第17話
嫌がおうでもその日はやってくる。
サイドテーブルに置いたスマホが起床時間をつげている。
あまり眠れなかったあたしは上半身を起こしてアラームを止めた。
同時に眠い目をこする。
今日どうなっているかで、またループするかどうかが決まってしまう。
でも正直3度目のループに入り込んでしまったときにはどうすればいいかわからなかった。
ループに気がついてから2度目で、あたしのできることはやりつくしてしまった気がするのだ。
それでもダメだったとしたら、もうあたし1人の力ではどうしようもないということだった。
寝不足でぼーっとする頭のまま着替えを済ませて朝ごはんを食べる。
いつも大好きで食べているベーコンエッグの味が今日はしなかった。
学校へ到着する頃には緊張してきて、妙にぎこちない動きになっていることに気がついた。
「どうしたの亜美。なんか顔色悪いけど?」
席についたところで里香がそう話かけてきた。
普段の朝の挨拶も飛ばされるくらい、今のあたしは青い顔をしているのだろう。
「大丈夫だよ、なんでもないから」
そう言う声もとても小さくなってしまって余計に里香を心配させる結果になってしまった。
そして、祈るような気持ちで隣の席を見つめる。
江藤君はまだ来ない。
朝のホームルームが始まるまで、あと15分を切っていた。
☆☆☆
やっぱりダメだったのかな。
先生の声が廊下に聞こえてきたとき、あたしはそう感じて肩を落とした。
江藤君はまだ来ていない。
ポッカリとあいた席はとても悲しげに見えた。
あたしはうつむき、膝の上でギュッと両手を握り締めた。
どうか終わっていて。
あたしは次の日に行きたいの!
願うような気持ちで顔を上げ、ドアへ視線を向ける。
そのドアから入ってきたのは先生だった。
先生は神妙そうな表情を浮かべて教室内を見回し、それから教卓へと向かった。
あぁ……。
また、繰り返すのかな。
「実は今日、大切な知らせがある」
先生の重たい声に教室の中が水を打ったように静かになった。
全員が教卓へ視線を向けている。
あたしは先生の次の言葉を待つしかなかった。
きっと今回も訪れるであろうめまいに備えながら。
「大切な知らせというのは――」
先生がそこまで言ったときだった。
大きな音を立てて前方のドアが開いたのだ。
生徒たちの視線が一斉にそちらへ向かう。
「遅刻しました!」
息を切らしながらそう言い、苦笑を浮かべたのは江藤君だ!
あたしは唖然として江藤君を見つめる。
走ってきたようで顔は赤く染まり、呼吸は荒い。
そのままあたしの隣の席に座った。
「遅刻してきたときはもう少し静かに入ってきなさい」
先生は江藤君へ向けて呆れた表情で注意する。
しかし、真央ちゃんのことがあったばかりだから、その声は優しかった。
江藤君はいたずらっ子のように舌を出して「ごめんなさい」と、あやまった。
江藤君が……来た……!!
あたしはまだ信じられなくて隣の江藤君を見つめる。
視線に気がついた江藤君がこちらを向いて「おはよ」と、口パクで言った。
あたしも同じようにして返事をする。
それでもまだ信じられない。
江藤君が来た。
江藤君は生きている!
でも、それじゃあ先生が深刻そうな顔をしているのはどうして?
疑問が浮かんできて教卓へ視線を戻す。
そのときだった。
「実は今日、抜き打ちテストがある!」
先生からの重大発表に、教室中からブーングが沸き起こったのだった。
☆☆☆
2月9日の火曜日がやってきた。
あたしはベッドの中で大きくのびをして、新しい日の空気を思いっきり吸い込んだ。
「朝だ!」
見たことのない朝。
真っ白に塗りつぶされていて、そこに自分たちで描いていくことのできる日。
それが嬉しくて勢いよくベッドから飛び起きた。
今日は登校日だけれど、その前に行く場所がある。
あたしはすぐに制服に着替えをしたのだった。
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