第4話 人形探偵と名乗る理由
「菊。行くぞ」
「待って雫! 雫が下に居る間に面白いもの見つけたぞ」
「地図? 花見町の地図……なんだこの赤い×印は? とりあえず時間が無い、歩きながら世奈を探そう」
雫はまた菊をその記事と一緒にリュックに詰めて外に出た。
「おそらく世奈と果歩は友達だった。そして果歩が最初に誘拐されたんだ」
「誘拐!?」
「誘拐された証拠を何か世奈は知っていたんだ。そう考えないとこの新聞の記事や地図の説明がつかない」
「じゃあもしかしてこの地図は!」
「そう。誘拐された果歩の居場所を探していたんだろう」
「じゃあこの赤い×印は探したけど居なかったっていう印か!」
「そうゆーこと」
「でもどーやって探すんだ~?私たちはなんも手掛かりが無いんだぞ~?」
「手掛かりはその赤い×印だ。菊、その場所に何か共通してるとこはないか? きっと世奈は誘拐された証拠を知ったと同時に犯人の居場所のヒントも知ったんだ」
「なるほど~」
「この事件はもう世奈が九割追い詰めてるってことだ。最後の最後でおそらく……。残りの一割をボクたちが必ず成し遂げるんだ」
「う~ん……う~ん……」
菊は雫のリュックの中で地図を広げながらその赤い×印に共通してるものを探していた。
「×印は何箇所あるんだ?」
「三箇所だ。スーパー白川に……八百屋さんに……花見町旅館……」
「共通してるのは無いのか……たまたまその三箇所は全部近い。もう全部行くしかないか……」
雫はその三箇所にそれぞれ中に入って店の人にここらへんで怪しい人がいないかなどを聞いたがそれらしき手掛かりは見つからなかった。
キーンコーンカーンコーン♪
「うるさっ~! 五時の鐘かーでかすぎだろ音~」
「近くに鐘があるんだろう。ほらその三箇所のちょうど真ん中だ……」
「「手掛かりそれかもしれない!!」」
五時の鐘の音が大きく聞こえる所というヒントを世奈は何故かはまだ分からないが知っていたのかもしれない。
「でも雫~。その鐘がある塔の近くだとわかっても、世奈がやったように周りの家を一つずつ調べるしかないんだぞ~?」
「そうだ……だからボクたちはここからはもう……警察にでも頼むしか……」
「それだと時間が無いっていつもの雫なら言ってるぞ~? まだ人形探偵には奥の手のアレがあるんでしょ~? やろ! それ!」
「バカタレ! 菊……。器外は人形の体から霊体を離すってことだぞ。そんなことしたら」
「うつわはずし……久しぶりだね」
「ダメだ菊!」
「三十分かな……。それまでに戻ってくるよ」
「待て! 菊! ボクはもう……」
人形から飛び出した霊体の菊はニッコリ笑って五時の鐘が鳴る塔の周りを探し回った。
「久しぶりに顔見たけど……綺麗な女の子らしい顔だな……これが終わったらとびっきりの菊に似合う服を買ってやるよ。だから……必ず……」
五時十分―― 二十分―― 二十五分―― ………………
――洋服屋
「いらっしゃいませ~」
「これから誘拐、監禁の罪で逮捕される店主ですね? ボクは人形探偵だ」
「探偵ごっこかい? その手に持った人形はファッションか何かかな?」
長い間隠された事件を人形探偵と名乗る天音雫が今解こうとしている――
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