完全回避ヒーラーの軌跡/ぷにちゃん
【夏の花祭り】
「ヒロキ、街が見えたよ! なんだか
「お、祭りをやってるぽいな」
歩き続けてくたくたになった俺とルーシャは、夕方すぎくらいに目的地の街に到着した。
ランタンの明りで照らされて、太鼓などの楽器の音と、楽しそうな話し声が聞こえてくる。さらに、近づくにつれて美味しそうな匂いがしてきた。
「……腹減ったなぁ」
「お祭りだから美味しいものいっぱい食べよう!」
「おう!」
ラスト一室だった宿を取って、ルーシャと一緒に街中へ繰り出した。
大人たちは酒に酔い、子どもたちはお喋りしながら楽しそうに遊んでいる。話している内容を聞くと、今日は『夏の花祭り』だという。
「みんな花を身につけてるんだね」
「花冠だったり、胸ポケットに一輪さしたりしてるのか」
華やかで、見ていて楽しい。花を売っている屋台がたくさんあって、観光客が思い思いに購入している。
「私たちも買おうよ!」
「そうだな。いろんな種類があって、迷うなぁ……」
色とりどりなのはもちろんだが、凝ったものだと生花で装飾をした帽子や服も売っている。どれがいいだろうと悩んでいると、ルーシャが「そうだ」と手を叩く。
「お互いにプレゼントしようよ! 一〇分後またここに集合、どうかな?」
「オッケー!」
ということで、ルーシャの提案で互いにプレゼントを贈ることになった。
ちょっと歩くと、ちょうど広場に出た。ダンススペースになっていて、男女ともども楽しそうに踊っている。
周囲にある花の露店も、一段と華やかだ。
「お~、ここは女性もののドレスが多いんだな」
スカートやワンピースは、可愛らしいものから花をこれでもかと使ったものまで、種類がたくさんある。
「花冠がいいかなと思ったけど、服もいいなぁ……」
俺たちは冒険者なので、基本的に普段から同じ装備を着ている。俺はあんまり気にしないけど、ルーシャは女の子だからお洒落もしたいかもしれない。
……というか、俺が贈ってあげたいと思う。
「よし、ワンピースにしよう!」
俺は近くの露店で、白地のワンピースにピンク色の花で装飾されたものを購入した。
「わあぁっ、可愛い!」
花のワンピースを着たルーシャは、くるりと回ってみせた。首元のストラップ部分は花で作られていて、スカートの下の方には小花が散っている。腰には緑色のリボンが巻かれていて、ヒラヒラしている。
「ありがとう、ヒロキ!」
笑顔でお礼を言ってくるルーシャは、いつもの倍は可愛く見えるきがする。無意識の内に、顔が熱くなってる気がする。
「お、おう」
……ぎこちない返事になってしまった。
「私からは、これ!」
「!」
ルーシャは後ろ手に隠していた花のついたリボンを、俺の手首に結んでくれた。白くて大きな花は、とても存在感がある。
「おぉ、ありがとう!」
「へへへっ、贈りあうって恥ずかしいかもって思ったけど、なんかいいね」
「……そうだな」
ルーシャが照れ笑いをしたので、俺も同じように照れてしまった。
すると、ちょうど音楽が切り替わった。ダンスの曲が変わったみたいだ。
「ね、せっかくだし私たちも踊ろうよ!」
「え!? 踊れないぞ!?」
俺が慌てて首を振ると、ルーシャが「大丈夫!」と俺の手を掴んだ。
「雰囲気だよ! ほらほら~」
「無茶ぶり!?」
結局広場のダンススペースに連れていかれて、結局上手く踊れはしなかったけど……ルーシャと一緒に楽しい時間を過ごした。
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