第10話
その疑問が解けたのは、江藤君が落ち着いてからだった。
「真央はあまり学校に行ってなかったから、クラスメートにだけ知らせることになったよ」
両親と会話をして戻ってきた江藤君がそう教えてくれたのだ。
あたしたちが真央ちゃんの死を知らなかったのは、そういう敬意があったからだったみたいだ。
「そっか」
あたしは短く答えた。
あたしはお葬式には行きたいな。
そう思ったけれど、今はまだなにも言えなかった。
それから江藤君は両親とともに病院を出て、あたしと里香はバスに乗って家の最寄駅まで戻ってきていた。
「これがループの原因なのかな?」
バスを降りて歩きながら里香が聞いてくる。
「関係あるのかもしれない。ループに気がつく前までは真央ちゃんの存在も、真央ちゃんが死んだことも誰も知らなかったと思うから」
待合室でひどく落ち込んでいた江藤君を思い出すと、まだ胸が苦しくなる。
この3日後に江藤君は死んでいるのだ。
もしかして自殺……なんて、よくない考えが浮かんできてしまう。
もし自殺だったとしても江藤君はなにか心残りがあるはずだ。
じゃなきゃループを繰り返すこともないはずだし。
でも、それがなんなのかまだわからなかった。
いろいろと考えている内に家が見えてきて、里香と別れて自宅へと戻ったのだった。
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