第36話 ビバ混浴!

「うん、いい感じね」


 GW前、最後の授業日。

 新入生歓迎会の準備は順調に進み、明日はもう本番だ。


 放課後になると、体育館を借りて簡単なリハーサルを行っていた。


「猫ちゃん意外とやりますねー。もっと醜態さらして欲しかったのにー」

「これくらいなら、モーマンタイ」


 ステージの1年生2人が戯れあい(一方的)ながらこちらへ戻ってくる。


「すごかったね〜2人とも〜。本番も楽しみ〜!」

「ぎゃ、わ、だ、だからなんでそう姫咲先輩はすぐに抱きついてくるんですか!」

「にへへ……」


 姫咲が2人に抱きつくと、逃げるように悶える最愛の隣で琥珀が気持ち悪い笑み(圧倒的主観)を浮かべていた。


「ふぅ。とりあえずこんなものでいいかな、会長さん」


 ステージ裏から出てきたシュンが立花先輩へ声をかける。


 シュンには当日の裏方仕事を頼んでいた。


「ええ、バッチリよ。空井くん。お疲れ様」

「いえいえ。これくらいならお安い御用です」

「本番もよろしくね」

「はい」


 スマートに笑うと、シュンは俺の方へ歩いてくる。


 クソ、やめろ。こっちくんな。なに先輩に労われてんだよ。蹴るぞおい。


 俺なんかこのリハーサル、ほとんど何もしてないのに……!

 いいもんね、俺と姫咲は実働隊だもんね。本番は巧みな連携で縦横無尽に活躍するもんね。


「お゛づがれ゛……」

「うわ、なんでそんなダミ声!?」

「ぎに゛す゛る゛な゛……」


 手伝ってくれていることへの感謝と、嫉妬が入り混じっているだけだ。


「リハーサルはこれで終わりにするけど……もし良かったらもう少しだけ付き合ってくれる?」


 先輩が注目を集めるように手を叩いて言う。


「これからみんなで、銭湯なんてどうかしら。今日まで一週間、慣れない仕事で疲れたでしょう? 1日早いけど、明日頑張ってもらうためにも、慰労を兼ねて」


「銭湯!? お風呂〜! 行く〜!」


 先輩の提案に大きく手を挙げてはしゃぐ姫咲。


「萌香さんが行くなら、私も……」


「まぁ汗もかきましたし、立花先輩にしてはいい考えですね。私も行きまーす」


 返事をすると、最愛がこちらへ駆けてくる。


「せんぱいも、行きますよね?」

「あ?」

「私はせんぱいとなら、混浴でもいいですよ?」


 ふぁ!? 混浴!?

 昨今のジャパニーズセントーには混浴があるのか!?


 つまりは先輩や姫咲だってもしかしたら……デュフフフフ……。


「俺も行きます! ぜひ! ビバ混浴!」

「分かったわ。でも、混浴はないわよ」


 え!?


「解散した後、ホテルで休憩♡すれば2人で入れるじゃないですかー?」

「あ、そう……(鼻ホジ)」


 まぁいいや。

 ハーレムで銭湯。

 いいじゃないか。


「僕も行っていいですか?」

「もちろん歓迎よ」

「ありがとうございます」

 

 さらっと参加を決めるシュン。


「お゛い゛てめえ……空気読めよ……グルるるるるる……」


 百合とハーレムの間に部外者が挟まるのはご法度でしょうが。


 引き裂いてやる。


「まぁまぁ、いいじゃない。男湯で1人じゃ寂しいでしょ?」


 男湯に入りながら、隣の女子風呂のキャッキャウフフを妄想するんだろぉ!?


 あわよくば盗み聞き盗み見る!


「あと、1人にしておくと何するか分からないしね」

「ぐぬぅ……」


 男なら当然の行動だろうがぁ……。


「せんぱい、そんなに私の身体が見たいんですかー? 私ならいつでも見せてあげるのに♡」

「黙れ」


 拝啓。

 神様、今こそ俺に透視能力あるいは透明人間になれるチカラをお授けください。


 でないと捕まりそうです。

 美少女と銭湯なんて理性がマジヤバギガマックス。おっぱい。


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