異世界で手に入れた生産スキルは最強だったようです。 ~創造&器用のWチートで無双する~/遠野九重
【
俺はアイリスを連れ、オーネンの北に広がる山々を探索していた。
目的は【創造】の素材集めだ。
野山を歩き回ってはナオセ草などを【アイテムボックス】に収納していく。
そろそろ日も傾いてきたので街に戻ろうか、という話をしていた矢先――
「グォォォォォォォォォォォッ!」
前方から、激しい
俺とアイリスはほとんど反射的に足を止めて身構える。
「……魔物がいるみたいだな」
「戦うの?」
「とりあえず遠くから様子を見よう。危険な魔物なら、冒険者ギルドに報告だな」
「分かったわ。じゃあ、ここからは忍び足で行きましょう」
俺たちは互いに
しばらく進むと、木立の向こうに魔物の姿が見えた。
アーマード・ベアだ。
巨大な熊型の魔物で、首から下が鎧のような外殻に覆われている。
両手には黄色い蜂の巣を抱えていた。
いったい何をしているのだろう。
俺が首を傾げていると、アイリスが小声でそっと教えてくれる。
「アーマード・ベアはハチミツが好物なの。咆哮で蜂を追い払ったあと、巣に残ったハチミツを食べるらしいわ」
「じゃあ、今から食事の時間ってことか」
俺がそう
ギロリ、とアーマード・ベアがこちらを睨みつけた。
「……まずいな。気付かれた」
「どうするの?」
「戦おう。アーマード・ベアくらいなら簡単に狩れるし、放っておいたら他の冒険者に被害が出る可能性もあるからな」
「分かったわ。……一応言っておくけど、アーマード・ベアは危険度A、本来ならベテランの冒険者を何人も集めて討伐する相手よ」
「大丈夫だ、問題ない」
俺は短くそう答えると【アイテムボックス】から魔剣グラムを取り出した。
決着は一瞬だった。
俺はフェンリルコートの付与効果である《神速の加護EX》を発動させると、一瞬のうちにアーマード・ベアに接近、魔剣グラムでその首を
死体は【自動回収】によって【アイテムボックス】にすぐさま収納される。
その場に残されたのは、アーマード・ベアの咆哮によってもぬけの殻となった蜂の巣だけだ。
「相変わらず、すごい強さね」
アイリスが感嘆のため息を吐く。
「あたしの出番、全然なかったわ」
「黒竜みたいな強敵ならともかく、アーマード・ベアが相手ならこんなものさ」
「アーマード・ベアを雑魚扱いできる冒険者なんて、たぶん、コウくらいでしょうね」
「それはどうだろうな」
俺はアイリスの言葉に答えつつ、ハチの巣を【アイテムボックス】に収納する。
【解体】に掛けると『上質なハチミツ』が手に入った。
これを素材にして新しいアイテムが【創造】できれば嬉しいところだが、残念ながらレシピは浮かんでこなかった。
ちょっと残念だ。
その帰り道、ハチミツのことをアイリスに話すと「少し分けてほしい」と頼まれた。
もちろん断る理由はない。
俺が持っていても使い道はないので、余っていた瓶に入れてすべて譲ることにした。
「こんなに貰っていいの?」
「ああ。好きなだけ使ってくれ」
「ありがとう。……ふふっ。明日、楽しみにしててちょうだい」
アイリスは俺からハチミツを受け取ると、クスッといたずらっぽい笑みを浮かべた。
翌日も俺たちは北の山々で素材集めを続けていたが、昼食を済ませたところで、アイリスがポーチから小包を取り出した。
「昨日のハチミツを使って焼いてみたの」
小包の中には、こんがりとキツネ色に焼けたマフィンが入っていた。
全部で八個、どれもおいしそうだ。
アイリスの手作りマフィン上質な
んん?
【鑑定】の説明文に妙なルビが入っているな。
気のせいだろうか。
まあいい。
せっかく作ってきてくれたんだから、早速いただくとしよう。
マフィンはずっしりとした重みがあり、かぶりついてみると、しっとりもっちりした食感が歯に伝わってくる。
同時に、ハチミツの甘味が舌に広がる。
これはうまい。
もぐ、もぐ、もぐと口を動かしているうちにマフィンを食べ終えていた。
「二個目、もらっていいか?」
「ええ、もちろん」
アイリスは俺の言葉に頷くと、次のマフィンを手渡してくれる。
「もしかして、気に入ってくれた?」
「ああ。これならいくらでも腹に入りそうだ」
「ふふっ、よかった」
アイリスは嬉しそうに微笑んだ。
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