第11話 「で?」歩はつぶやいた


「で?」歩はつぶやいた。

「ねつ造してないよ。」私は言う。

「なにが。」と彼女は聞き返す。

「だからさ。」と私は紙に書く。

「いつもしてることだしね。」と妻は言って、笑う。

「してないよ。」と私は手話で言った。

「ふふふ。」と妻は小さく笑う。


 もちろん風は吹いていた。だからと言って、その写真が意味するものはオレにはピンとこなかった。「なにこれ?」とオレはセピア色の写真を見て言う。飛行場と、アメリカ軍人?の家族。「よく分からない。」と妻は答える。それが何だか知ったのは、もっと後のことだ。妻がそれを大事にしている理由も含めて。


 今でも妻はよく写真を撮る。オレはその写真が好きだ。彼女のことを好きなのと「同じくらい。」って言うと、妻は変な顔をする。「でも実際、それくらい素晴らしいってことだよ。」ってオレは主張する。彼女がよく撮影するのは、雲、雨、そして人々の後姿。風情があるというか、情緒にあふれていて、それが彼女の感性。


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