第4話 マリーネ爆誕

 「あぎゃぁあっぁぁ、あやあぁぁあっぁぁ。」

 


 とある夫婦の間に産まれた二人の赤子。

 先に産まれた兄、後に産まれた妹。

 

 「おぉ!無事に生まれたか!」

 赤子の前で喜びを明らかにする男性。

 興奮して今にも飛び掛かっていきそうな勢いである。


 男性の脇には女性が二人おり、彼の腕を掴んで取り押さえていた。


 「あぁ、無事生まれましたよ、二人共元気な産声をあげてますよ。」

 双子を産んだ女性は、男性に向かい出産の苦痛も見せずに微笑ながらも声を掛けた。


 先に産まれたと思われる赤子は既にぬるま湯で洗われていた。


 (あれ。誰この美男美女。ってもう生まれ変わってるって事かな。)

 先程次の輪廻と言われたばかりの聖は、休むことなく次の生を受けているように感じている。

 実際はそれなりに時は要しているのだけれど、地球での生と輪廻転生したこの世界の生は全くの別物。

 時の流れもまた別のものだった。


 輪廻の輪を廻るための遍路では意識もなく通ってきたために、本人としての時間的感覚は皆無であるため、もう生まれ変わったのかという感覚に陥る。


 そして120歳で往生したわけだが、心の中の思考は10代中頃~後半のものとなっていたのは真賢と同じである。

 さらに、前世となる聖としての記憶等は輪廻の神っぽいお方のサービスなのか、産まれたてだというのに既に思考する事が出来ていたのも同じであった。

 ただし発する言葉は赤子と同じである。


 「男の子はマリウス、女の子はマリーネだ。」

 聖からすれば父親と思わしき男性が、自分達に名を付けられた事が理解出来た。

 

 「今考えたように言ってますけど、前に二人して徹夜で考えた名前ですけどね。」

 「しかも昔の英雄になぞらえる形で取ってるから、完全オリジナルじゃないですけどね。」

 母親が言うように二人の名前はかつての英雄を模して付けられている。

 かつての英雄のように育って欲しいという願いを込められていると受け止められた。


 美男の方は父親マティアス、美女の方は母親イリス。

 乳母、侍女達他の女性陣の話の内容から名前を窺い知る事が出来た。


 爆炎の魔剣士と呼ばれていた父、虹色の魔導士と呼ばれていた母。

 それを子供らが知るのはもう少し後の話。



 (とんでもない家庭の子に産まれちゃったな。)

 輪廻転生を果たした聖ことマリーネは隣に寝かされている双子の兄・マリウスを見て私案した。


 兄の方へ視線を移すと兄と目があった。色が変わる事もないのだが、お互い赤面している……ように感じていた。

 (まさか……ね)



 とんでもない家庭の子とマリーネが考えていたのは、マリウスと同じくこの時はとんでもない美形の両親から産まれてしまって、美的ハードルが高いなという意味で私案していたのだが……

 その実はとんでもない高貴な家庭に産まれてしまった事と気付くのは……もう少し経ってからの事である。


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