第10話~科学者は哲学の夢を見るか~エゴと微笑み

 国立図書館最上階禁書庫。

 常日頃薄暗く静かなそこに突如響いた声と音は、その場で書庫整理をしていた彼女の肩を大きくすくませた。何とも聞くだに情けない声が尾を引いて何やら重いものが勢いよく硬い何かにぶつかった、否、倒れこんだ音が床を通してより鮮明に響き渡る。

 「………またか」

 助手職について三年、半ば定期的に茶飯事と化したその音にいささか眉をしかめながら、彼女は音のした方とは反対へと迷わず駆けていった。後ろでなにやら本当に情けない声で焦って喚いている人物を取り敢えずは無視。白く塗られた強大な鉄の扉、それを押し開けて禁書庫内を出。


 ああ、もう…! また倒れやがったわ! あのくそぼけドクター!


 と、ここで唐突にソフィレーナは傍と我に返った。

 一連の行動に思い当たる節がない、と眉間に皴を寄せる事もなく体は勝手に段飛ばし、国立図書館職員専用裏階段の石畳を景気よく踏みつけて下階へと降りてゆく。


 意思と行動が一致しない……?


 目に映る景色は、どこもかしこも滲んで眩むほど白い。

 さんさんと照る真昼の陽光の只中にいるような薄暗い筈の図書館内部を間違いなく己はどこかへ、この道筋であれば八階のちょっとした物置へと急いでいるようだった。物置の扉を開けてその隅に設置されている小さな冷蔵庫から酷く慣れた手つきで点滴パックを取り出し、ついで未開封の点滴機材一式を抱え暖かそうな手触りの毛布も抱え込むと、流れるような視界もおざなりに一目散、最上階禁書庫へと取って返してゆく。


 可笑しい…。確か私……。


 つい先ほど知恵者の私室で意識を落とした事を思い出し、改めて彼女は状況を確認した。そうしている間にも、彼女は白く塗られた鉄の扉に手をかけ体当たりで押し開けようとしている。


 ああ、そうか……。これは夢だ。


 夢の中の自分は少し息を切らせながら年齢の割りに小さな体躯を禁書庫へと滑り込ませて、息つく間も無く自棄と自嘲の混じりはじめている情けない声の方向へと走り寄って行った。

 その行動を他人事の様に知覚しながら、彼女は得心がいったと同時、内容に頭を抱える。夢は、ある一説によると無意識の欲求を表すらしい。若しくは記憶の整理であるという。ではもし仮に、我が身の欲求による想像で作り出されたものならば、随分現実と勝手が違う、どころか豊か過ぎ、矛盾が多い気が彼女にはしていた。

 助手職について三年目、まではいい。

 しかし、禁書庫で半ば定期的に誰かが倒れる等という記憶は彼女の中には全くないものだった。

 某くそぼけドクターが年明け仕事始めに展望部屋で倒れている所を発見され、本土の病院に担ぎ込まれる騒ぎは恒例と化していたが、それにしたって一年に一度。定期的といえば定期的だがそれにしては己のニュアンスがおかしかった気がする、と、思う視界はせっせと進み、禁書庫右手奥から十一番目の棚を通り過ぎる。

 上司は知恵者しか思いつかない。となれば、己が点滴を打とうとしているのは、あの子供の姿をした、あのひとなのだろうか。

 けれど倒れる時の音が大き過ぎる。

 声だって、もっと高い……。


 考える彼女と動く体。否、夢の中のソフィレーナは現実の彼女が知りえない情報を当たり前に知っていて呆れ果てている。その思考も同時に彼女の中には流れ込んできて、ソフィレーナは一瞬どちらがどちらなのか分からなくなった。

 視界は禁書庫左手奥の五列目の本棚を過ぎ、右に曲がって二つ目の角。

「なっ! ッッさけない声だすんじゃありません!!! こンのくそぼけどあほおおばかドクター・ケルッツア!!!!!

 あなた今年で四十六でしょう!?!?!!!」

 移動中ふつふつと抱え込んでいた怒りを鬼の剣幕で発散させた彼女の瞳は、随分と大柄長身の男が大の字で倒れている光景を映し出していた。

「そ、そうは言ったってねぇソフィーレンス君……。体が動かないんだよ……?

 お、おまけに君はどっかいっちゃうしみ、……見捨てられたかと思うじゃない……」

 対し、何とも自信なさげにかかる声は弱弱しく情けない。

 本棚に挟まれた移動スペースの絨毯に大の字で倒れこんでいる壮年近い大男は、よれよれの白衣を着込んで、病院のベッドから起きられない重病人宜しくだるそうに腕で顔を半分覆い、白髪の混じり始めた灰色の髪を乱している。疲れて生気のない顔色、髪と同色の瞳を潤ませ、雨に打たれた野良犬のような目で彼女を見上げていた。

 夢の中の彼女は引き攣る頬を微笑みに変えて彼を見下ろし、ソフィレーナは己の頭を疑っている。

 確かに、ケルッツア・ド・ディス・ファーンは情けない所がある。子供じみているし、酷く我がままだが、しかし、これはいくらなんでも酷すぎる。


 私はあのひとをこんなに見下していたの?


 やはりそんな思考とはお構いなしに、にっこりと恐ろしい笑みを浮かべた彼女は、おもむろに大男の左脛の辺りに脚を掛け、体が動かないって、と。

「四ッッ日間もッ!! 飲まず食わずじゃ当たり前ですッ!!!

 毎度毎度、ご飯かせめて飴でもいいから摂れって何度言ったら分かってくれるんでッす!!!」


 革靴の底で思い切り回転を掛け、彼の脛を踏みつけた。


「い、痛い痛いソフィーレンスくいた! いたいすねはやめいたいいたほんといッたたたたたたたた!!!!!!!」


 涙声で訴える男を無視。気の済むまで踏みつけた助手は、酷い、あんまりだ、等と泣き言を垂れる大男の腕の辺りにそっと膝をつくと、今まで抱えていた機材類を手際よく組み立て始める。

「そんな事知りません! だいたい、それもこれも全部あなたが悪いんでしょう!?

 ……あんまり喚くと、痛くしますよ?」

 まだ未開封の点滴針を掲げる助手の常にない低い声が響いた途端、ぴたり。今までさめざめと文句を垂れていたひげに隠れる口許は止まり、大男、否夢の中のケルッツアは大人しくなる。


 何……これ……。


 余りの認識の違いに、ソフィレーナはもう言葉が思い当たらない。

 確かに、国立図書館各階物置には点滴機材と栄養点滴パックが万全の体制で常備、点滴を打てるまでの医療資格取得は助手職の条件であり、それ以前に学者、研究者を目指すものには国から出身学校からと取得の催促が来る。その資格は今では持っていないものの方が珍しいという現状があるのは事実だが、だからといって知恵者が壮年である理由も、まるで月一の様に倒れているという設定の説明にもならない気がする。ある程度現実に沿ってはいるが、所詮は妄想の産物という事か。

 どうやら夢の中には独自の設定があるらしい、と、疲れた思考をストップ、彼女は流れに任せ、夢の中の自身と思考を合わせる事にした。


 静かになった己の上司に助手はひとつ息をつくと、彼の袖をまくりあげ、点滴の準備を進めてゆく。

 高い所からフックで吊るされたパックが揺らめき、管は彼女の掲げる点滴針へと繋がっていた。袖をまくられむき出しにされた腕はゴムのようなもので縛り上げられて圧迫され、親指を中にして握りこめという指示が出され。

 従いながら、その様を横目で見守る彼はいよいよ、の段になると視線を逸らし、明後日の方向に視線を向ける。

 アルコールの染みた脱脂綿が日に焼けた肌を幾度か撫で、浮き上がった血管に点滴の針が差し込まれてゆく。

「はい。……良いですよ」

 静かな声で終了を告げると、ソフィレーナはそっと、力いっぱい握り締めていたらしい上司のてのひらに触れてその手をほぐしてやった。速度を調節、打ち込んだ点滴針を固定し、腕も曲げないように台のようなものに固定して、管をたゆまないよう腕へと貼り付ける。彼女がちらりと確認すると、硬く瞑られていた瞼は開かれ、灰色の瞳は恐る恐ると点滴の打たれている腕を見ていた。

「…………本当に……君は注射が巧いねぇ………」

 いっつもぜんぜん痛くない。少年のように瞳を輝かせて喜ぶケルッツアに、有難うございます、と苦笑しながら、彼女はその横たわった長身を胸まで覆うよう足元から毛布を掛け、次いで自身のブレザーを脱ぐと軽く折りたたんで彼の頭を静かに持ち上げ、その下に枕代わりに敷き、静かに戻す。

「……あのね……後頭部、痛いんだ、けど……」

 という、窺うような視線と訴えで分かったたんこぶを幾重かに折ったハンカチで包んでやり、また寝かして。見上げてくる眼差しの子供っぽさに小さく微笑を返し、そのくたびれた灰色の前髪に軽く手櫛を入れて顔に掛からないようにしてから、そと、助手は立ち上がった。

「では、下行って立ち入り禁止処置とって来ますね。

 ……眠いなら、そのまま寝ちゃって良いですよ?」

 律儀にも落ちる瞼を向けて見送ろうとする彼にそう言い置くと、彼女は鉄の扉を目指してきびすを返した。後ろから眠そうな声でかかる論文雑誌の要求に答えつつ、そっと、手に残る灰色の感触に頬を赤らめ、走る速度を速めて動悸をその所為としている。


 この辺は……願望に近いかも、しれない……。


 彼女の中の、現実の彼女は僅かに浮上してそんな事を思っていた。

 視界はあっという間に二階第二図書館カウンターへと飛び、テェレルの差し出す書類にサインをしている最中。テェレルは、あいつはまた倒れたの、と苦笑しながら、ケルッツアの要望した論文雑誌をこちらに貸し出している。

 そんな様を知覚するとなし、現実の彼女は夢の中の自分宜しく、先ほど眠る前に撫でた知恵者の髪の感触を思い出して、嬉しいような恥ずかしいような、そんな気持ちと正面から向き合っていた。

 指先に残っている現実の感覚は、柔らかいが、少しばかりクセがあった。

 夢の中のそれは少しべたついていて、格段に手触りも落ちていたが、どことなく似ている。

 少なくとも私には、あんなに堂々とあのひとの髪を撫でる事など出来ない。ではこれはやはり願望の具現化なのだろうか。そんな事も思いながら、何とも都合よく景色は流れ流れ、現在また、横たわるケルッツアの頭の辺りに、彼女は膝をついていた。

 ソフィレーナは、また、夢の中の自身へと、自身を同調させてゆく。

「……まあ…結構大きなたんこぶだったし……」

 苦笑する彼女の目の前、くたびれた灰色の頭髪はかなり乱れて、頭を転がすたびたんこぶに響いて痛いらしい苦悩が見て取れた。ハンカチは気休めでしかなかったらしく、頭を動かすたび眉を顰めつつも眠りこけている。

 よほど睡眠時間を削ったか、眠っていないか。つい先日、他館の残業に借り出され、国立図書館で夜を明かしたその時の記憶を鮮明に思い出して、彼女は申し訳なさそうに口許を覆い隠した。

 資料を取りに来た禁書庫の暗がりで、一際明るく照る展望部屋の明かりが漏れている。連日連夜、久々にやる気を出した、否、本人が言うには頭の回線が使える程度に回復した、という総館長は、図書館の業務もそっちのけで論文を仕上げているらしい。

 頑張っているなとそっとしておいたのが凶と出た、殴りこんでいれば良かった、と、今更ながら彼女は後悔している。


 今回は論文、出来上がりますように……。


 祈りにも似た気持ちでひとつ息をつくと、姿勢を崩して絨毯に手を突き、僅か近く、彼の顔を覗き込んだ。

 一ヶ月に一度、論文を仕上げようとして、いつも途中で続けられなくなる、先を越されてしまう、そんな事を幾度と繰り返すケルッツアの不運を嘆き、理不尽さに眉を顰める。


 このひとは、本当は凄いひとなのに……。


 世間からも、学会からも馬鹿にされ、天才崩れ、学者崩れ等と評されて、それを受け入れ寂しく笑っているケルッツアの顔が浮かぶと、ソフィレーナは胸の痛さに酷く辛くなった。

 成果は出している。このひと程正確に精密に観察し、発表できる人は居ない。それなのに、子供のお遊びだと一蹴され、明らかに出来の悪い論文をほめたたえる。

 結局はやっかみや嫉みなのだと、知っているだに余計に彼女のうちは怒りに震えた。


『……い、いいんだ……。僕は、いいんだよ……。書けないのだもの。言われたって仕方が無い……』


 そのやっかみと嫉みに何も言い返さない彼は、分を弁えている分ずっと大人に見える。本当に出来ないと納得しているからこそ、言葉には、卑屈とは違う寂しさだけが滲んで、そこに自身に対する怒りはあれ、やっかむ者への反骨精神は見られない。

 けれどその思考を、彼女はただはがゆく思う。


『君は、凄く尊敬している人が居るんだろう?

 その人の論文以外見る気がしないって、前に言ってたじゃない……。

 ねえ、もし良ければ名前を教えて貰えないかね?

 僕は顔だけは利くんだ。もしかしたら合わせてあげられるかもしれない……』


 勤め始めて、初めての冬の事。それより一ヶ月ほど前につい口を滑らせて言ってしまった事を何のゆえんか覚えていたらしいケルッツアから唐突に話を切り出された事を、彼女はふと思い出した。

 見上げる視線とぶつかる、僅か屈んで、窺うような色を見せる灰色の目。その不思議な色の具合にいたたまれなくなり、視線を逸らし気味、丁寧にごまかして断った、その眦の感覚が甦りソフィレーナはありもしない涙を乱暴に拭う。

 灰色の目の中には一片足りとその人物が彼自身であるという期待も、予測も無かった。

 それはケルッツアの性格を考えればもっともの事。

 しかしそれでも、それを推しても。


 私が魅せられたのは、あなただけなの。


 切ないような感覚に頭痛を覚えて、ソフィレーナは眠る彼を改めて見やった。彼女が自身の思考に沈んでいる間、目の前でたんこぶに苦しんでいる彼は相変わらず眠っている。

 そっと、彼女は体の位置を変えて、徐に白い線の走る灰色の頭部を静かに持ち上げた。ブレザーを揃えた己の両ももに敷きなおし、その上へと頭を下ろす。上手くたんこぶのある辺りを避けて頭を置いてやると、僅かに頭部は身じろぎし。

「む………うむ……」

 寄せる眉の皴が薄くなり、後は年齢による皴だけが、その焼けた肌の顔には残った。手入れも疎かな口ひげをふがふがいわせて、格段易く眠っている。

 その様をほうけたように見つめ、次いで色づいた目元を、俯いて頭を振る事で前髪に隠して、ソフィレーナはそっと、傍に置いた論文雑誌を手に取った。 

 あまりに無防備に過ぎるからだ、と、自身の行動の言い訳をして、太ももにわだかまるくすぐったさを知らぬ振りで通している。

 読む気のない論文雑誌を頁だけ開いて、一応、知識として吸収しながら、その詰まらなさに小さく欠伸を噛み殺し。


 ふと、視界を動かすと、目が合った。


「!」

 驚くソフィレーナの視界で、ケルッツアはぱっちりと眼を開けて、時折瞬きしながらも彼女を見ている。その少年のように澄んだ瞳に顔の熱さを自覚しながら、とりあえず、彼女は無難な言葉をかけた。

「おはようございます。ドクター。……お加減は?」

 きぜんとした態度を取ると、次第、彼は口をもごもごさせて、しどろもどろ何事か言い始める。

「…いや、あの……お加減は良いんだけどその、そその……あの、だから、…な、なんひ、ひざま」

 赤くなったり青くなったり忙しく顔色を変えるその声は、次第酷く掠れて聞き取りづらくなっていった。その様に、肝が据わったか、呆れたか、頬の強張りを解いてソフィレーナは苦笑する。

 その笑みはそれ程に柔らかいのか、ほうけているケルッツアの口は、ぽかん、と開けられていた。


「……だって、眠っている間中たんこぶを痛そうにしているんですもの……。ブレザーだけじゃ枕の高さも足りてないみたいでしたから、無いよりはマシかと思いまして。

 ……眠りにくいなら元に」

「ねね眠りにくくなんかないしむしろあったかくてやわやかくて気持ちいんだけどッ!!!」


 叫ばれた音量に両者ともあぜんとし、彼にいたっては言い間違いの多さにますます喉を枯れさせて、驚く助手へと一言。

「…………つ、つらく、ないかね?」

 それなりに重量もあるし、と、己の頭を点滴とは逆の手を上げて指し示す彼に、その意見の不意打ち加減に、彼女はもう一度赤くなった。

 その変化はさすがに見抜かれたか、窺うような声がついで。

「……ソフィーレンス君?」

 情けない返事を返しながら、しどろもどろは何とか避けたものの、随分と自分でも不思議だと思う声音で彼女は返答を紡ぐ。

「……やり始めたばっかりですから……まだ、痺れは無いですよ…。それより、たんこぶ……」

 随分としおらしい声に、ケルッツアの声が重なる。

「む……むう、い、痛さは余り感じないんだけど……じゃ、じゃあね、痺れたり、きつかったらいってね、すぐどかすから……」

 点滴が効いてきたみたいだ、と、確かに少しばかり良くなった顔色で、ケルッツアはソフィレーナに笑いかけた。彼女は巧く論文雑誌を掲げ、顔を隠すと、吊るした点滴のパックを見やる。

 速度をかなり遅くしたせいだろう、中の液はやっと半分の線を越えたばかり。論文雑誌の隙間からケルッツアを窺えば、またうつらうつらと瞼を重そうにしている。効いてきたとはいえ、かなり眠いらしい。


 眠いなら寝ても大丈夫、と、ソフィレーナが声をかけようとした矢先。



「…ねえ…? ソフィーレンス君………


 君はいつまで、僕の助手でいてくれるの……?」



 眠そうな響きの中に、酷く真摯なものを感じ、彼女はその目を見張った。見上げてくる灰色の瞳には、眠気の先に何か、ごまかせないほどの真面目さを隠しきれずに宿る鋭利な光がある。

 ゆっくりと、点滴をしていない方の腕が上げられ、彼女の栗色、落ちかかる前髪に触れて、梳く。

 怖いほどの静寂の中、その行為だけが続けられて、彼女を、否、その中に居る膝枕の時でさえ浮上する事の無かった現実のソフィレーナをも、彼は上手く絡め捕らえていた。

 懇願の色をして、けれどこちらに有無の権限すら与えることもなく。

 灰色を黒く染めて見上げてくる両眼は、逃がさない、と言っているような、そんな錯覚を彼女へと。


 否、錯覚ではなかったのかもしれない。


 灰色の目のその先に、ソフィレーナは確かに、黒いコートをまとった知恵者の姿を見た。


 夢の中の自分と、自分が重なる感覚が酷く鮮明。


「…………」


 鼓動の乱れも、心の乱れも。嬉しさも喜びも切なさも或いは、憎さも。


 全てを抑え、平然を装って切り出した、先。





「……そうですね」

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