第14話 誤解

「はぁぁぁぁ~~」


ほんの数秒口を塞がれていただけなのにドキドキな気持ちが私に酸欠状態をもたらした。


「ごめん、いきなり」

「…いえ…私も感情的になっちゃって」

「とりあえず…美佳ちゃんの誤解を解きたい」

「誤解…?」

「美佳ちゃんは割勘が嫌だったの?」

「え」

「割勘だから彼女として思われていないと、そう思っていたの?」

「………はい」


面と向かって割勘だから云々と言われると居たたまれない。


「俺は、ずっとそうだったから」

「え」

「その…今まで付き合って来た人にも…常に割勘が正しいと思っていたから」

「それって」

「…一番最初に付き合った人から『奢られるのは平等でないから嫌』と言われたことがあって、それ以来奢るという行為が相手を馬鹿にしている行為に値するという観念が植え付けられてしまって」

「……」

「とりあえず割勘にしてしまうのだけれど、それが嫌な人は文句なり言うから割勘にしなくなるんだけど、美佳ちゃんはずっと文句ひとつ言わなかったからそれが正しいのだと思ってしまって」

「……ケチなのかと思っていた」


思わず本音がボロッと零れてしまった。


「は?!ケチって…俺はケチじゃないよ!ちゃんと使う時には使う男だよ。美加ちゃんの誕生日だって、大切な彼女だからちゃんとお祝いしたのに!」

「……あ」


(そういえばそうだった)


誕生日の時は私に対して一切金銭要求はなかった。そういう意味で今、三好さんが話したことは真実だと裏付けが取れた。


「割勘が嫌なら言ってくれればよかったのに…そうしたら俺、美佳ちゃんに払わせるなんてこと、しなかった」

「ううん、違う、割勘が嫌って訳じゃなくて…その…今までの私の恋愛観念が誤解を招いた…というか」

「? それって」

「彼女だったら奢ってもらうのが当然、という…愚かな観念」

「……」

「そんな些細なことでずっと彼女じゃないとか…思っていました」

「美佳ちゃん…」

「三好さんに嫌われるのが怖くて…言いたいことが言えなくてひとりで悶々としちゃって…」


一方的な思い込みを反省しながらも恥ずかしさを感じて仕方がない。


「それをいうなら俺も…同じだよ」

「……え」


恥ずかしさの余り俯いてしまっていた私の耳に真剣みを帯びた三好さんの声が届く。


「俺、美佳ちゃんにはずっと隠していたことがあるんだ」

「っ!」


(隠し事、あったんだ!)


一気に胸の動悸が跳ねあがって痛いくらいだった。


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