雑記

紀之貫

「いつかの魔法」のあとがき

☆この文章について

 表題にもありますが、以下の文章は「いつかの魔法」完結に伴う、あとがきのようなものです。裏事情みたいな感じの内容や自分語りを含むため、本編と一続きにすると少し読後感を損なうのではと考え、こうして独立させる運びとなりました。


☆タイトルについて

「いつかの魔法」というタイトルの意味は、いくつかあります。

 まず、主人公が、現世でいつか見たマンガやゲームの再現を魔法で……という意味。他には、いつだったか覚えた魔法をつなぎ合わせ、新たな力に……というのも。

 取りようによってはいくらでも意味を持たせられるとは思います。まとめるならば、過去と未来、そして現在が、魔法という軸を中心に絡み合う……といったところでしょうか。


☆もともとの構想

 最初は主人公をハッカーにする予定でした。というのも、腕利きのハッカーを指す表現にウィザード(魔術師)というのがありまして、これに絡めて魔法を使わせたら、と。

 しかし、実際にハッカー主役の話を書くに当たり、大問題が一つありまして。それは私がプログラマーじゃないってことです。センター試験数学のプログラミングは解けるって程度ですね。この程度の知識の作者が、主人公に魔法のハックをやらせるってのは、さすがに見切り発車もいいとこ過ぎるな、と。


 ですが、最初の構想自体は、物語全般に生きています。

 魔法の世界で主人公が頭角を現すには、現地人にない何かが必要です。その何かとして、劇中世界の常識とはまた違う物の考え方や、魔法という現象についての捉え方を主人公の力としました。デバッグというか、魔法の仕様を探らせる検証シーンなどは、その表れですね。

 そうした検証の末、個々の要素を組み上げていく様は、プログラミングっぽいものになった……かなぁ? と思ってます。


☆話のテーマ

 一口にテーマと言っても、考えていたものは色々あります。詰め込み過ぎたかも……という感じですが。

 まず、主人公が異世界へ行ったということで、そこで何を感じ、どう考えて動くかという事に主眼を置いてました。

 また、主人公という異分子の働きで、社会がどのように変容していくかというのも書いてみたかったことです。決してテンポの良い話ではなかったと思いますが、社会変革のスピード感は、創作らしいところがあったかと思います。話の都合で、都合のいいように捨象した感じですね。その点も含めてのファンタジーということで。

 あとは、身分差だとか、持って生まれた宿命。社会における立ち位置等々。主人公が自由人であるのに対し、ヒロインは対象的な立ち位置にあったと思います。世界観の少なからぬ部分を、象徴的に背負ってもらったというところです。

 こうした諸々をまとめると……「異世界とどのように関わり合っていくか」って感じでしょうか。


☆魔法について

 魔法の世界で主人公が技術的介入を果たすため、相応の仕掛けも必要だとは考えていました。何らかの理由で、現地人でも活用しきれていないシステムと言いますか、穴が生じうるシステムが。

 そこで、文と型の組み合わせで魔法が効果を発揮するという世界観にしました。定まったルールの中、未探索の組み合わせはある。しかし、社会通念等の理由で、積極な探求はなされていない。そこを主人公に掘らせる……という感じですね。


 作中であまり表現できなかった部分として反省しているのですが、この世界における新魔法というのは、基本的には過去の魔法の再発見です。そういった固定観念が根付いているせいで、新しい組み合わせを考えるという動きは弱い。それに、求められるのは即戦力であって、現状維持に力が注がれている。

 そういう、保守的な世界の中、進歩的なことに理解のある″閣下″の伯爵家に、主人公が拾われたというわけです。


 ちなみに……文と型の組み合わせという魔法の在り方で、FF7のマテリアシステムを想起された方もいらっしゃるかもしれません。文が緑や赤のマテリアとするなら、各種の型は青色ってところですね。

 ただ、話を書いていた身としては、どちらかというとデュープリズムというゲームっぽくなってると思ってました。まぁ、わかっていただける方にはわかっていただけるかもしれません。


 文と型という魔法のシステムを採用した件については、もう一つ、書く側としての事情がありまして。魔法文を考えるのがしんどいというものです。

 ゲームの話ばかりで恐縮ですが、最初はFFTとかVPの詠唱文を参考にしようかと考えていました。しかし……私にはそういうセンスはねえなと。

 そこで、考察要素の軸として型という仕組みを用意しつつ、魔法の世界っぽいルール感を出すため、文は七五調でまとめることにしました。雰囲気作り程度の考えですが、作中の時代から見て大昔の魔法を、作中の時代で解釈してどうにか使ってる……そういう感じも、古文っぽい魔法文なら演出できるんじゃないかと。

 ただ……そこまで古文が得意だったわけじゃないんですよね。学生時代、意訳とその場のノリでしのいでいた記憶があります。そのため、作中の古文らしき魔法文も、フィーリングでやってます。文法に誤りがあっても、どうかスルーしていただければ……。

 あと、一つあたりに考える時間も、結局数十分かかってました。いくつも詠唱を考えている方々に、改めて敬意を覚えた次第です。


☆影響を受けた作品

 ここまでゲームについての言及がありますが、実を言うと、ゲームから影響を受けたというのはあまりないと思ってます。

 ただ、話の大筋としては、第8章までで一通りの流れが完結。最終章については、「その後の世界」における裏ボス・真ボスとの戦いというイメージでした。そういう、クリア後のエクストラステージみたいな感じは、ドラクエの影響を受けてるかな、と。


 この作品が直接的な影響を受けたというわけではないのですが、私自身はゲームよりもマンガの方に強い影響を受けていると思います。好きな漫画を挙げて行くとキリがありません。

 また、そういった作品群から具体的に影響を受けたり参考にしたりというのはあまりないですが、ヒロインは確実に私の趣味が反映されていると思います。戦う強いヒロインが好きなもので。


……といった感じで、話の大筋だとか、登場人物、世界観については他作品の模倣で終わらないように一から考えはしました。

 ですが、劇中で"主人公が参考にした"と思われる作品というのはあります。色々と問題があるかと思い、具体な作品名については、作中での言及を避けてきましたが……主人公が新魔法を考える際の、元ネタになった作品ですね。

 そういうのがオマージュの範疇に収まるかどうかは、結局のところ、見る側の捉え方次第かとは思います。ですが、正直に言えば、主人公が参考にしたということは、私も参考にしたということです。

 とりあえず、MTGというカードゲームについては、弁明不可能なレベルで影響を受けています。そもそも、魔法(呪文)のコピーや打消しという効果を、実際の描写・作品世界のメカニズムに落とし込むとどうなるか? という考えで、話のネタを膨らませた部分がありますし。

 あと、マナの色って概念はMTGともろ被りですね。魔力を現す言葉として、マナが一番しっくり来たのと、視覚化できる身分差の表現として色を用いようという考えがあって……結果的に被ってしまいました。やりたいことをやろうとしたら、先達に似ていることに気づいて、それでもそのまま突っ走ったといったところです。

 とりあえず、本家における色の概念とは似て非なるものではあるのですが……魔力に、属性ではなく色を持たせるという考え自体、やっぱり私がMTG脳なのではって感じではあります。

 パクリや二次創作等に抵触するものではないと思いますが……。


☆話全体についての反省

 まず、長くなっちまったなぁ……と。

 一応、長くなったことについての理由はあります。まず、物語の進行上、主人公の思考が軸になっています。そのため、そういう思考部分については、あまり省略できませんでした。

 また、作中の国や社会、文化が少しずつ変容していく様も表現したいという思いがありました。そのため、そういう状況説明にも尺を使ったという感じです。


 こうして、長くなった弊害というのは、筆者側にも確実にありまして……人物紹介とかやるつもりだったのですが、結局2章分までで力尽きてしまいました。燃え尽き症候群というわけでもないですが、今から見返すのも、ちょっと……という感じですね。

 やるやる詐欺になってしまっていて申し訳ないのですが、人物紹介については、気が向いたら手を付けるつもりです。


 その件に絡んでの反省がまだありまして、全体的に無計画だったと思っています。

 実を言いますと、話の流れの大筋としては、開始当初に考えた通りのものになりました。各章で一番大きな出来事は最初の構想通り。間をつなぐ道は、執筆中に考えながら……という感じですね。

 無計画だったのは、その間の道についての部分です。気がつけば登場人物が増えていって……という有様でしたので。後先のことを考えて、話を進めつつも、登場人物紹介につながるデータベースを整備していくべきでした。

 しかし、この辺は今後に生かせれば……とは思うのですが、性分的なものもあって、矯正は難しいかもしれません。


 それと、反省点がもう一つ。誤字脱字です。

 話が終わるごとに、読み上げソフトで確認はしているんですが……やらない時もあって、ついついそのまま上げてしまうこともしばしばです。

 なんと言いますか、一話書くごとに「あ″~終わった~~」みたいな感じで、もうやり切ったというか……良くないとは思っているのですが。


 そういう誤字脱字について、ありがたいことに誤字報告を度々ご指摘いただいてまして……私が知る限りでは、ほぼお一人の手で大半の報告をいただいていました。

 この場を借りて、厚く御礼申し上げます。本当に助かりました。こんな大長編に、最後まで付き合ってくださったということもあり、本当に頭が上がらない思いです。


☆次回作について

 ロボット物をやりたいと考えています。今回は一人称視点でしたが、次は三人称視点がメインにするつもりです。それだけで少し印象が変わるかも知れません。

 また、全体的な構想はすでにあるのですが、人によっては作風が変わったと感じる可能性があります。そうでもないかもしれません。ただ、ジャンルは完全に変わるので、やはり違和感はあるかも。

 まぁ、それでも良ければ、次もお付き合いいただきたく存じます。

 話のスケールとしては、50万字~100万字ってところですか。幅の揺らぎがこんなのになってるあたり、処女作を長く書き過ぎた感はありますね。好きに書いたので大満足ですが。


 数話程度分量がまとまってから投稿するつもりですが、開始はそう遅くはならないかと。

 ちなみに、次回作のタイトルについて。「激情版:新石器ヤヴァンゲリオン」とかにしたいんですけど、さすがに怒られそうなので、まだ未定です。

 投稿しましたら、活動報告かTwitter等で告知しますので、興味をお持ちになられましたら、ぜひ。




「いつかの魔法」に関わるあとがき等は、以上です。ここまでお付き合いくださりまして、本当にありがとうございました。

 ご縁がありましたら、またお会いしましょう。


※追記:新作はじめました。

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