第13話 過去形
「…美佳ちゃん」
「っ、はい」
自分勝手な考えをしていた頭に三好さんの声が響いた。
「昨日は…ごめんなさい」
「え」
「俺…美佳ちゃんを泣かせたよね」
「……」
「泣いたって顔、しているから」
「!」
それは今の私が泣き晴らしたことを示すような顔になっているということ。
「本当にごめんね」
「…これは…そのっ」
なんて言い訳しようかと一瞬パニックになったけれど、ここで私は言いたいことを言わないとこの先ずっと後悔することになると思った。
(そうだよ、今まで嫌われるのが嫌で言いたいことを言えなかった分、ぶっちゃける!)
どうせもう別れるのだ。だったらどう思われたっていい。私の本当の気持ちを三好さんにぶちまけるだけだと思い口を開いた。
「三好さん、本当は私のことどう思っていたんですか?!」
「え…なんで過去形?」
「私たちはもう終わっているからです」
「は?!終わっているって…昨日電話で云ったバイバイって本当にそういう意味だったのか?!」
「そういう意味でしたよ!私の他にも付き合っている女がいて休日はその女を優先していたんだって知ったら別れるに決まっているでしょうが!」
「っ、それは誤解だ!」
「は?!」
「俺が浮気だなんて、そんなことする筈がないだろう!俺は美佳ちゃんが好きで、真剣に付き合っているのは美佳ちゃんだけだ!」
「っ! だ、だって…だってそんなの信じられない!私、全然彼女らしい扱いしてもらったことないし、休日も逢っても貰えないしそれに昨日だって電話で女の声が──」
「ちょっと待って!」
「!」
捲し立てる私の口を三好さんの大きな掌が塞いだ。
「美佳ちゃん…ちょっと冷静になろう」
「~~~」
「なれる?」
「……」
うんうん、と首を縦に振ると私の口元から三好さんの掌が放れた。
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