第14話 地元のどんよりとした曇り空の下
東京で会うよりずっと以前、地元でヨウコは青い髪をしていた。退屈と不安が交互に雨を降らすような、そんな地元のどんよりとした曇り空の下。二人とも殺人的な何もない日々を暮らしていた。なぜか一時は一緒に暮らしたこともあって。でもお互いに彼氏、彼女がいたってわけ。そして四人でアメリカに行った。それも今となっては思い出の一ページ。
さて上田美穂と付き合うようになって、オレはますます成増に入り浸った。別段そこまで素敵な町ってわけじゃない。でも手ごろな立地と、少し行くと光ヶ丘公園があるのがよかった。「仕事?」と眠そうな目をこすりながら、彼女が聞いてくる。「休み。」とオレはウソをつく。「じゃあ、食器洗っておいて。」と言い置いて、彼女は朝からどこかに行く。「どこ行くんだよ。」とオレが聞くと、「仕事。」と答える。ああ、本当に彼女は働いていたんだ、とオレは思った。それまで彼女は働いているフリをしているんじゃないか、と思っていたのだ。
「あなたは?」と妻が歩きながら聞く。
「自由。」と私は眉間にしわをよせる。
「自由って?」とさらに妻は聞く。
「キー。」私は歩きながら、鳥の鳴き声を真似する。
「なんて?」妻は私を見ながら聞く。
「ほら。」鳥の羽ばたくポーズ。
「バカ。」妻は首を振る。
「鳥は自由だからさ。」と私は手話で伝える。
「鳥には鳥の仕事があるわ。」とキミは言う。
「たとえば?」と私は公園を歩きながら聞く。
「キー。」妻が羽ばたくふりをする。
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