◆◆◆は微笑む

ずしんっと大きな音を立てて降ってきたのは、とてもでかい女神像だ。10メートルはあるだろう。肩がはだけたローブを纏い、綺麗な御手をあらわにしている。ただ、残念なのは、全身が茶色の土でできていて首から上が見えない。いや、見えないというより、見ることができない。顔がぼやけて、脳が認識するのを拒否している。




「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆」




 女神像は喋った...のか、そもそも音かどうかわからないナニカを発し、右手をこちらに差し伸べてた...否、叩きつけて来た。




「ちっ...」




 俺はとっさに、バックステップで回避をした。が、




「うおっ...と」




 地面に手が当たった衝撃で後に吹き飛ばされてしまい、転倒してしまった。なかなかやってくれるじゃないか。




ボンッ




 だが、ただで、やられた訳じゃない。俺が回避した際に、落としていたグレネードが爆裂し、女神像の右手首から下が欠損する。やったか。


 女神像は煙を上げてる欠損した右腕を持ち上げ、近くにいた、ケタケタと笑っている獣に押し付けた。




 グニュっという気持ち悪い音を立て、獣は内側から破裂した。女神像が右腕を挙げるとなくなっていた、手は獣の黒色の血を滴らせ生えていた。


 そして、手の感触を確かめるように開閉し、別の獣に手を伸ばした。




 俺は、それを見て、ガバっと立ち上がり、女神像目掛けて走った。奴のやることは直感で理解した。


 女神像は獣を持ち、こちらに投げつけて来た。投げられた獣はケタケタ笑いながら、ズシンっと俺がいた場所に落下し、砕け散った。なんて乱暴な女神様なんだ。




 俺は唯だまっすぐ、ただひたすら、女神像目掛けて弾丸のように走った。




「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆」




 女神像は手を虫を追い払うように横薙ぎに払った。


俺は判断が遅れ、刀の腹でガードするも、女神像の手で遠く弾き飛ばされてしまった。


 俺は土煙をあげて、さっきの所まで転がった。




「いってて...」




 俺の視界の端で、獣がこちらに向けて、飛び出してくるのが見えた。




「嘘だろ...!?」




 俺は転がることでやり過ごし立ち上がる。そして、空を喰った獣目掛けて刀を振り下ろした。


獣は容易く真っ二つに切れドロドロと溶けてキューブが露わになった。




俺はキューブを足で踏みコンソールを開く。中には一つ、使えそうなものがあった。


刀でそれを選び出現させる。


女神像はじっと待っている訳でもなく。再び、腕を振り下ろした。




ガシャっとキューブから俺が選んだモノが出現する。




俺が選んだのは土の柱だ。


柱は女神像の迫り来る手を支え、一体化した。




「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆」




女神像は叫び、地面と一体化した手を上下させるが、ビクともしない。


隙だらけの女神像を守らんと獣が俺に向けて殺到してきた。




 「使うか。Code『Concentration』」




 瞬間、俺の頭がクリアになった。『Code』、人の能力を超えた力。いわゆる超能力という奴だ。ただ、超えた力故にデメリットがある。精神力というか、使った後に虚脱感に襲われる。さらに、使いすぎると、頭痛や吐き気、もっといくと気絶したりする。




 この力を手に入れれるためには獣を狩り続けないといけない。何故なら、ほんとに極稀にしかキューブの中に入ってないからだ。師匠からは、Codeに頼らずに自分自身の力を磨けと言われたものだ。




 獣の動きがスローモーションに見えた。自分が次にどう動くべきか即座にわかった。




 獣の体当たりを交わし、別の獣を刀で切り殺し、返す刃で違う獣を突き刺し、体当たりしてきた獣に力任せで叩きつけた。




獣の攻撃は止んだが、別の脅威が近づいていた。女神像が切り離した土柱を持って、こちらに叩きつけてきた。




 が、土柱は俺に当たることなかった。俺が刀で切り落としたからだ。




 俺は切れた柱に飛び乗り、女神像の認識できない顔に向けて走った。




 女神像は攻める俺に向けて御手で攻撃を繰り返したが、すべて見切り、回避した。


Codeのお陰で迫りくる腕は全部スローモーションでいつ、どこに来るか容易く予測できた。




「%%%%%」




 女神像の顔を間近で見てしまった。モザイク越しのその顔は、表現できない、頭が拒絶している。砂嵐が書き廻り、思考が遮断される。




「せいっっ!!」




 半ば自暴自棄でモザイクだらけの首を切り裂き、刺さったまま、女神像の上から飛び降りた。


刀は女神像の体を縦に重力に乗せて、切り裂いた。




「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆」




女神像は音かどうかわからないナニカを発し、溶・け・た・。文字通り土に還った。麗しかったモノだった土から、立方体がひょっこりと出て来た




 それと、同時に使っていたCodeが切れた。




「ぐあぁぁぁぁっっ!!」




 俺は頭を抑えた。頭がかち割れそうだ。一瞬眩暈がしてくらっとした。




  俺は頭を抑えながらキューブの一面についているボタンを押し、コンソールを開き、頭痛薬か何か、入っていないか、淡い期待を込めてキューブの中をみる。




 残念なことに、中には大したものが入ってなくガラクタばかりだ。ネックレスなんてどこで使うんだ。


 Codeまで使って倒したのにくたびれ損だ。食料くらい入れてくれてもいいだろ。なんて冷たい女神様だこと。




 俺は、キューブをバックパックに入れて、ふらふらと歩みを進める。キューブは物資と交換できるスポットがある。路銀の足しになるだろう。Codeの反動と女神像の顔のせいで頭がギンギンと鳴っているが、さっさとここから立ち去りたい。次に変なのが来るのは御免だ。




 周りの獣は笑うのを辞めて大人しくなっている。


 荒野は喧噪を忘れ静かになった。

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