第10話 雨の後、彼女と再会したのは真夏日


 雨の後、彼女と再会したのは真夏日。アイスクリームも溶けだす陽気。光ヶ丘公園は人に溢れていた。オレはベンチに座ってサックスの練習をしていた。大して鳴りもしないのだけど。サッと現れた彼女は、太陽の向こうから「こんにちは。」って言った。その意味を計るようにオレは、小さく会釈した。するとキミは、ゆっくりとうなずいた。


 上田美穂に関するかぎり、確かにオレはロクデモナイオトコだったかもしれない。それは否定できない。彼女のOL風の(実際には契約社員だ)恰好にクラっときたのも事実だ。ハーフのような可憐さもある。成増から歩いて行ける彼女の部屋は小奇麗だった。オレはやっと彼女の部屋が上がりこみ、一発かました。それがロクデナシになった理由の一つで、その始まりのだったかもしれない。


 電話してみると、意外なほどあっけなく「いいよ。」って彼女は言った。そして耳元で「好きかも。」って言った。腐るほど純情な時代は遠のいていて、でも夕暮れにはまだ早かった。だから「ビールでも飲もうか。」ってオレが言ったら「飲んじゃおっか。」って彼女も言ったのは意外だった。でも、オレはそれに続いて「そうだね。」って言った。西日が差してきたときには、すでにオレたちはいい感じに酔っぱらっていた。日暮れにはまだ早かった。


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