで聞いて可能性は3つ
1京都の地場についている何かを持って帰ってきた
2京都からなにか憑いているものを持って帰ってきた
3生霊
それぞれを検証しよう。
1についてはまあ無いとは言い切れないが家に入った感じ気配は感じなかった。地縛を持ってきたのなら香月さんの家にいるはずなので可能性は低い
2についても本人は否定してるので可能性は低い
となると3の生霊が可能性が高いか。まあ恋愛がらみだと飛ばしやすいしなあ生霊。
同行者2名佐藤君と裕美さんどっちが飛ばしてるんかわからんが。
ここまでくれば実際に夜に張り込んで何が起きているのかを見るしかない。
そう判断した俺は彼女に今夜泊まらせてほしいと話をした。
「お二人ともですか?」
俺は帰るつもりでシュリーだけ残そうと思っていたのだが、
香月さんからは猫さんもいてほしいと、いてくれたほうが安心するのでと言われてしまった。
「そういえば見ず知らずのおっさんを宿泊させて大丈夫なんですか?ご両親とか怒りません?」
「それだったら大丈夫ですよ、両親は海外で後ひと月は帰ってきませんから」
なるほど別に両親となにかうまくいっていないわけじゃなくただ単に忙しいだけのようだ。
「わかりました そういうことなら遠慮なく」
そう言って俺はベットの周りに記録用にカメラを設置していった
そして最後に俺が作った秘蔵っ子をカバンからだず
「これも置かせてもらいますね」
「なんですかそれ?」
「ゆうれいたんちきー-」
俺は後ろで テ~ててーてててててー
と音がなりそうなだみ声て機材をだしてみた。微妙な沈黙と空気感
シュリーにいたってはジト目でこちらを睨んでる。 頼むからなんかつっこんでくれ
「ま、まあともかく、これは脳波を測定する計測器を改良したものなんですけどね、α波って、知ってます?人間の脳波なんですが、オカルト的な話で出る脳波なんですよ、でなにがしかの心霊現状が発生する場合少なからず人間の脳はα波を出していると言われています。だからα波に近い電磁波が発生していれば感知できるかなと、調整したのがこれなんです」俺は早口でまくし立てた。
「大体わかりました、さっきのは?もしかして猫型ロボットのまね?」と香月さん
「いやいやいやまあいいいじゃないですか」
まさかぶり返さるとは。
「音は猫ロボじゃなくて「なり」って侍だったよね」
ボソッとシュリーがいう。きっついなあ。もう頭をかいてごまかすしかない
しかしなんでそんなことまで知ってるんだシュリー
思い悩んで眠れないようす
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