第2話 といえば少しはできたストーリーなのだろうけど
話しはそこで十年前に飛ぶ、十年後のオレはそれなりの売れっ子スターになっている。といえば少しはできたストーリーなのだろうけど、そうは問屋がおろさない。とにかく三十歳手前になって何を思ったか上京し、東京の冴えない町の冴えない部屋で、オレは相変わらず女のケツをなめている。うだつがあがらないとはオレのことだ。しかし二十歳のときにはわからなかったことが、三十歳ではわかっている。
それは電話番号を知っているのなら、電話してみろ。という、しょうもないことだ。草の根を食べるような男子が多くなってきた昨今、オレのような考えははやらないかもしれない。しかしはやらないからといって駄目だと決め付けるのは、よくない。こうして電話をしてみれば、女の一人や二人は部屋に連れこむことはできる。しかし東京の女と言っても大半は地方の女たちで、それなりの格好をしていてもどこか冴えない(人のこと言う資格がオレにあるのか)。と思うのは、オレが連れこんだ上田美穂のせいだろう。
彼女は池袋で働いているOLで、オレはサンシャインシティから歩いている彼女に道を聞いた。「水族館ってどこですか。」別にオレは水族館なんてどうでもよかったのだけど、物事には道理と動機と順序と順番がかわるがわるに必要なのだ。特に女に対しては。十分後にオレは彼女と西口のカフェ・ドゥ・モンドでコーヒーを飲んでいる。「そっか残念だったね、水族館が休みで。」カフェでフレンチドーナツを食べながらミホはそう言った。オレは無条件にうなずく、パブロフの犬のように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます