第16話 プロポーズ
「三好さん、私を三好さんのお嫁さんにして!」
「………は?」
「私、三好さんのことが好き!だから私をお嫁さんにして!」
「……美佳ちゃん、俺の話、ちゃんと訊いていた?」
「うん、訊いていた」
「会社辞めるんだよ?田舎に行くんだよ?農家になるんだよ?」
「うん、嬉しい!」
「……はぁ?」
私側の事情を知らない三好さんは私が何を言っているのか訳が分からないという言動を何度も繰り返した。
私という女はとことん外見と中身が違うらしい。私の生まれ育った環境、本当の私という女の本性を知った三好さんは驚きながらもとても喜んだ。
「じゃあ美佳ちゃん…俺と結婚、してくれるの?」
「勿論!ずっとずっと三好さんと一緒に野菜、作る!」
「…美佳ちゃん」
思えば私たちは外食する度に野菜ばかり食べていた。旬の野菜が美味しいねと、そんな感動をふたりで共有していた。
ちゃんと私と三好さんは好きなものや感性が同じだった。
「…三好さん」
不意に甘い雰囲気になっていた。三好さんがその場に私を押し倒した。
「よかった…夜通し車走らせて美佳ちゃんの元に来て…本当によかった」
「…ごめんなさい、作業を中断して来てくれたんだよね?」
「そうだけどその甲斐はあった。俺にとっては人生に於ける大収穫が得られた」
「ふふっ…三好さんったら」
「…いい加減、名前で呼んでくれないか」
「え」
「ずっと思っていた。名前で呼んで欲しいと」
「……拓也、さん」
「美佳ちゃん」
ずっと彼女だと確信出来なかったから名前で呼ぶことが憚れた。
だけど今日からはちゃんとあなたのことは名前で呼びます!──なんて盛大に頭の中で誓った私だった。
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