北大路さんの正体
いきなりのカミングアウトに、開いた口が塞がりません。
男って、北大路さんか!?
「そ、そんなバカな。だって、スカート履いてますし」
「トモ、男がスカートを履いちゃいけない?」
「い、いけなくはありませんけど」
誰かに迷惑をかけるわけでもないですし、どんな髪型にしようとスカートを履こうと、その人の自由ですからねえ。
「で、ですが北大路さんは私が勘違いしてるって気づいてもおかしくなかったのに、何も言ってきませんでしたよ」
「きっと勘違いさせておいた方が面白いから、黙ってたんだよ。よくやるんだよね」
よくやるんですか?
それじゃあ北大路さん、知っててからかっていたのですね!
「か、髪型が、葉月君の大好きなポニーテールなのは?」
「男がポニーテールにしちゃいけない? あと俺は、今はポニーテールよりツインテールの方が好きだから」
ツインテールの方が好き。それってもしかして、私がツインテールにしてるから……って、今はそんなことはどうでも良いんです。
するとなかなか飲み込めずにいる私を見て、葉月君がため息をつきます。
「いい加減認めよう。ルカは女子っぽい喋り方をしててポニーテールでスカートをはいてアクセサリーをつけて胸に詰め物してるだけの、男なんだから」
ううっ、分かりました。分かりましたけど、何だか頭が痛くなってきました。
北大路さん、本当に男性なんですね。
そういえば最初に会った時彼女……いえ、彼は葉月君に抱きついていましたけど、あれは男子同士のスキンシップだったと言うことでしょうか。
そういえばあの時、葉月君がデレデレしてるって思って腹が立ちましたけど、ごめんなさい。
この様子だと、全くデレてなんていなかったみたいです。
「ルカがああいう格好をするようになったのは、祓い屋の仕事のせいなんだ。前に女子校で怪事件が起きたことがあって、その時派遣されたのが俺とルカだったんだよ。で、場所が場所だけに、女装して潜入することになったんだ」
「そういえば、前に向こうでの仕事で女装したことがあるって言ってましたっけ」
しかし女子校へ行くのが男子二人って。きっとよほど人手不足だったのでしょうね。
「それで、事件そのものは解決できたんだけど、それ以来ルカは、女装にハマっちゃったんだ。女の子の格好をしてたら、買い物の際オマケしてもらえることがあるし、レディースデイでサービスが受けられるからって」
そんな理由でですか!
だいたい、女装してレディースデイのサービスを受けるなんて、やっちゃっていいんですか!?
「そうしているうちに女装にもだんだん磨きがかかっていって、言葉遣いから仕草、メイクまで完璧の、女装男子が出来上がっちゃったってわけ」
「し、四国の祓い屋協会はどうなっているんですか?」
葉月君といい北大路さんといい、女装男子を量産してはいませんか!
それに、それにですよ。今の説明では、一つ大事なことが抜けています。
「それならそうと、どうして北大路さんが男の子だって教えてくれなかったんですか!?」
「えっと……聞かれなかったから」
「普通は聞きませんよ! 女の子だと思って、疑いませんもの!」
「ごめん。けど俺にとってはルカがああなのなのて当たり前だから、つい言うのを忘れちゃってた」
てへっと言わんばかりに舌を出す葉月君ですけど、忘れたですみますかー!
それに、北大路さんが男の子となると。
「あの、北大路さん、私に色々言ってきたんですけど。葉月君のことをちょうだいって。前に悟里さんから聞いたことがありますけど、それってビーエル……」
「ストーップ! それ以上言うの禁止! 師匠は何を吹き込んでるの!?」
私も詳しく聞いたわけではないのですけどね。
悟里さん、流暢に話してると思ったらふと何かに気づいたように「知世ちゃんにはまだ早いか」と言って、中断しちゃいましたっけ。
「ルカのやつ、きっとトモが女子と勘違いしてるって気づいて、からかったんだろうね。アイツはそういうやつだ」
納得したように頷く葉月君を見ていると、また頭が痛くなってきました。
北大路さんのこと、少しはわかってきたつもりだったのに、どうやらまだ全然分かってなかったみたいです。
と言うか、最初から私を弄んでいたのですね!
「も、もういいです。なんかもう疲れたので、私は先に帰って休むことにします」
「お大事に。そうだ、ルカは俺が泊めちゃっていいんだよね?」
「どうぞご自由に! 二人で好きなだけ仲良くしちゃってください!」
それだけ言うと後は振り返りもせずに、自分の部屋に向かって一直線。
これ以上はもうキャパオーバー。頭の処理が追い付きませんよ。
女の子に見えて実は男子で、からかって遊んでくる。
葉月君の友達って、そんな人ばっかりなんですか!?
男の子って、本当にわけがわかりません!
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