第17話 祝福

今までで一番長く私の傍にいたのはあなたでした。


私にとってあなたは最初で最後の人。


そういう意味ではあなたもそうであればいいなと思います──。




「は?結婚?」

「わぁ、おめでとうございます!」

「いやいや~突然でごめんねぇ」


休日明けの月曜日。私は朝、更衣室で会ったエリ子と郁美に三好さんとのことを話した。


「なんでいきなりそんな話になってるのよ!ついこの間まで彼女じゃないだの別れるだの言っていた癖に」

「そうなんだよねぇ~本当、その節は大変お騒がせしました」


不満を露わにするエリ子に申し訳なくて謝罪する。


愚痴っぽく私を冷やかすエリ子の態度も言葉も、幸せいっぱいの私には怒れることではなかった。


「美佳さん、よかったですね」

「郁美」


そして恐らく私と三好さんの仲が近くなれた要因のキーマンである郁美に感謝の言葉を述べる。


「ありがとう、色々助けてもらって…三好さんとこうなれたのは郁美のお蔭だよ」

「そんな、私は出来ることしかしていなくて」

「真戸さんにもお世話になったし」

「きっと喜びます、三好さんと美佳さんの結婚」


郁美のその言葉に危うく涙腺が崩壊しかかった。


「朝っぱらから泣かないの。湿っぽいわよ」

「エリちゃん、もうちょっと美佳さんを労わろうよ」

「郁美は甘い。こんなのに付き合っていたら仕事に遅れるわよ」

「う゛~~エリ子ぉ~」

「今夜、ちゃんとお祝いしてあげるから」

「……え」

「郁美も、今日ばかりは真戸さんとのデート、都合つけて」

「勿論、美佳さんのお祝いするよ」

「…エリ子…郁美」


エリ子の素っ気ないながらも温かい言葉に益々涙腺が──


「だからっ!……もういい、郁美、行こう」

「あ、待って、エリちゃん」

「……」


(私……多分友だち運、最高だ)


今まで悪いと思っていた男運も三好さんに出逢ったことでチャラになったし、女友だちもこの会社に入ってから最強になった。



「やだ…なんか…幸せ過ぎて怖いっ!」


就業開始時間間近。既に誰もいなくなっていた更衣室でひとり歓喜していた私だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る