第7話 酔っ払いの与太話ですが何か

「ところでミサキ様。お好みの殿方って、どんなタイプでしょうか?」

「そうですわね。あの、青い顔の総統閣下なんかは大好きですわ。目的のためには手段を選ばぬ冷酷無比なところなんかは、もう完全に痺れちゃいます」

「そうですか。そっち系の方がお好きなのですね。そう言えば先日、そのガミラスの人とよく似た方から告白されたと?」

「ああ、あれね。あなた、つまりこの戦艦長門を復活させた張本人なんですけど、ロンズ・サガ星人でしたっけ?」

「ゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人です。名前すら憶えていないので?」

「いいのよ。全く眼中にありませんから」

「まあ、妙な作戦で日本を支配下に置こうとしたその罪は大きいです。お気の毒ですが、自業自得でしょう」

「ですわね。ところで長門さん。あなたのお好みは?」

「そうですね。見かけにこだわるつもりはありませんが、強いて言えば、鈴木亮平さまのような、少し逞しいイメージの方がよろしいかと」

「なるほど。では内面的にはどうかしら?」

「優しくて心が広くて、でも勇気があっていざという時に頼れる芯の強い方が……」

「それは古代守?」

「はい」

「それで、イスカンダルのあの人の容姿なんですね」

「そうかもしれません。しかし、私はこうして実体化しましたが、作者様は私のお相手を手配して下さる気配がないのです。どうすればよろしいのでしょうか?」

「そうね。とりあえず、アルバイトの正蔵君を狙ってみるのはどうかしら」

「その案に、乗っかってもよろしいのでしょうか?」

「問題ないわ。彼は一見冴えない風体の学生アルバイトですが、中身は相当なものなのですよ」

「相当?」

「ええ、相当。彼の魂は長らく、絶対防衛兵器アルマ・ガルムのマスターとして存在していたのです。それで現在も、椿様はベタ惚れなのです」

「ほほう。ラメルの英雄王エクサス・ザリオンが、絶対防衛兵器のマスターであったと聞いておりますが」

「よくご存知ですね、長門さん。正蔵君は、その英雄王の転生した姿なのです」

「なるほど。それはそれはそそるものがありますわ」

「でしょでしょ」

「まさか、ミサキさまも正蔵君を狙っているとか?」

「うふふ。詳しい事情は本編に譲りますが、既に一回、いただきました」

「羨ましい……私もご相伴に預かっても?」

「それは椿様次第ですね。大いに嫉妬されますから難しいと思いますが?」

「が?」

「帝国において、王侯貴族は一夫多妻が基本。かつての英雄王も複数の妃を娶っていたと言われています」

「つまり、一夫多妻の線でなら十分に可能だと?」

「その通りです。長門さん」

「私も希望を持てますわ。ミサキ様」


 戦艦長門の艦橋において、意気投合し杯を空け続ける美女二名であった。空になったスパークリングワインは既に5本を数えていたのだが、さらに次の一本が抜かれた。


 ララは二人の与太話は聞こえないふりをし、双眼鏡をのぞき込んで見島の状況を確認している。


「彩雲改二は長門前方へ進出。見島上空を旋回しつつ状況を報告せよ。超重戦車オイはハイペリオンに変形して待機」

「了解」

「了解しました」


 黒人の黒猫とアルバイトの正蔵から返信があった。

 長門の後部甲板上に鎮座していた多砲塔のオイ車は、その姿を人型機動兵器へと変形させた。右肩には口径155ミリの重力子砲を装備した、超重攻撃型ロボット兵器のハイペリオンだ。


「ハイペリオンへ変形完了しました」

「わかった。現地へはテレポートで送る。それまでは待機だ」

「了解しました」


 その時、戦艦長門は見島まであと数キロの地点まで到達していた。長門上空を旋回していた朱色のティルトローター機、彩雲改二は速度を上げ見島へと向かった。

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