第2話 見つかったモノ
雫と公太はすぐに目的の花壇に着いた。公太の言った通り花壇は周りに土が飛び散っていて植えられていたマリーゴールドと思われる花が端に倒れていた。
「ここがその花壇です」
「公太、悪いがスコップと軍手を持ってきてくれないか?」
公太は教室から持ってくると言い走っていった。
「菊。仕事だ」
「人形化か~?」
「いやあの子の名前が分からないから人形化はできないし、今回はそこまで重大な場面じゃないよ。通訳してくれ」
雫は幽霊と人間の区別はできるもののその幽霊と直接会話をすることはできない。今そばにいる少女の幽霊から話を聞くために公太を一時遠ざけたのである。
「安心しろ、ボクたちは君に危害を加える気はない。君の名はなんだ?」
「…………」
「
「この花壇を荒らしている犯人は誰だ?」
「…………」
「ぇ~!! コイツが荒らしてたんだって~雫!!」
「菊、コイツじゃない。世奈さんだろ。理由は?」
「あっ!! 雫、公太のやつが戻ってきたよ!」
菊がそう言うとそばにいた咲良世奈と名乗ったその少女の幽霊はどこかへ行ってしまった。
「スコップと軍手持ってきましたよ~。元に戻すんですよね? 手伝いますよ」
「いや、ここをさらに掘るんだ公太」
「ええ?」
(雫~掘っちゃうの~ここ? ホントに? 何で? 世奈ってやつが怒っちゃうぞ?)
「…………。何かここに埋まってるのかもしれない……」
雫は端に倒れていた花たちを一時花壇の外に出してスコップで土を掘り起こしていった。
「なんもないね~」
「死体でもあると思ったか公太?」
「そうじゃないよ……」
(しーずーくー!)
「間違えた公太。タイムカプセルや宝の地図でもあるとおもったか?」
「うん! 悪いやつがきっとそれを狙ってるんだよ」
(はぁ……)
「ん? 何かあるよ! ほらそこ」
「……鍵?」
「え! もしかして宝箱の!?」
「いや、これは自転車の鍵だきっと。誰かがこの鍵をこの辺りで落としたと思ってこの花壇が結果的に荒らされたんだ」
「そうだったんだ……」
「この鍵はボクが後で学校の先生に渡しておくよ。花見町は山に囲まれているから日の沈みが早い。今日はもう帰ろう」
「わかった。なんかあっけなかったけどモヤモヤが晴れたよ、ありがとう!」
公太は走って校門を抜けて家に向かった。また雫と菊の二人きりになったがさっきの姿を消した世良はもう現れることはなかった。
「良かったな~雫。ただの落し物で。私たちも帰えろーぜー」
「バカタレ。この鍵の持ち手のとこに黒いマジックで書いてある『4771』。四桁のパスワードのメモだ。おそらくこれは二重ロックされた箱の鍵だ。そしてこの持ち主は咲良世良だ」
「ほんとかな~? 雫はいつも考えすぎなんだよ」
「どこかで聞いたことがあるんだ、咲良世奈という名前を。何故か聞いたことがある名前の幽霊……その幽霊が探していたと思われる二重ロックされた何かを開ける重要な鍵……。探偵が動くには十分すぎる謎だと思わないか?」
「雫が何でも気になっちゃう根っからの探偵ってことは知ってるさ~」
「帰ったら咲良世奈について調べて、彼女の家に行ってみよう」
「公太には言わなくて良かったのか~?」
「本当に宝箱だったら呼ぶさ。ボクはそうは思わずに帰したんだけどね……」
たまたま見つけたその鍵がこれから大きな事件の扉を開けようとしていた――
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