二章 『新入生歓迎会』編
第27話 アタマ大丈夫?
最近、美少女の連絡先を3つも手に入れた。
天川スズメ16歳、人生初のモテ期かもしれない。
いや、……本当にそうだろうか?
まずはクラスメイトにして人気読モの
彼女とは親友であり、お友達同盟であり、ズッ友である。好かれているのは肌身に感じるが、彼女の性格からして、お友達の域を越えるとは到底思えない。
次に、学園の生徒会長、
彼女とはひょんなことから特定の場面限定で偽物の恋人の関係にある。
当然ながら、彼女は俺に恋心なんて抱いていない。
あくまでカレシ役。お互いの利益を求めるビジネスパートナーのようなものである。
ムチムチの太ももで俺を圧殺してくださいお願いしますな感じだ。
3人目はビッチなので割愛。先日はドキリとさせられたが、考えるだけ無駄である。
と、ここで再び思う。
これって本当にモテ期だろうか?
誰も俺のこと恋愛的に好きじゃないじゃん!
モテ期ってのは美少女たちが俺のことを無条件に愛してくれる自動ハーレム生成期ではないのか!?
そんなわけない。現実は非常である。
しかし何の因果か、あの出来事から俺は美少女運だけはいい。
チートじみたご都合主義は現実にないのだから、地道に、コツコツと、せっかく関係を結んだ美少女たちとのキャッキャウフフで好感度を稼いでいきたいところである。
「おはよう琥珀ちゃーん!」
「おはよう」
「いやあ今日も我らの天使は可愛いですなぁ。うりうり〜」
「もうやめてよ〜」
うげっ、きも。
突発的に我が家で行われた美少女集会から一夜明け、現在、登校中。
前方に一年生と思われる女子生徒の一団を確認。
中心には短い黒髪を揺らす我が幼馴染だったもの。その成れの果て。
なんだその煌めき笑顔。寒気がする。蕁麻疹が出そう。身体中痒いわ。
「…………(ギロッ)」
「ひぃ……!?」
突如、琥珀がこちらを流し目で睨んだ。
なんで俺の存在に気づいてるの!?
俺の戦闘力はたったの3だぞ!?
「琥珀ちゃんどうかした?」
「ううん。何でもないよ?」
友人の一人に声を掛けられると、天使の笑顔を浮かべて視線を逸らした。
ふぅ……命拾いした。
威嚇されるわ拒否反応はでるわで散々なため、なるべくなら学園内で幼馴染とは会いたくないものだ。
「せ〜んぱい!」
「うぉっ!?」
前方ばかり気にしていると、今度は背後からやってきた影に腕を取られる。
視界には銀色の髪がふわりと舞った。
「おはようございます♪」
「お、おう……」
「今度は思ったより早い再会でしたね。嬉しいです♪」
抱きつくように俺の左手に絡みつく最愛は煌めく笑顔を浮かべて頬を染める。
「おい離れろ」
「えーイヤですよー」
「いいから」
腕を振るが、一向に振り解ける気配はない。
なんだこいつ、吸盤でもついてんの?
「いいじゃないですぁ。可愛い後輩とのふれあいですよー? あ、それともせんぱいもしかして、意識しちゃってますかー?」
ニヤリと笑う最愛。
さらに腕には柔らかい感触が押しつけられた。
「ち、ちげえよ」
「えーでも今、見ましたよね。おっぱい」
「見てない。誰がオマエのちっぱいなんて」
「ちゃんと柔らかいですよ? そこの猫ちゃんに比べれば、ずっと」
「うぐ……」
なにこれ甘い柔らかい程よいふわふわむにゅむにゅマシマロホイップ。産まれそう。
もういいよこのままで……どうせ引き剥がせないし。
決しておっぱいに負けたわけではない。
ただ、日々の成長著しいJKなりたておっぱいの経過観察を行う必要は大いにあると思っただけだ。
「そ、そういやオマエは……琥珀みたいになってないのな」
「んー? 猫ちゃんみたいに、ですか?」
「琥珀は女子に囲まれてるけど、オマエなら男どもを侍らせてそう」
「あー、そういうのはもうやめようかと思いまして」
「へぇ」
もうって、やっぱり侍らせてたんかい。
イメージが余裕すぎて捗らない。
「なんでだと思いますか?」
「いや、知らんし」
「えー分かるくせにー」
最愛はさらにギュッと身体を擦り寄らせて、
「せんぱいがいれば、他に何もいらないからですよ♪」
とびきりの笑顔を浮かべた。
◇◆◇
「それではまた、放課後に」
「えぇ……放課後も……?」
下駄箱で靴を履き替えると、一年生教室との別れ道で最愛はそう切り出した。
「何を言っているのですかせんぱい。忘れちゃったんですか?」
「え? ……あ、ああ、そういやそうだった」
「もう、しっかりしてください。せんぱいが参加しないなら、私もしないんですから」
「いやオマエはしとけよ。なんか、こう、稼いどいた方がいいよ? 内申とか」
不良ビッチなんだから。
「参加しないんですか?」
「いや、する。立花先輩のお誘いだからな。俺は先輩の手となり足となる。靴も舐める」
「むぅ……やっぱりまずはあの人の始末からですね……」
「え? なに怖い。先輩に何かしたら本当に嫌いになるよ? ぶん殴るよ?」
男女平等パンチでちゃうわよ(ビッチにのみ適応)
「いえいえ。なーんでも。私も、先輩方とは是非とも仲良くしたいと思っているので。放課後が楽しみです」
俺は不安でいっぱいだよ……。
「あ、そうだせんぱい。んーっ♡」
「は? なに?」
最愛は唇をすぼめて、何かを求めるように目を閉じる。
「何って。ちゅーですよちゅー。愛するふたりのしばしの別れです。当然でしょう? せんぱいからしてくれると嬉しいです♡」
「アタマ大丈夫? 保健室そっちだから。じゃ、そういうことで」
「あーちょっとせんぱーい! もー恥ずかしがり屋さんなんだからー!」
やめろ叫ぶなぶー垂れるな甘えた声を出すな。
ドキドキするだろうが……。
そして何より、周りの男子諸君の視線が……とてつもなく痛い!
殺気が胸を貫くように飛んでくる。
今に背後から刺されないかとヒヤヒヤするレベルだ。
美少女と話すのって、それだけで命懸けなんですね……。
姫咲で知ってた。
だから美少女さんたちは決して不用意な発言をしないで欲しい。
「あ、天川く〜ん! おはよう〜! 今日も朝から会えて幸せだね〜! ぎゅ〜っ!」
ほら、そういうの!
そっちにその気がなくても、周りはバリバリに勘違いするんだよ!
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