第8話 離陸
前のチームがプラットホームから降りてきた。いよいよ僕たちのフライトだ。細心の注意を払って、最後の数 メートルを運んだ。フライトに向け、機体を再度90°近く回転させ、最終チェックへと進んだ。各自が自分の担当部位を再度確認する。僕は主翼班長として、主翼全体を確認した。目に見える変形はないか。付着物はないか、輸送用の持ち手は全て閉じたか……時間の限り、点検した。
僕たちが機体から離れ、入れ違いにパイロットが乗り込んだ。パイロットと機体保持者の計4 名以外は、全員後方に退避した。そうなって初めて、僕は周囲を見る余裕ができた。プラットホームの周りは一面の湖だ。どこまでも広がっていると思われるほどに広い。夏の日ざかりの日が湖面に反射し、ぎらぎらと照りつけてくる。
「ゲート、オープン!」
ついに離陸の許可が出された。
「風速2.5、風向1 時!」
設計者が風を読み上げた。
「行きまーす、2、1、Go!」
プロペラが回り、機体が加速していった。約10 メートル進んで、機体はふっと姿を消した。
失速したか。そんな不安が脳裏をよぎった瞬間、プラットホームの向こうに、白い翼が姿を現した。前後の引込み脚がリズミカルに機内へ格納され、脚班長が「完璧ですね!」と叫んだ。
この1 年、いや2 年、それ以上……僕たちが費やしてきたものを載せて、機体が琵琶湖の空を舞った。
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