第15話 真相
何を言われるのかある種の覚悟をした私に三好さんは言い辛そうに語った。
「実は俺…俺の実家が……田舎で農業、やっているんだ」
「……へ?」
「人を雇ってやるような本格的な農家なんだ。俺は長男で人手が足りない時とかは休みの度に実家に帰って収穫とかの作業を手伝っているんだ」
「……」
「昨日も実家に帰って作業していて、電話で聞こえた声って言うのは手伝ってもらっている近所の娘さんとか、いとこだったり…そういう関係の人」
「……農家」
突然のカミングアウトに茫然とした。
「今はまだ両親が現役で農作業をやれているけれど、いずれ…いつかは俺、会社を辞めて実家を継いで農業をやろうと思っている」
「!」
「そんな将来があるから中々付き合った人と結婚まで行かなくて」
「……」
「美佳ちゃんから告白されて嬉しくてついOKしたけど、付き合って行く内に俺の事情っていうのが中々言えなくて…」
「……」
「美佳ちゃんって農業とは一番遠いところにいるって感じの人だから…だけど俺は美佳ちゃんが好きで…好きだからこそ言えないってところがあって…」
「……三好さん」
「! はい」
私の呼び掛けに三好さんは面白いように体を跳ね上げた。
「三好さんが隠していたことって…それ?」
「……そう、です」
「実家が農家で…いつかは会社を辞めて実家に帰って農家になるってこと?」
「……はい」
「三好さんと結婚したら田舎に行って農業しなくちゃいけないってこと?」
「………はい」
「~~~っ、なぁんだぁぁぁぁぁー!」
「?!」
思わず私は心から安堵の言葉を漏らした。
「もしかして三好さんが私を家に呼んでくれない理由って」
「…家には農業系の本や道具が散乱していて…其処から美佳ちゃんに事情を知られるのが怖くて」
「じゃあ三好さんはちゃんと私を彼女だと思ってくれていたんだ」
「うん」
「浮気していなかったんだ」
「うん」
「実家が農家だったんだ」
「うん」
「いずれ会社辞めて農家になるんだ」
「……そう、だよ」
「じゃあ私、農家のお嫁さんになるの?」
「~~~美佳ちゃん!」
三好さんが何か言いたそうにしたのを遮って私は先に告げた。
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