第6話 見島危うし

 総司令のミサキとイスカンダルの人の容姿をしている長門は、意気投合して飲んだくれていた。口当たりの良い島根ワインが拍車をかけ、二人の勢いは止まりそうにない。


「ミサキ総司令。その……胸元が素敵ですわ。ボリューム満点で、しかもロケットのように突き出ているお姿は神々しいほど」

「お褒めいただき光栄ですわ。でも、長門さんのそのスリムボディは、男性だけでなく、女性からも羨望の的でしょう。私は結構、贅肉が付いているので、羨ましくて仕方がありません」

「いえ、ミサキ様のロケットおっぱいこそ、全女性が憧れる理想の姿ですわ」

 

 歯の浮くような形容でお互いを褒め合う二人を、ララは苦々しい表情で見つめていた。そして飲んだくれている美女二人から視線を逸らし、メインパネルを見つめる。


「敵対勢力の戦力情報を表示せよ。配置状況、および、具体的なユニットとその戦力だ」

『了解』

 

 長門のコアユニットが文章で返事をした。本来はインターフェースの担当であるが、該当部分は今、飲んだくれている。


『現在、本艦の護衛ユニット、戦闘用アンドロイドのラグナTRXが交戦している敵ユニットの詳細を表示します』


 メインパネルに表示されたのは、おびただしい数の巨大なカタツムリ、いや、螺旋状の貝殻に角のような棘が何本も生えている、サザエのような巻貝だった。一体の大きさは2m前後であり大きい。見島に配置されている航空自衛隊のレーダー基地は、島で最も高いイクラゲ山(標高183m)の山頂にあるが、そこは全てこの巨大な巻貝に占拠されていた。

 

「自衛隊はどうした?」

『見島東部の施設を放棄し、南方面へと後退。人口の多い本村を防衛すべく、配置についています。その前面にラグナTRXが進出していますが、数が少なく苦戦しています。現地では当該生物を〝オバケサザエ〟と呼称。背の貝殻部分より定期的に放電を繰り返し、電子機器を破壊しています。人間に対しても殺傷能力があると推測されますが、移動速度が極めて遅い為、現在、人的被害は発生していません。また、ラグナTRXが保有するビームライフルは護衛用のショックガンです。貝殻部分への射撃は効果がなく、上手く頭部に命中させた場合にのみ対象を麻痺させることが可能。自衛隊の保有する小火器、即ち89式小銃、20式小銃、9ミリ拳銃では貝殻部分、軟体部分とも効果が無いとの事』

「なるほど。未知の生物兵器が相手なのか。我が防衛軍が適任だな」

『肯定。ただし、バックアップとして〝空母かが〟が瀬戸内海より日本海へと進出中。それともう一隻、護衛艦しらぬいが玄界灘より見島へ向かっております。また、宮野駐屯地より普通科一個中隊がVTOL輸送機オスプレイ5機に搭乗、まもなく発進します』

「なるべく重火器を使用したくないだろうな」

『肯定。あの〝オバケサザエ〟に対しては、格闘戦、もしくは低出力のフォトンレーザーで対処すべきです』

「秘匿兵器の情報が漏れるが?」

『重火器の使用により島の自然を破壊しない為にも、人型機動兵器の使用を推奨します』

「わかった。しかし、宇宙海賊が何故、あのような化け物サザエを使って見島を襲ったのか」

『理由は不明。宇宙海賊一味も、その姿を確認できておりません』

「現地で調査するしかないのだな」

『はい』


 ララと長門のコアユニットが真剣に相談している。しかし、飲んだくれているミサキと長門(インターフェース)は、三本目のスパークリングワインの栓を開けていた。

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