第2話 どうする?って選択肢はもうないんだ
「はい。いいよ。」
主治医はお腹についたジェルをふきなからいつもの笑顔だった。診察台から起き上がった私は先生のその笑顔が不満だった。
私はこの1ヶ月、寝不足になる感じで過ごしてきたのに。何かいつもと同じ。
「あの、先生。」
「ん?」
「先月、違う先生にみていただいた時に、もう手術すべきだみたいな事を言われまして…。」
淡々としている先生に、私の方から話をふらざるを得ない。
その手元のカルテに先月の事、何か書かれてないんですか!
「した方がいいんじゃない?する?」
…え?何て?
「大きすぎるから、した方がいいね。」
…。
ちょっと前まで、まあ、様子みる?と言ってたよね?
「この大きさになってからしばらくたったからねー。何が症状ある?」
イヤイヤ。
散々、足が浮腫むとか、おしっこが近いとか言ってたよね?
「あの、症状は前から言っている通りですが。」
「じゃあ、紹介状書きましょう。」
「え?切るんですか?」
「そうだね。」
先生は物凄く作られた笑顔を張り付けている。
いや、まじ信じられん。
ずーっと私の筋腫みてきて、様子みる?毎回言ってたのに!
先月違う先生から厳しく言われても、主治医との5年を信じたかったのに…。先生と話して様子みたかったのに。
いや、本当は若干疑ってた。
どんどん大きくなるお腹が怖くて、主治医の先生に無言のプレッシャーをかけて「来月まで様子みる?」という台詞を言わせてたのは私か…。
切る。切る?お腹を?まじで?
恐怖以外のなにものでもない。
でも、毎日毎日大きくなってしている不安も同じくらいある。
手術怖い。お腹重い。大きくなるの不安。
「…紹介状お願いします。」
私はがっくりうなだれた。先月の受診の時とは違う看護師さんが、悲しそうな笑顔を向けてた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます