第12話 来訪
ピンポーン♪
「……ん」
ピンポーンピンポーン♪
「……るさい」
聞こえて来たインターホンの音で目が覚めた。携帯で時間を確認すると朝の6時だった。
(は?6時?!)
あり得ない時間の訪問に何事かと思った。少しだけ怖かったけれど色々考えている間にもインターホンは鳴り続けている。仕方がないのでインターホン越しに応対すると
『美佳ちゃん?俺、三好だけど』
「えっ…三好さん?!」
絶対あり得ないと思っていた人の来訪に寝ぼけていた頭はあっという間に覚醒した。
慌てて玄関まで行きドアを開けると其処には妙に小汚い格好の三好さんが立っていた。
「美佳ちゃん!」
「三好さん…なんで私の家…」
三好さんの家を私が知らないのと同じで三好さんも私の家を知らない筈だった。なのに今、此処に三好さんがいることがとても不思議で、そして何故別れたはずの三好さんが私を訪ねて来たのか?と、分からないことばかりで頭の中が少々混乱している。
「美佳ちゃんの家は真戸経由で藤澤さんに訊いた。俺がどうしても美佳ちゃんに逢いたいから家を教えてくれって頼んだんだ」
「郁美に?」
「あ、どうか藤澤さんを怒らないでくれ。俺が無理矢理に訊き出したんだ」
「いえ…それはいいけ、ど」
(郁美に訊くほどうちに来たかったの?)
今まで付き合って来てお互いの家に行くという概念が無かった。外で食事してホテルに行って其々の家に帰る。そんな付き合い方ばかりしていたから。
(だからこそ三好さんはそこまで私に興味が無かったんだって…思って)
「それで…話があるんだけど中、上がらせてもらってもいいかな」
「あ…いいけど…私、寝起きで……って!」
(そうだ、私、スッピン!)
今更ながら自分の酷い格好に気が付き恥ずかしくなった。
「ちょ、ちょっと待って!着替え…化粧──」
「そのままでいい」
「え」
「そのままの美佳ちゃんで…着飾っていない美佳ちゃんと面と向かって話したい」
「……」
それは一体どういう意味で言っているのだろうと思った。
「あの…上がってもいいかな。俺、ちょっと…っていうか大分汚いんだけど」
「あ…うん、大丈夫」
(というかそのちょっと汚れている感じがいいとか思ってしまっている)
服についていた汚れを
私は三好さんにお茶を淹れ、向かい側に座った。しばらく無言の時間が漂い場の雰囲気はかなり気まずかった。
(…なんだろう話って)
多分それは昨夜、私が一方的に切り出した別れ話に関することだとは思うけれど此処まで来てくれた三好さんの行動に少しだけ希望的観測をしてしまっている私がいた。
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