第9話 事件の真相
「3人……?」
「あの車は片倉の運転でしょ? それで赤川橋で衝突事故を起こして……」
「このボールペンで書かれた紙、片倉さんの携帯電話に挟まってたんですよ」
「レシート……?」
「何を買ったのかは消えてて読めなかった。けどそれ以外の薄くなってるとこはスキャナーでモノクロ設定かつ色の濃さを最大にしてなんとか宴会場から近くの東薬局のものってことが分かったの」
「アルコールが強いのに眠ってしまったのは薬局で購入した睡眠薬のせいです」
(千賀さん、これは菊が調べてきたんですけど……その)
「ごほんっ!! えぇとだな。先程我々が調べた。薬局の店長にも確認済みだぞ!」
千賀は雫と菊の仕事を信じて話を納得させた。
「でも……なんで……」
「あなたを殺すためですよ」
「「!?」」
「パワハラなんて動機には十分だ」
「…………」
「そして片倉さんだけがそう思っていた……」
「……どういうこと!?」
「言ったじゃないですか3人って。片倉さんの同僚の岡田さんですよ。このレシートの裏にボールペンで止めろと書いてある」
千賀はその場で雫に言われた通りLINEの画像を美川に見せた。そこにはうっすらではあるが宴会の席の図面が写っていた。千賀が推論を話した。
「きっと睡眠薬をあんたの飲み物に入れるための準備だな。そしてその止めろという紙から携帯の音や口でも話せないほど静かにしなくちゃいけない場面だった。美川さんはお酒が強い、睡眠薬を入れたとはいえ起きてしまうかもしれないと思ったんだろう」
雫は自分のスマホで撮った写真を見せつける。
「そして「止めろ」というのは岡田さんだけ降りるため。片倉さんはおそらくそこで岡田さんが橋の装飾石を使って息の根を止めて美川さんを川に落とすのだろうとでも思ってたんでしょうね……。だがその石で殴られたのはまさかの自分の、片倉さん」
「そんな……。じゃあ片倉は岡田に殺されたってこと?」
「正確には場所からの推測ですが、その石で殴った後片倉さんはまだ意識があり、その場から逃走した。赤川西橋までね。そこまで追いかけた岡田がそこで……。本来は意識を失わせた片倉に罪を着させたかったのでしょうね。意識を無くした片倉さんを運転席に、美川さんを後部座席に乗せて、装飾石をアクセルに乗せて……」
少し黙り込んだ後に美川は雫に大声である指摘をした。
「じゃああの衝突事故は!?」
「はい、予定が狂って、あなたを殺そうとアクセルにその装飾石を乗せて強引に発進させたのだと考えています……」
「じゃあ、私は……」
「はい……。生きてたのは偶然。岡田もあなたの死を確認するほど余裕がなかったんでしょう」
美川は少しして「そう」と小さく呟いてがっくりと椅子に座りこんだ。
その後の展開はすさまじく早かった。岡田の身柄確保、さらには片倉の死体の捜索。死体にはやはり石のようなもので頭を殴られた形跡が見つかった。交通事故と処理されていた事件は次の日殺人事件として大きく取り上げられていた。
◇
「片倉さん、あんたが死んでもなお自殺のようなことを続けてたのは岡田の逮捕のためじゃないんだろう?」
雫はそう言って赤川西橋の真下の土手から川に花束を投げ入れた。
「安心しろ、あんたの母親は大丈夫さ。ボクは千賀警部って人に聞いたんだけどね、お疲れさんだとさ……」
「ア゛、ァ゛……、ガ……」
「あぁ、安心してゆっくり休めよ……」
夕陽が沈み、暖かく静かな風が水面を揺らす。カエルの声がいつも以上に穏やかに聞えた。
(2章、終わり)
人形探偵 ミステリー兎 @myenjoy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。人形探偵の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます