第24話
言われてみればそうかもしれない。
生徒手帳なんてなにに使うんだろうと思ったけれど、そんなに毎時間確認していたのだとしたら、なにかありそうだ。
ただのメモ帳として使うにしても、頻度が多すぎる。
よし、江藤くんに生徒手帳について聞いてみよう!
「亜美、早く着替えないと遅刻するよ?」
里香の一言で現実に引き戻される。
江藤くんの前に3度目の持久走があるんだった……。
☆☆☆
どうにか持久走を終えたあたしは教室へ戻ってきていた。
しかしホウキは持たずに体操袋を机の横にひっかけるとすぐに教室を出た。
今のうちに江藤くんを探すのだ。
それで生徒手帳について聞く。
そうすればもうループしなくてすむかもしれない。
そう思っていたのだけれど……「亜美! 今日は教室の掃除でしょう!?」教室内からそんな声がして立ち止まった。
振り向くとクラスの女子がホウキを持ち、仁王立ちをしてあたしを睨みつけている。
「あ、えっと、そうなんだけど、ちょっと用事があって」
慌てて言い訳を考えるけれど、うまくいかない。
しどろもどろになってしまって余計に怪しまれている。
「用事ってなに? 掃除時間にしないといけないことなの?」
そう言われると返事に詰まってしまう。
あたしが抜けると教室の掃き掃除は3人で行うことになる。
15分の掃除時間じゃ、ギリギリだ。
「ど、どうしても今がよくて」
じゃなきゃすぐに終わりのホームルームが始まってしまって、またループすることになる。
「ダメだよ。掃除が終わってからにしてよ!」
クラスメートに腕をつかまれ、結局教室に引きずり戻されてしまったのだった。
☆☆☆
どうしてこうもうまくいかないんだろう。
江藤くんに質問する時間はなく、終わりのホームルームが始まってしまっていた。
だいたい6時間目に体育なんがあるから、時間に余裕がないんだ。
と、今日の時間割を恨めしく感じる。
その時、トントンと指先があたしの机をノックした。
視線を向けると青ざめた江藤くんが、ブレザーの胸ポケットに指を入れている。
そこにはたしか生徒手帳が入っていたはずだ。
そう思って意識してみてみると、ポケットのふくらみがないことに気がついた。
もしかして生徒手帳をなくしたの?
ハッと思った次の瞬間、また空間がゆがんでいた。
江藤くんの泣きそうな顔もゆがむ。
先生の声もゆがむ。
そしてあたしはぼんやりと4度目の持久走をしなくちゃいけないのかと、考えていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます