第3話 事件の鍵

 翌朝――


 雫はすぐに咲良世奈という人物について調べた。検索で咲良世奈と打つとすぐ下に『咲良世奈 行方不明』という文字が出てきた。


「その名前の聞き覚えの正体は最近の行方不明のニュースだったのか」

「おい雫~。そいつを探していますっていう記事に住所書いてあったぜ~」

「……そうか。だからあの時……」

「どうした~?」

「昨日の咲良世奈の幽霊のことさ。彼女は……もう……」

「死んでないぞ! あれは多分、の可能性が高いんだ。雫も他と違うと思っただろ?」

「他の幽霊と違う……?」

「通常の幽霊は急に消えたりしない。それに記憶が無いってのが一番不自然なんだ。幽霊ってのはそもそも何か未練があってりしてそーゆー強い想いがこの世に魂を留めるんだ」

「確かにその通りだ、菊。たまには良いこと言うじゃないか」

「えへへへ~そうだろ! そうだろ? もっと褒めて! もう一回言って?」

「よし、まだ間に合う。とりあえずこの鍵を使えるモノを探しに咲良世奈の家に行くぞ」

「……う、うん。そうだね……!」


 雫にひさしぶりに褒められてその場でカタカタ踊ってた菊を雫は後ろから掴んでリュックサックに詰め込んだ。菊には申し訳ないがやはり人形を持ち歩くのは周りの人からすれば印象が悪い。大人と話すときは尚更このリュックサック装備は必須だ。


「雫~わかってるよな! あの約束このリュックに詰め込んだら私に新しい服をくれr……わあっ!! チャックもするの!?」

「全部はしないよ。さっ! 急いで行くぞ」


 リュックサックの中で花見町の地図を持った菊が小声で咲良世奈の家までのルートを指示して、二キロくらい歩いてやっと目的地に着いた。その家に近づくにつれて『咲良世奈 探してます』という内容の顔写真付きの壁紙が目に入った。


「昨日見た咲良世奈と名乗る幽霊と同じ顔だ」

「この一軒家だぞ雫」

「よし……」


 ピンポーン♪ ピンポーン♪


 すぐに家の人が玄関を開けてくれた。咲良世奈のお母さんであった。雫は咲良世奈の友達で捜索に協力すると言い、咲良世奈の部屋に入れることになった。まだ生活感のある部屋で整理整頓がされている女の子らしい部屋だった。


「早速例の鍵が使えるとこが無いか探すぞ」

「私も出て探す~」

「新しい服……」

「はい。中にいます。はい」


 雫は勉強机の引き出しを見つけた。


「これだ! この鍵は引き出しの鍵。そして……」


 ガチャガチャ――


「開いた中には特定の四桁を揃えて外す箱が……あった!」

「やったな雫~! 中には何が入ってた~?」



『誘拐事件? 行方不明の真相』 『花見町の神隠しか?』


『小学生五年生鈴木果歩ちゃん 行方不明』 『行方不明 事件性は無し?』



「なんだ……これ……」

「どうした? 何があったの?」

「大量の鈴木果歩すずきかほという少女の行方不明事件にまつわる新聞の記事だ…………」

「……どういうことだ? 雫」

「理由は分からないが家族に内緒でこの事件を追ってたんだろ。だからこんな厳重にに二重ロックまでして……」

「……」

「ここに居ろ、菊。ボクはちょっと下に降りて聞きたいことがある……」


 雫は駆け足で階段を二階から一階に降りてリビングにいた咲良世奈の母親に話しかけた。


「すみません……世奈さんの友達に鈴木果歩という女の子はいましたか?」

「やめて!! 世奈がいなくなったのはあの子の呪いよ……!! きっと道連れに一番の友達の世奈を……」

「そうですか……ありがとうございます。ボクたちはこれで……」

「達……?」

「あぁ、いえ……お、お邪魔しました! ……それに都合が悪いことを呪いと言って誰かのせいにするのはやめた方がいいですよ……」

「……?」


(愛情と呪い、いや愛情と憎しみは紙一重……ってね……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る